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 裏



 古来から、夕暮れ時を逢魔が時と呼ぶらしい。


 その少年はちょうどそんな時間に、ゾッとするような怖い体験をしてしまった。


 昭和五十×年の九月のある日。

 子供たちの間では怪しい女の噂が流れていた。




「昨日のけーほーの後さ……。忘れ物して一回公園に戻った時、俺、口裂け女見ちゃったんだよ……。すっげー怖かった……」


 少年は顔を青ざめさせて話すのだが、友人は信じない。


「嘘つくなよ! 先生に言うぞ!」


「何、何?」


「こいつ、口裂け女見たとか嘘ついてんだ!」


 少年の周りに友人たちが集まってくる。


「ホントだって……。長ーい髪で、赤い服を着たお姉さんが公園でしゃがんでいたんだ。俺、具合悪いのかと思って、声掛けちゃったんだよ……」


「そ、それで……?」


「ほら、けーほーが鳴ってたからさ。毒のせいかと思って、早く家に帰らなきゃダメだって教えてあげたんだ。そしたら、…………ガバッ! って顔を上げてこっちを見たんだ……!」


 みんながゴクリと唾を飲んだ。


「目しか見えないようなデッカい赤いマスクで顔を隠してて……、その目も真っ赤だった……。そんで、俺に何か聞いてきた。モゴモゴしててよくわかんなかったけど、あれはたぶん……。


 “私、キレイ……?” って」


「ギャーッ!!」


「そ、それで! お前、どうしたんだよ!」


「もちろん逃げたよ! 答えたら殺されちゃうんだろ? すっげー怖かったけど、めちゃめちゃ走って逃げたよ!」


「に、逃げれたんだ……。よかったな……」


「いや、女は俺に付いてきてたんだ……! 俺の後を走って追いかけてきてた!」


「そ、そ、そ、そんで……?」


「サンチェーンのところまで逃げて、そこで後ろを振り返ったら……」


 再びみんながゴクリと喉を鳴らした。


「口裂け女は少し後ろでまたしゃがんでいた。こっちに向かって手を伸ばしてて……。ちょうどサイレンが鳴ってたのも怖くて、もうすっげー怖かったから、ビクッて体も動かなくなっちゃって。目をギュッて瞑ったんだ。


 ……勇気を出して目を開けたら、


 …………そこには、誰もいなかった」




「ひえーっ……」


「こ、こええ……」


「やばいな……それ……」


「おまっ、それ怖すぎだろ!?」






 古来から、夕暮れ時を逢魔が時と呼ぶらしい。


 昼と夜の狭間の時間は空間をも曖昧にし、本来ならば訪れるはずのない人間を、少しだけ別の世界に引きずり込んだり……なんて、不思議なことも起こるのかもしれない。


 お山の天狗様が関わっていたのかどうかは知る由も無いが……。







 最後までお読みいただきありがとうございました。


 当時、警報が発令されてもサイレンは鳴っていなかったと思います。たぶん。その辺はお話のフレーバーということでお許し下さい。


 主人公が戻って来れたのは「おうちに帰りたい」と思ったからでした。迷い込んだ世界から戻れる呪文はやっぱり「おうちが一番」ですよね。皆様、これからも「おうちが一番」で頑張りましょう。


 感想、評価などいただけましたら嬉しいです。よろしくお願いします。





 ここでお知らせをひとつ。

 7月23日(木)から新連載を始めます。


『魔法少年国盗り草子~召喚された元奴隷の下克上~ 自分だけが知ってるモノポリーで町を発展させ資産を増やす #目標金貨十万枚』


 というタイトルの少年主人公、モフモフの仲間も出てくるハイファンタジーのお話です。同時に召喚された者たちよりも早く資産を増やして国盗りをするために、主人公の魔法使いの少年マギがイングランデ王国を駆け回ります。


 よろしかったら、こちらにもぜひお付き合い下さい。お楽しみに!



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