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第一章 山の中
山の奥、森林・竹林に囲まれた、小さな旅館。
その旅館に僕らは来ていた。
この近くで、人狼が村を襲い、全員が喰い殺されるという事件があったためだ。
「いらっしゃい、阿波照旅館へようこそ。私、女将の妖精と申します。
今日は他のお客様がお三方いらっしゃるので、いつもより賑やかですよ。」
ちょうど、昼食の時らしかった。確かに、女将さんの他に、3人の宿泊客らしい人たちが居た。
「お、今日は俺以外に2人もいたから、随分と珍しいもんだと思ったが、3人目とは。俺も数年この旅館に週一で泊まりに来てるが、一度に4人いるのを見るのは初めてだな。」
いかにもこの旅館の常連らしいその男は、「ステルス」という札の付いた鍵を持っていた。
「この鍵をどうぞ。貴方様のお名前の書いた札も付けてありますので、お間違いなさいませんよう。」
と言って、女将さんが鍵をくれた。“あつ”という札も付いて。
という事は、彼はステルスという者なのだろう。
アツは彼を酷く気に入らないようだった。