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aラストティア ~荒野の楽園編~  作者: 蒼骨 渉
第二章 セピア世界
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02 得体の知れぬ生物

初の戦闘シーンです!

優理が子供達の相手をするようになってから一週間が経った日、いつものように子供達と遊んだあとでヘロヘロになっていた優理は村長に呼ばれて村長の家に居た。

 村長はそわそわと貧乏揺すりをしながら優理の方をちらちらと見ている。


「あのー、どうかしましたか?」

 警戒するように優理が尋ねると、村長は狂ったように叫んだ。

「どうかしましたじゃないでしょう! もうあんたがここに来てから一週間が経つんですよ? まだ記憶が戻らないんですか? それだと、貴方一人分の食料と水が減っていくだけで、私たちは損をしているじゃないですか。何のために貴方をここに置いてあげていると思っているんです? 自然の恵みが受けられないなら必要ないですよ・・・・・・」


 村長は村を守らなければならない責任と生活がままならない不安とでストレスを抱え、だんだんとおかしくなってしまっていた。

 優理は何も返す言葉が無く、ただただ申し訳ない気持ちになる。

 それからお互いに何も言及すること無く、沈黙が流れていたそのとき、慌てた様子で一人の男が部屋に飛び込んできた。

「村長大変だ! カオルとヒカルの二人が居ない、きっとまた村の外に」

「なんだって!? あれほどもう村の外へは行くんじゃないと注意していたのに。しかも暮れの時間だ、夜になったら探しようがないぞ」


 この世界での夜は元の世界の夜とは違い本当に真っ暗で何一つ見えない。全ての自然が輝きを失っているため、月や星があっても何一つ分からないのだ。夕暮れ時の美しいオレンジの景色も、昼間のカラッと晴れた青空でさえも、かろうじて識別はできるが全てセピア色に染まって見えてしまう。

 村の数人と優理で手分けして村周辺を探すもいっこうに見つかる気配がない。


「村長、このあたりには居なさそうですぜ」

一緒についてきた村の男の一人が言う。

「二人が無事に帰ってくることを祈るしかないか・・・・・・」

 目に涙を浮かべながら、村長は唇を噛みしめる。

 一行が村へと引き返す中、優理は何かを思い出したかのように村とは別の方へと走り出した。

「待て、優理どこに行くんだ! 今外へ出たら帰ってこれなくなるぞ!」

 村長は慌てて優理を呼び戻そうとしたが、優理はそれを無視して村の西側へと走り去る。

 走りながら優理は二人と交わした会話を思い出していた。


「おにちゃんみて、ほら、イチゴっ」

カオルが両手に持っていたのは赤い果実、イチゴだった。

「どうしたのこれ?」

「これはね僕たちがじーじに内緒で村の外にでて見つけてきたんだよ」

 口に指を当てながらしーっというポーズでヒカルが答えた。

 そのイチゴはこのセピア世界では異常なほど、綺麗な赤い色と輝きを放っていて、食べるととても甘かった。


「美味しいでしょ? 本当は村の外に出たら怒られちゃうんだけどね。あっちの方にたまたま何個かイチゴが育っていた場所があったの。神の恵みにしては綺麗な色をしているから違うと思うけど」

 村の西側を指さしながらあっちというカオル。

「神の恵みって?」

「神の恵みは、天然の自然物のことだよ。何も無かったところに急に現れる恵だからそう呼ばれてる」

「へー、そんなのがあるのか」

 このセピア世界にはティア以外にも恵みが存在するらしい。

「もしかしたらまた育っているかもしれないから、今度は兄さんも一緒に行こう!」



神の恵みを探していた二人は偶然そのイチゴがとれる場所を見つけていた。だからきっと二人はその場所にいる。そう信じて優理は走り続けていた。



「ヒカルーー! カオルーー! 居るなら返事してくれーーーーー!」

 一〇分くらい走っただろうか、ヒカルとカオルの名前を叫びながら二人を探すがまったく見つからない。

もっと正確な場所を聞いておくべきだった。せっかく仲良くなれたのにもしこのまま返ってこなかったら・・・・・・いや、諦めてたまるか。

 そう強く想い、再び足を進めたそのときだった。


「うわぁぁぁあああああ!」

奥にある崖の方から叫び声が聞こえた。

 優理は急いで崖へと向う。

 やっと遠くに人影らしき姿が見えたところで優理はほっと安心し、手を振って呼びかけようとした。だが優理は咄嗟に血相を変えて、その手を口元に押し当て近くの岩場に隠れる。

 優理が見たモノ。それは、三体の身体がごつごつとした硬そうな白い物体。頭には兜のようなものをかぶり、腰には鋭く長い棒が備わっている。柔らかく肌色の皮膚なんてものは一切見られなかった。

なんなんだあれは!?

優理は恐る恐る岩場から覗きこむ。そして確信した。

骸骨だ!


そいつ等は兵士のような身なりをした骸骨だった。

RPG系のゲームではおなじみの剣や鎧をつけた骸骨の兵士。一般的にはそんなに強いキャラでは無いが、大きな剣や盾を持ったタイプの骸骨はボス級の強さを誇ることもある。

そんな骸骨兵士がなんでセピア世界に・・・・・・。

優理は突然の出来事に頭が混乱状態になる。

すると遠くから子供の泣き声が聞こえてきた。


「うわあぁぁん、怖いよぉ、助けてよぉぉおお」

「だ、だいじょ、じょぶだ、よよよ、お兄ちゃんがつ、つつつつつ・・・・・・」

三体の骸骨兵士に囲まれていたのは、はやりカオルとヒカルの二人だった。

ヒカルは怖がる妹を必死に守ろうと背で庇うが、全身がガクガク震えている。

そんな二人を見て骸骨どもはケタケタと笑う。

「ほーら、泣かないのおじょうちゃーん、これから楽しいことするんだからねー」

「うるせぇガキは嫌いなんだよな、今すぐ殺しちまいたいぜ」

「せっかちは嫌い・・・・・・、朕はもう少し怖がらせてから殺す」

 気味の悪い笑みを浮かべながら、二人を追い詰めていく骸骨達。

 本当は優理も今すぐにでも助けに生きたい気持ちで一杯なのに、恐怖で足が動かない。

 現実に、リアルに、あんな化け物みたいな奴が居てそれに立ち向かう・・・・・・無理だ、できっこない。僕にそんな力なんてない。いつも一人で本を読んでいただけのボッチの僕にそんなこと・・・・・・。

一人葛藤する優理、しかし立ち向かう勇気がでてこない。


そうこうしているうちに一体の骸骨が言った。

「なぁ、一匹だけ先に殺しちまわないか?」

 その言葉に優理と双子の血が凍り付く。

「うーん、そうするか」

「じゃあ、まずは、こっちのちびから殺すか!」

 骸骨が持っていた棒で指したのはカオルの方だった。

 恐怖で何もしゃべれなくなる二人。それに対して骸骨がまた嘲笑う。

「あれー? さっきまでは大丈夫お兄ちゃんが守ってあげるって感じだったのに、どうしちゃったのかな? あっ、もしかして自分が最初じゃなくてホッとしちゃった?」

 ヒカルは「そんなわけあるか!」とにらみ返すが、身体は硬直状態で動かない。

「じゃ、遠慮なく」


骸骨の一体が腰の剣を抜きカオルに近づいていく。

鋭い剣が振り上げられた瞬間、恐怖で喉がつっかえて声が出なかったカオルが最後の気合いを振り絞るように大声で叫んだ

「たすけてぇ! 鬼のおにいちゃぁぁぁぁああん!!!」

 なぜかこの場にいないはずの優理に助けを求めたカオル。それが幸か不幸か、この魂の叫びを聞いて黙ってられるような優理ではなかった。

「まてぇえぇぇぇ!!」

 優理は近くに落ちていた棒を拾い上げると勢いよく岩場から飛び出し、棒を構えながらかすれるような声で叫んだ。


 その叫びに反応して三体の骸骨が優理の方へ振り返る。

「誰だお前?」

「お、俺は、鬼のお兄ちゃんだ!」

その声に反応してカオルとヒカルの表情がぱぁっと明るくなる。

「おにちゃん!!」

「兄さん!」

 なにが鬼のお兄ちゃんだと顔を合わせながら笑う骸骨達に優理が挑発する。

「俺の可愛い兄弟達を返してもらおうか」

 優理の気迫の籠った台詞を聞いてもなお笑い続ける骸骨達に、優理は続けて、

「もしかしてお前等弱いのか? だから自分たちより弱い生き物しか相手にできないんだろ」

こんな安っぽい挑発になんて乗るわけ無いよな・・・・・・優理はそう思ったのだが、

「はぁ? 弱くねぇし、ちょっと退屈しのぎしてただけだし? お前が強いかどうかは分からないが相手してやるよ!」

 効果抜群! 骸骨達はまんまと挑発に乗かった。

「俺が行く」

 三体の中の一体が他を抑えて前に出た。


「三対一なんて卑怯な真似はしねぇ、なんたって俺はこの三人の中で一番の力持ち、ギロ様だからな!」

威勢良くギロと名乗る骸骨が構えを取る。

「おいまて、一番の力持ちはこのカッター様だろ」

 後ろからカッターと名乗るもう一体の骸骨がしゃしゃり出た。

「朕も・・・・・・」

「何を言うか、このギロ様がこの中で一番だ!」

 ギロが構えを解き言い返す。

「いや、このカッター様の方が強い!」

「朕も・・・・・・」

「いーや、このギロ様だ。お前との腕相撲一〇〇番勝負、五〇勝四九負一分で勝ち越しているじゃないか」

「違う、この前俺が一勝したから五〇勝五〇負一分だ!」

「朕も・・・・・・」

「あ、そうだったか? でも俺の方が先に五〇勝してるからな、俺が一番だ!」

「最新の試合で俺が勝ったから今は俺が一番だ!」

「チンもっていってるだろおおお!」

 さっきまでの緊迫感が薄れ、言い争いをする三体の骸骨。その隙をついてカオルとヒカルがその場から逃げだそうとした。

が、しかし、

「おっと、それは興ざめしちゃいますよ、ねぇ?」

 逃げ出したところを腰から抜かれた剣で阻まれる。

「おとなしく待ってないと、今すぐに殺しちゃうからね」

 チンがニタニタしながら言う。

「じゃあ俺が行くってことでいいな?」

 ギロが木刀を構え前へ足を出す。

 優理ももう一度気合いを入れ直し、一呼吸。

「行くぞ」

 ギロが優理に向かって走り出し木刀振りかざす。


 ドンッと鈍い音が響く。

「お、重い」

優理はあまりの衝撃に木の棒を落としそうになりながらも必死で受け止める。

ドン、バコン、ドン、カッ、ドンドン

何回か打ち合うとお互いの力量がはっきりしてくる。

「ヒャッハー! 楽しいねー。もっと、もっとやろうぜ!」

ギロの攻めるペースは全く落ちない。逆に優理は受け止める度に、腕の骨を折られるような痛みに耐え続ける。

「ギロの奴わざわざ木刀なんか使って愉しんでやがるぜ」

「朕なら真剣でバッサリ・・・・・・ぶっしゃーだね」

このままじゃ負ける・・・・・・、なんて情けないんだろう。

 見ず知らずの僕と目を覚ました日から仲良くしてくれて、お兄ちゃんって呼んで慕ってくれる二人が危険な目に遭っているというのに、助けてと呼ばれるまで恐怖で動けなかったあげく、今もただ防戦一方で勝ち目が無い。

 村長や村のみんなにもティアの所持者(マスター)なのに何もしてあげられなくて、ただのお荷物で。


 一度は変われるって思った、もう一人の自分として戦っていけると思った、思った?

 そうだ僕はこの世界で主人公になろうとしたんだ! このセピア世界にやってくる時、ティアを手にした時にそう願ったんだ。

 こんなところで死んでたまるか、みんなのためにも自分のためにも僕は・・・・・・僕は!!

「勝たないといけないんだぁぁぁぁああ!」

優理がそう雄叫びをあげると、辺りの空気が振動し始めた。

「な、なんだ!?」とギロの攻撃が止まる。


 優理はすさまじい虹色のオーラに身を包ませ髪は逆立っていた。そして持っていた木の棒の先の部分が、そのオーラで形を造り具現化され長くなって見える。

 その圧力に一瞬ひるんだギロに優理はすかさず一発、二発、三発と打ち込んだ。ギロは五メートルほど吹っ飛び倒れ、気絶した。


「おいおいまじかよ」

 カッターは吹っ飛んでいったギロを見て笑っていた。そして優理に向き直る。

「おとなしくしてりゃ痛い目みずにすんだのにさ」

 そう言うと腰に付けていた真剣を取り出した。

 チンも剣を取り出しこちらに向かってくる! と思ったのだが・・・・・・。

「この二人はもう用済みだ、消えてもらおう」

 急な方向転換と同時に真剣を兄妹に向けて振りかざした。

「やめろぉぉぉぉ!!」


優理の声もむなしく、その剣は切れ味のいい音で、カオルを庇ったヒカルの背中を切り裂いた。

「ぐはっ・・・・・・」

「お、おにいちゃん! ってちょっと・・・・・・待って、おち・・・・・・い、いやぁぁぁ!!」

 ヒカルはカオルにもたれ掛かるように倒れるが、カオルはその重さに耐えきれず、二人一緒に崖から落ちていってしまった。


 段々と遠のいていくその悲鳴が優理の鼓膜を振るわせる。

 落ちていく二人を見ながらケラケラと笑う二匹に、優理はヨタヨタと近寄りながら怒りに任せて木の棒を振るう。

 それを何回か避けた後、「めんどくせぇ」と言ってカッターは剣を振り、優理の持っていた棒を真っ二つに切った。

 それでもなお優理は我を失ったように、「くそっくそぉ・・・・・・」と良いながら腕を振る。

「あーあ、なんだよつまんね」

 カッターは優理の頭を片手で掴むと、そのまま持ち上げて放り投げる。そして背中を強く打ち付けて倒れる優理に剣を振りかざす。

「じゃーな」

真剣の鋭利な先がこちらに近づいてくる。

「あぁ死ぬのか・・・・・・」と優理は心の中で思いながら目を瞑った・・・・・・。

 

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