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aラストティア ~荒野の楽園編~  作者: 蒼骨 渉
第五章 呪われた城と虹の精霊
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01 精霊守護ソニア

第五章スタートです!

 一人の老人と三人の若者との間に深い友情の芽が生まれたのはともかくとして、問題であるソラにかけられた呪いを解くには僕達と同じくティアの力を持つ緑のティアの所持者(マスター)を探さなくてはいけない。

 ラムじいの水晶占いによると、現在僕等が居るグオーレ王国の北方に森らしき緑が見えて、そこに緑のティアの所持者(マスター)が居るらしい。当然僕達は北に向かって進めばいいのだが・・・・・。


「北か・・・・・・」

「北ねぇ~」

「北だな」

「北じゃの」


 全員が北とだけ口にしてため息をつく。


 僕とカレンがヒロキチ村長の村からリングの導きによって辿り着いた、大きな山を背にして建つグオーレ王国。その城下町には三つの門があった。一つは西門、一つは東門、そして最後が僕等の通った正門である。この正門から真っ直ぐ進むとチャオス王子の婚約者を選ぶ予選会が開催された広場があり、そこを通り過ぎるとグオーレ城へと続く坂がある。また正門から左に行くと宿屋と西門が、右に行くと酒場と東門がある。これが大まかなグオーレ王国の構造だ。


 これを方角で考えてみると正門が南門であることが分かり、グオーレ城が北に位置していることも分かるだろう。

 つまり目的地となる森はグオーレ城のさらに北にあることになり、グオーレ王国の北側は山なのだ。

 最短距離で直線に北へ向かおうものなら山を登っていかなければならず、登山を回避するならば麓を迂回して行かねばならないことになる。

 ソラの容態がいつ崩れるか分からない今、出来るだけ早く事を成さなければならないのに、どっちの道を選んでも時間が掛ってしまう。

 これがため息の原因であった。


 しかし悩みはそれだけに尽きない。

 グオーレ王国は比較の対象がヒロキチ村長の村しかないというのは統計として不十分だが、大きな都市であることに間違いはない。それにも関わらず黒の軍団――――クリプト大臣の侵略を許してしまっていたというのは残念な事実だ。そして一匹の蠅が居るなら二匹、三匹と居ても不思議では無い。


 もし僕とチキとカレンの三人がこの場を離れた時に来訪者がおり、そいつが黒の軍団の敵だったとしたら? 動けないソラをじいさんが護れるわけもなく、一緒にあの世に逝ってしまうだろう。つまり、僕達三人のうち少なくとも一人はこの場に残ってソラとラムじいを護衛しなければならないのである。


 これが隣村に居る医者を呼びに行くくらいのクエストであれば一人でも申し分ないのだが、深い森の中で居るのか居ないのかさえ分からず、素性も知らない相手を探し「治療してください」と頼んだ挙句、連れて帰ってこないといけないのだ。どれをとっても困難極まりないおつかいになることこの上ないだろう。

 故に僕等は頭を捻り続けていたのだった。


「とりあえず足の速いチキが走って緑のティアの所持者(マスター)を探して連れてくるというのはどうだろうか?」


「いかにもまじめに言ってますみたいな感じ出してるけど、ウチの労力半端ないんすけど」


「なら一人でここに残るか?」


「いや、なんでウチ一人が前提になってんのさ!」


 カレンがチキを煽り、チキが噛みつくといういつもの茶番が始まったように思えたのだが・・・・・・


「え、ああ、そうか、そうだな」


 カレンはいつもと比べて歯切れが悪かった。その様子をチキも不思議に思ったようで、


「え、まさかわざとじゃなくて本気で言ってた?」


 声のトーンを落として訝しげにカレンを見つめる。


「すまない、気付いてなかった」


 素直に謝るカレンにチキは豆鉄砲を喰らったようで


「ええ・・・・・・。カレンって天然かじってんの?」


「て、天然ってそんな! 少女漫画の主人公じゃ有るまいし・・・・・・」


 恥ずかしさから口元を拳で隠すカレンの声はディミヌエンドがかかったのか、段々と小さくなっていった。

 時々現れる天然とお嬢様キャラは姉御肌のカレンが持つ特殊なギャップだ。一人の人間が備えるにしては多すぎる属性はまるで内側にもう一人のカレンが居るのではないかと疑われてもおかしくはないだろう。

 ただ本人はあまり自覚していないらしい。まあ「私天然です!」なんて言う天然は作られた天然であって、本物は自分自身が天然だと思っていないというのがこの性格の特徴なので仕方ないっちゃ仕方ない。


「へぇ、カレンにこんな一面があったなんてねぇ」


 弱点を見つけたり! と言わんばかりのチキは目を三角にして悪い顔をする。 

 カレンの天然キャラとチキの悪い顔はさておき、どうやって山を越すかについてはまだ解答が出せないがもう一つの問題は結論が出た気がした。


「緑のティアの所持者(マスター)を探しに行くのは僕とチキの二人にしようと思う。理由としては二つあって、やっぱり人捜しをするならチキが一番得意だろうし、数が多い方が早く見つけられるということ。もう一つはこの地下洞が外に比べたら危険度も低いと思ったからだ。とはいえ二人を護らなきゃいけないわけだから厳しいと思うけど、カレンなら万が一に戦闘になっても蹴散らしてくれるかなって。どうかな?」


 僕の提案を二人は頷きながら聞いてくれていた。そしてどちらも「異論はなし」と返事をしたことでこの案が採用されることになる。


「あとは優理とチキがどうやって北を目指すかだが・・・・・・」


「その点に関シテはワタシにオマカセ下さい」


  再び一番の問題である行路について考えていると、機械音にも似た音声の混じった声がどこからともなく聞こえてきた。

 突然の聞き慣れない音調に驚いた僕達はその声がする方に顔を向ける。するとそこに居たのは、


「イリィと・・・・・・ソニア?」


 カレンは首を傾げながらそこに居た赤の魔人とホライゾンブルーの髪を二つに結んだ少女の名を呟いた。


「ミナさんの問題はワタシがカクッとカイケツ☆」


 あっけにとられる僕等に対し、両手を差し出し「皆さん」、指を回して「問題」、胸に手を当て「私」、指で作った拳銃を頭の横で二回捻り「カクッと」、その拳銃を突き出し撃って「解決」、最後にぎこちないウインク。一つ一つにジェスチャーを混ぜて申し出たのはイリィによって精霊界に戻ったはずのソラの精霊守護―――ソニアであった。


主な登場人物


・優理 虹のティアの所持者

・カレン 赤のティアの所持者

・チキ 黄のティアの所持者

・ソラ 水のティアの所持者

・ラムじい 元ティアの所持者?

・ニュートン ハリネズミ

・イリィ 赤の精霊守護

・モノ 黄の精霊守護

・ソニア 水の精霊守護

・緑のティアの所持者?

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