10 多難
朝、ふたりの様子がおかしい。
無理に立ち上がろうとするリリシアさんと立たせまいとするマユリさん。
何事ですかと聞くと、リリシアさんが熱っぽいとのこと。
失礼してと、額に手を当てるとかなり熱い。
目付きが怪しげなリリシアさんを無理しないでくださいと説得。
テントの中を広く使えるよう片付けてきてとマユリさんに指示。
準備出来ましたとの声で、気合を入れてリリシアさんをお姫様抱っこする。
重いのはリリシアさんじゃ無くてこの鎧だと頭の中で何度も繰り返しながら、渾身の力を振り絞ってテントへ。
ようやく寝かせて、マユリさんへ追加指示。
鎧を外してから汗ばんでないか注意。
もし汗がひどいようなら身体を拭いてあげて。
水を欲しがったらたくさん飲ませてあげるように。
マユリさんの「鎧の外し方、分からないです」との言葉に、俺ピンチ。
「俺も良く分からないけどやってみるから見てて」
そう、もしもの時のために証人は大事。
どうにか鎧を外すことが出来て、なるたけインナー姿を見ないようにして、
「あとお願い」とテントをダッシュで脱出。
入り口を閉めちゃうと日中のテントの中がえらい事になりそうなので、街で買った長めの布切れでテントの中が見えないよう入り口に覆いを作る。
『収納』から飲料水の樽と桶ときれいな布と、あと何がいるのかな。
桶に惜しみなく樽の水を入れ、きれいな布と水筒と共にテントの前に置く。
「朝食もすぐ持ってくるから」
『収納』に入っている、すぐに食べられて一番美味しそうなものを惜しみなく出してこれもテントの前へ。
「何かあったらすぐに呼んで」
旅にはトラブルが付きものと言うが、さっきのリリシアさんのインナー姿はまさにトラブるだ、などと考えつつ、朝食をとった。