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解雇寸前だけど、推しに補佐されながら立ち直ります!  作者: kayako
第6章 彼と彼女が「向き合う」時
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その43 暴かれた本音と、現れる真打ち



 大きく見開かれた紅の瞳。そこにはもう、先ほどまでの嘲りの色は殆どない。

 お願いだから、私を捨てないで――

 そう叫びたくてたまらない子供の目だ。

 風の魔女も、申し訳なさそうに口を出す。


「相手にするのも面倒だから、いつも適当に答えて、電話切り上げてたんだけどねぇ……

 気にしないつもりだったけどやっぱり、あたしらにとっては結構な重荷になって、心のどっかに積もり積もってたんだねぇ。

 親の言葉ってさ」


 最早炎の魔女に、先ほどまでの貫禄はなく。

 ただただ床にぺたりと座り込み、全てを拒絶するように頭を抱えこんでいた。

 喉の奥から絞り出されたのは、震えるような声。


「私は……イヤだ。そんなの、絶対にイヤ。

 悠季以上の人が私に現れるなんて……絶対にありえないよ。

 それぐらい、私にとって、悠季は滅茶苦茶に大きな存在なんだよ……?」


 あぁ――もう、十分だ。

 この炎の魔女から――

 葉子の深層とも言うべきこの存在から、これほどの言葉を引き出せた。

 もう、いいじゃないか。たとえ自分が、葉子に利用されるだけの存在だったとしても。


「悠季に会えない、顔も見られない、言葉もかけてもらえない、そばにいてももらえない――

 人は生きている限り、いずれそうなる。

 いつかそうなっちゃうって、分かってるけど!」


 とりとめもなく叫び続ける、炎の魔女。

 いつの間にかその背後には、風の魔女と水の魔女が寄り添いながら、その肩に優しく触れていた。


「でも、もうイヤなの。

 マイスで、誰にも見向きもされずに死んじゃった貴方を見てから……

 もう二度と、貴方をこんな悲しい目に遭わせたくない。

 こんな風にいなくなっちゃう貴方を、二度と見たくない。

 そう思ったから、私は――!」



 ――そう。葉子自身が何をどう取り繕ったところで、その事実は変わらない。

 最初に俺の死を見た時、葉子が取った行動。

 二度と、俺を死なせない。その強い決意。



「あんな風に死んじゃった貴方を、放っておけるわけ、ないじゃない!

 あんな風に死んで、誰からも見向きもされなくなる貴方なんて、二度と見たくないの!

 あんな風にいなくなっちゃうなんて……

 それでもみんな、そういうゲームシステムだから、そういう世界観だから仕方ないって……

 むしろそういうゲームだから楽しいんだって言い張って!

 貴方を助けようとするヤツなんか、誰もいなくて!

 それどころかみんな、笑いながら貴方を何回も殺すようなヤツばっかり!

 誰も貴方を見ない。誰も貴方を知ろうとしない。誰も貴方を分かろうともしない!!

 ふざけるな、ふざけるな、いい加減にしろって……

 貴方を見捨てる奴らなんて、貴方と同じように全員、誰からも見捨てられて死んでしまえばいい。ずっとそう思ってた!!

 そんなの……

 もう、嫌だよ……寂しいよ……!!」



 それは間違いなく、本当の葉子であり、葉子の本心。

 それだけは、何をどうやったって、覆されることはない。


 悠季はそっと彼女の前に跪き、その手を取った。

 ほぼ同じ高さで、魔女と悠季の視線が交わる。



「――ありがとよ。

 それだけ分かれば、もう十分だって」

「えっ……?」

「現実問題、この先お前と暮らしていくにゃ、色々あるかも知れないけどさ。

 それでも、二人離れ離れにならなきゃいけないなんてこたぁ、ない。

 今までどおり、いや今まで以上に遠慮なしに、俺を利用してくれていいんだぜ?」


 まじまじと悠季を見据える、炎の魔女。

 その瞳にはもう、先ほどまでの威圧感はまるでない。

 ただただ見捨てられた子供のように、今にも泣きだしそうな目だけが、そこにある。


「悠季。

 ずっと、一緒に、いてくれるの?

 私が強くなれなくても、ずっと、一緒に、いてくれるの?

 私が社会に適応できなくても、一緒に、いてくれるの?」

「いるさ。

 でも、可能な限り、お前が強くなれるようにする。

 この世界で、生きていけるようにする。

 それがお前の元へきた、俺の役目だからな」


 全ての力を失ったかのように、その場に崩れ落ちる魔女。

 それと同時に、部屋に渦巻いていた紅の炎が、呆気なく消失した。

 彼女を両側から支えながら、風と水の魔女もほっと胸をなでおろす。


「はぁ~

 どうなることかと思ったけど、これでとりあえず一件落着、ってとこ?」

「う、うん……

 ま、まだ多分、全面解決には程遠いけどね」


 しかしそんな彼女たちの真ん中で、炎の魔女はまだ何かを呟き続けている。



「……駄目、だよ。

 悠季。駄目なんだよ、それじゃ。

 お互いがお互いを利用し合う為に、一緒にいるなんて。

 だってそれは――」

「えんちゃん?」


 額から大量の汗を垂らしながら、頭を振って呟き続ける魔女。

 視点は定まっておらず、あれだけギラギラ輝いていた目の光も消えかかっている。

 と、その瞬間――



 ゴウッと地の底から鳴り響く轟音。

 同時に部屋全体が、大きく揺らぎ始めた。


「ひ、ひゃあぁああっ!?」「きゃああ!! な、何!?」


 やたら素っ頓狂な風の魔女の悲鳴と、それなりに儚げな水の魔女の叫びが交錯する。

 容赦なく崩れ落ちてくるダンボールの山。ドサドサと音をたてて、砂埃と共にまき散らされる本。

 それらを避けもせず、ただ茫然と座っているだけの炎の魔女。

 そんな彼女たちの頭上に響いた声は――



「えんちゃん。それって世間的に何ていうか、貴方なら分かってるよね?

『共依存』って言うんだよ~?」



 明るいキャラメル色ベースの、フリルたっぷりのドレス。

 ふわりと空中へ靡く、ブラウンの髪。

 髪と同系色の大きな瞳。赤フレームの眼鏡。

 ――そして、身体と同じほどの長さを誇る木製のこん棒。



「打算でお互いを利用しあうような関係なんて、長続きするわけないでしょ?

 お互い、本当に好きになってなきゃ、ダメなんだよ?」



 そこにふわふわと優雅に浮かんでいたのは――

 悠季にとっては、この世界の案内人とも言うべき存在。

 魔女たちにとっては、『石の巫女』と呼ばれ忌み嫌われるもの。

 ――土の魔女、その人だった。




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― 新着の感想 ―
[一言] 共依存かぁ。 どっちかって言うと共生のように思えるけどね。 どんなふうに悠季が反論するか期待。
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