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村長「村に伝わるピンチの時以外は絶対唱えてはならない禁忌呪文を授けよう。その呪文は『ヌグフゥルペゾロッフッフ』じゃ!!!」勇者「??????」

作者: 黒豆100%パン


「ようこそおいでくださいました旅のお方」



魔王を倒すべく冒険をしている勇者は1つの街に訪れた。そこそこの繁栄もあり、外には青色の結界が貼ってあった。おそらくこの結果は魔物除けだろう。

しかもこの結界、最近新しく貼られたようで青い色が濃くなっている。このような結界は日に日に色が薄くなっていくものでそれが一瞬貼り直す指標のようなものになっている。

色が薄くなってたら貼り直す、簡単な話だ。



「この結果すごいですね」



長老の家で早速その話をした。結界を張り直すと簡単には言ったが膨大なマジックポイントなるものを消費する。もちろん村人にはそのようなものはないので手伝ってもらったりするのだが拒否するものだっている。だからなかなかうまくいかないものなのだ。



「数日に一回は張り替えているんですよ」



「数日?でも結界って一回貼るだけで膨大なマジックポイントが...」



「ええ。ですのでちょっとした裏技を」



「それは一体...?」



「企業秘密ですじゃ」




そういうと村長はニッコリと笑った。そして村長は何かを思い出したように「そうじゃそうじゃ!」と言い奥から何かを取り出した。それは緑色の紫の紐の巻物で、黒い模様がついている。



「これは...?」



「これは我が村に伝わる秘伝の呪文ですじゃ。この先の旅路に役立つと思いますぞ」



「ありがとうございます!!」



そんな秘伝の呪文をこうも易々と教えてしまっていいのだろうか...などと思いながらも勇者が早速中を開くと、その書かれた文字に顔をしかめてしまった。書かれていたのは「ヌグフゥルペゾロッフッフ」という奇妙な文字の羅列だったからだ。

わけの分からない文字列に、勇者はついこの呪文の事を聞いてしまう。



「えっと、これは..?」



「これが呪文なのですじゃ」



「はあ...」



「教えといてこんな事を言うのもアレなのですが、これは禁忌呪文で本当にピンチの時以外は絶対に唱えてはいけません」



「ええ...?」



そんな事を言われれば何を言っているのかと思うだろう。なにせ禁忌呪文を教えてるのだから。ポカンと口を開けていると村長がその続きを話し始めた。



「使った事がない故我々でも何が起きるのかがわからない。何で本当に困った時に使うと良いでしょう」



「ええ...」



確かにピンチの時に使って逆転できるかもしれない。一応持っておいて損はないだろう。使わなかったら使わなかったでそれはそれで良い。勇者はそう思いながらその巻物を受けとった。







「ううーん」



勇者は村をでて岩に腰掛けて唸っていた。その理由はあの禁忌呪文の事だった。「ピンチの時以外は使ってはならない」と念を押されたがそう言われてしまうとどのような呪文なのかがとても気になって仕方がないのだ。



「唱えてしまおうか...」



そうも考えたがやっぱりやめて、また考えて...と言うのを少しの間ずーっと繰り返していた。気にすればするほど気になってしまうものだ。勇者は巻物の事は忘れよと思い立ち上がった。そして冒険の続きを始めた。

だが、少し進む度にあの巻物がチラついてしまう。頭の中にへばりつくようにして離れないその巻物は唱えろと言っているようだった。その誘惑にも負けないように何とか別のことを考えるがなかなかうまくいかない。

「うーん...うーん...」と考えながら進むと少しばかり冒険に支障が出てしまう。相手の避けられそうな攻撃でも当たってしまうし逆に勇者の攻撃も当たらなくなる。巻物のせいで集中できていない状態だった。



「そうか!別に1回きりじゃ無いからな!」



唐突にそんな事を言い出した。マジックポイントは使うが、何度でも使える。周りには誰もいないし、いたとしても魔物ぐらいだろう。だから何が起きても大丈夫なのだ。と勝手に勇者が思っているだけだが。勇者は巻物を開いてその呪文を唱えた。



「ヌグフゥルペゾロッフッフ」



だが何も起こらなかった。勇者はほとんどのマジックポイントを使って何も起きないことに落胆した。勇者は雷が凄まじく落ちるとか、隕石が降るとか、大爆発が起きるとかそういうすごいものを期待していたからだ。だが勇者はこの結果に諦めてはいなかった。きっと何か起こるだろう!そう思いながら進んでいた。勇者には何も起こらないとも知らずに...。






呪文が唱えられた頃、街に結界が貼られた。青い結界は重ねがけされてより強固なものとなった。それを見て村長は喜んだ。なぜなら作戦がうまく成功したのだから。



「考えましたね」



「ああ」



「まさかあの呪文がこの街の結界を張り直すものだとは思わないでしょうね」



「ええ。我々はマジックポイントというものがない。だからこの呪文を唱えられない。なら『唱えてはいけない』といってもマジックポイントを持つものに授ければいいのだと」



勇者に渡した巻物は秘伝の呪文というのが真っ赤な嘘で、ただの村の結界を張り直すだけのものだった。村人がそれを唱えることができないためこうやって秘伝の呪文だと言って来る者全員にこうやって渡している。中にはその言いつけを律儀に守って読まないものもいるが、「何が起こるか分からない」などと言えば大抵は気になって唱えてしまうものだ。呪文の名前もヘンテコなら尚更だ。



「こうして我々の住む村も安寧を手に入れているんですからね。気づくことは万が一にでもないでしょうがね...」

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