04 精霊イリィ
赤のティアの所持者カレンの登場シーンいかがだったでしょうか?
本日はお知らせの通り、昨日投稿しなかった分2話投稿します。
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特訓を開始してから三時間くらいが経った。
太陽が真上にあった時から始めたので、今はちょうど三時くらいだろう。
もちろんのことながら、太陽のまぶしい光を眼で直接見ると、失明しかけるなんてことは無く、何時間見つめても平気なくらいセピア色をしている。
「よく三時間ぶっ続けでやれるなぁ」
特訓を休むこと無くやる優理を見ながら、カレンは他人事のようにつぶやく。
「いつまで続けると思う?」
「そうですね、日が沈むまででしょうか」
「私もそんな気がする」
「彼からはすさまじいエネルギーを感じますよ」
「・・・・・・おやつ」
「かしこまりました」
「カレン様、今日のおやつはさくらんぼでございます」
「ありがとう、今日のおやつもとても美味しそうだわ」
「美味しそうだわ♡じゃねえよ!!」
遠くで特訓していたはずの優理が、息を切らすようにカレンに突っ込んだ。
「あら、急にどうしたの? もしかして私のおやつが欲しくて?」
「違うし、おやつって何、あとその急なお嬢様口調はなんですか。それとこの赤いでかい奴何者だよ!」
三時間近く特訓をしていて、最初のうちは分からないなりに上達しているような気がしていた。だがそろそろ行き詰まってきたのでカレンにコツでも教えてもらおうとカレンの方を向いたところ、何も無いとこから突然この赤い奴が出現したのだ。
「質問が多すぎる、一つにしてくれない?」
怪訝な顔をしてカレンが言う。
「この見るからに赤い魔神的な奴は誰だ!」
優理が言う赤い魔神的な奴とは、牛のような顔と二本の長い角を持ち、猿のような手と馬のように引き締まった足に蹄、筋肉質で余分の無いがっしりとした体格をした二本足で立つ赤い生き物。それが黒のブレザーと白のシャツ、首には真っ赤な蝶ネクタイを付けて完璧に着こなしている。
「あら、言ってなかったかしら? イリィよ」
あたかも当然のことなのにどうして驚いているのかしら? といった表情を浮かべたカレンに続いて重低音が響く。
「申し遅れました、私赤のティアの精霊守護ことイリィでございます。以後お見知りおきを・・・・・・」
右手を胸に当てながら深々と丁寧なお辞儀をしてイリィは挨拶をした。
それにつられて優理も軽くお辞儀をした後、カレンに向き直り
「おい、精霊守護ってなんだよ、これもティアの能力の一つか?」
「あら? 言ってなかったかしら? そうよ、私たちティアの所持者にはティアごとに一体の精霊守護がつくのよ」
「いつまでそのキャラを続けるんですか・・・・・・」
優理がまたしても突っ込むがカレンは無視して続ける。
「精霊守護は私たちティアの所持者を導く存在として神から命を受けた精霊なの。その姿、形はティアの所持者によって変わる。だからお互いに唯一無二の最強パートナーってわけ」
「私、イリィとカレン様は、執事とお嬢様のような関係で盟約を結んでおります」
「お、おう・・・・・・だからそのお嬢様キャラなんだな」
なんか納得してしまった自分が悔しい・・・・・・。
「優理も所持者なんだから精霊がついていると思うのだけれど・・・・・・その様子だと知らないみたいね」
「知らないってさっき言っただろ」
「あら、そうだったわ、めんどくさいのねあなた」
「もうそのキャラやめてください」
「仕方ない、もどそうか」
通常の話し方に戻るカレン。上手くできているなその設定・・・・・・。
「まぁ、精霊について話すのも長くなるから、目の前のことに集中しま・・・・・・」
そう言いながら残りのさくらんぼを口にしようとしたカレンの手と口が止まった。
「ん? どうかしたのか?」
優理とイリィが首をかしげる。
カレンの目線は優理の腹部あたりを向いていた。
「あ、あなたのそのおなかのぽ、ぽっけが・・・・・・、あ、う、うご・・・・・・きゃっ」
今までとは打って変わって可愛い声を出して悲鳴を上げたカレン。
この人は一体何個キャラを持ち合わせているのだろうか・・・・・・と思いつつも口にはしない。
「ああ、こいつのことか、僕がこの世界で目覚めてからずっといるんだよ。名前はニュートンだ」
ポッケの中に手を突っ込み、虹色のハリネズミことニュートンをおもむろに取り出して見せる。
「ニュ、ニュニュン、なに?」
ハリネズミを見ながら、しどろもどろにカレンが聞き返す。
「ニュートンだ。昨日骸骨に襲われてた女の子が付けてくれた名前・・・・・・」
そう言いながら、昨日のことを思い出しうつむく優理。
カレンもそれを察して、
「可愛い名前ね、ニュートン。りんごが似合いそう」
優理の手のひらでごろごろしていたニュートンに手を伸ばしやさしく撫でる。
「この子のためにも、頑張らないとだね・・・・・・」
静かに頷く優理。その間でイリィとニュートンが見つめ合っていたことには、二人は気づいていなかった。
辺りが真っ暗な闇に包まれ、灯りが無ければ何も見えないほどになってきた頃、カレンと村長のヒロキチは話し合っていた。
「そろそろです、村長。村のみんなは避難できていますか?」
「はい、もちろんです。みんな村の南西の方角、一番隅の家屋に避難しています」
「ありがとう。では村長もみんなのところへ」
「お願いしますぞ、カレンどの、優理くん」
会話が終わると村長は避難場所へと向かった。
「本当に、あいつらが復讐にくるのかな」
二人が会話している最中、ずっと黙っていた優理がカレンに尋ねる。
「わからない。だが、やつらの気性の荒さからすると間違い無く今夜だろう」
険しい面持ちをするカレン。
「そんなことより、特訓の成果はどうだい優理」
「ぼちぼちです・・・・・・。想像するっていうのはなんとなく分かったけど、いざやってみようとすると上手くいかなくて」
悔しそうに膝に拳を置く。
「たしかにそうかもしれないな。想像するのにも実際に見たり感じたりしてみなければ掴めないことは多いから。特に実戦するイメージはすぐには沸かないさ。経験あるのみって感じだよ」
勇気づけるようにカレンが優しく言ってくれたのを感じつつも、情けない気持ちになる優理だった。
待つこと一時間。
「ちょっと外見てきます」
しびれと尿意の限界が切れた優理は外に出た。
村に設置されている共用トイレでことを済ませて帰ろうとしたそのとき!
遠くの方から赤い点々が一つ、二つ・・・・・・いや一〇くらい見えてくる。
だんだんと点からぼんやりと丸く大きくなってくる様子を見て、優理はこっちに向かって来ているものだと認識した。
「きた・・・・・・」
そう口にするよりも早く、カレンの元へと走る優理。
「カレン来たぞ! 奴等だ。一〇はいる」
その声を聞き立ち上がり、「そうか、思っていたより多いな・・・・・・」と苦い顔をする。
「いくぞ、優理」
「わかった」
二人は戦場に向かった。
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