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解雇寸前だけど、推しに補佐されながら立ち直ります!  作者: kayako
第6章 彼と彼女が「向き合う」時
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その24 再び、心の中へ!

 

 その翌日――は、仕事もあったしさすがに無理だったものの。

 悠季とみなと君がそれぞれの上司にかけあってくれた結果、翌々日には有給が取れて。

 意外に早くサイコダイブは再開されることになった。



「よし。それじゃお前ら、準備はいいな?」



 次元管理局。三枝先生がいるこの診察室らしき場所は、正確には医療相談室というらしい。

 この前と全く同じく、へらりと笑って機器の準備をする三枝先生。

 沙織さんやみなと君も、既に別室でサイコダイブを始めているようだ。


 事前に、悠季と三枝先生、そして広瀬さんとで結構長い話し合いがあった。

 だけど、その内容は私には分からない。多分私に言えば精神世界に影響するから、なのだろうけど――

 何故かその輪から、みなと君は外されていた。

 ただ単に、みなと君と沙織さんではなく私と悠季のダイブに関する話し合いだからだと思う。でも、どういうわけか妙に気になった。

 三枝先生と悠季だけで私の心の問題を話し合うならまだ分かる。三枝先生と悠季とみなと君、そして広瀬さんとで『探索者』としての打ち合わせをするならまだ分かる。

 でも何故、みなと君は外され、広瀬さんがそこに加わっていたんだろう?

 もしかして、みなと君たちを巻き込めず、広瀬さんが対応しなければならないほどの何かが、私の――

 

 ――


 いや、考えすぎだ。

 ただの偶然。サイコダイブはまだ実験段階なんだから、責任者として広瀬さんは立ち会っているだけ。みなと君は単に席を外してただけ。

 そう自分に言い聞かせながら、私は軽く頭を振った。


 二人並んでベッドに寝かされ、ヘッドホンをつけた私と悠季。

 三枝先生は機器のダイヤルを細かく調整し、同時にモニターを注意深く大きな眼で覗き込んでいる。これも、この前と同じ。


「さっきも言ったが、今回はこの前よりさらに深い場所へのダイブになる。

 到着予定ポイントは同じ深度――要は、こないだの続きからってことになるけどな。

 そこからさらに深く潜っていくから、それなりの覚悟はしておけよ?

 トサカは勿論、お嬢ちゃんもな♪」


 この前と変わらぬ軽妙な口調で言いながら、改めて先生は私を振り返った。


「嬢ちゃん。

 もしかしたら、酷い夢を見るような感覚もあるかも知れない。

 自分の記憶にないはずのトラウマを思い出すような、妙な感覚を味わうかも知れない。

 だがそれは、神城が嬢ちゃんの心で、必死で身体を張ってる結果だ――

 それだけは、覚えておいてくれよ?」


 その言葉で、私は思い出した。


 あの炎の光景――

 大剣を手にした、血みどろの男の子。憎悪に染まった紫の瞳。

 玉座に縛り付けられ、既にこと切れていた女の子。


 ――私が思わず悲鳴をあげてしまった、あの光景。


 間違いなく私の記憶にはありえない、あの地獄。

 あれは……悠季の記憶、なんだろうか?



 そんなことを考えながら、ふと横を見ると――

 悠季がじっと、私を見据えていた。

 吸い込まれそうなアメジストの瞳はとても真剣で、思わずドキッとしてしまう。


 だけど何故か、その瞳にはどこか仄暗い影がさしているようにも思えた。

 いつもの頼もしさが隠れて、私に縋るしかない無力な少年のようにさえ見えて――


「葉子。ひとつだけ、約束してくれ。

 何があっても、俺はお前を見捨てることなんてない。

 だから、お前も――」


 そう言いかけて、慌てて悠季は首を振った。

 無理に笑おうとしているけど、目がまるで笑ってない。


「いや、何でもない。

 わざわざ口約束なんて、野暮だもんな」


 軽く口笛まで吹きながら、悠季は目を瞑る。

 だけどそう言われてしまうと、余計に続きが気になってしまうのが人の性分だ。


 だから、お前も――

 その先をつい妄想してしまい、思わず顔がかあっとなってしまった。


 そんな私の手をぎゅっと握ってくる、ごつごつした力強い手。

 それは勿論、すぐ横にいる悠季の手だ。

 絶対に離さない。そんな意思が、痛々しいくらいに伝わってくる。


 ほぼ同時にヘッドホンから、例の心地よい音楽が流れてきた。

 春の暖かさに包まれたかのような感覚が、眠気を誘ってくる――

 するとこの前と全く同じ、三枝先生の声が聞こえた。



「それじゃお二人さん、いってらっしゃ~い♪

 どーぞ、よい旅を♪」



 言葉と共に、私の意識はどんどんぼやけていったけど。

 最後まで悠季は、しっかりと私の手を握ってくれていた。

 だから私も、思い切りその手を握り返そうとしたけれど――



 それより早く、私の意識は急速に闇に紛れていった。



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