15 ラムじいの秘密
本日は続けて投稿しました。
少し書きためていたのもありますが、この設定を出すか否かで迷って保留にしていたのが原因でもあります。また複雑な設定が増え、難しいと感じるかもしれませんが頑張ってついてきてくださいね笑
「事情は分かったがこれからどうする? 腐蝕印を解く方法は他にあるのか?」
「それに関してだが、儂に一つ心当たりがある」
さっきまで為す術無し、と言わんばかりに萎れていたのにどういう風の吹き回しなのだろうか? まぁ何にせよこのじいさんについては分からないことばかりだな。
「お聞かせ願おう」
僕の思案はつゆ知らずカレンは手で煽りを入れる。
「うむ、ただその前に一つだけ君たちに言っておかねばならないことがある」
「それは今必要なことなのか?」
「優理君が一番聞きたかった事だと思うがどうかな?」
僕が聞きたかったこと・・・・・・・か。何でもお見通しだと言わんばかりの目が気にくわないが、そんなの今更か。
「分かりました、お願いします」
「うむ。では、まずは君たちが今ここに集まっていることは偶然だと思うかい?」
偶然か必然か。その質問がどこからどこまでを指すのかはイマイチ掴めないが、その効き方からするともちろん・・・・・・。
「もちろん偶然では無い。儂が占いで未来を予想し、その通りに君たちに動いて貰った」
ようやく、はっきりとラムじいの口からこれまでの不自然な偶然が必然であることが告げられた。カレンとチキは多少なりとも驚いた表情を見せてはいたが、想定の範囲内だったのだろう。開いた口は塞がらずに会話が続く。
「じゃあウチに自然の監獄を教えたのも?」
「私達を修練の塔に向かわせたのも」
「この地下銅や城への隠し通路も蜂と蝶を闘わせたのも全部、じいさんの敷いた道の上ってことなんだな」
「うむ。まぁいくつかは君の言う道では無く未知だったものもあるが、大概はその認識で合っている」
「じゃあどこまでが・・・・・・」
「まぁ落ち着きなさい優理君。君の思考力や想像力はこの儂も認めるが大事なのはこれまでじゃなくてこれからだろ? 今必要なのはソラ君を救うための手段、違うかな?」
違わなくは無い。ソラを救うことが今の僕等にとって最も大事なことだ。もしティアの所持者が死んでしまったら次の所持者が現れるまで待ちぼうけを食らう羽目になる。ただでさえ全員集まって居ないのに目の前の輝きを失う訳にはいかない。でも、それならどうして今こんな話を切り出してきたのだろうか。僕との約束が理由ならばとことんまで付き合って貰わなきゃ、また中途半端に誤魔化されるのは御免だって僕が思っていることくらい理解しているはずで、僕の言葉を制するのはおかしい。
一体このじいさんは何を僕等に伝えようとしているんだ?
考察が脳内を駆け巡ることで生まれた沈黙を良いように解釈したラムじいが続けて話し出す。
「これまでの経緯の中で儂が君たちに考えて欲しかったのは、何故儂が君たちのティアのことを教えられたのか? ということだ。ソラ君を救出する鍵はその先にある」
ラムじいがティアについて詳しい理由・・・・・・。それがソラを救う鍵であり、僕等をここまで導いた道。
「儂がティアについて詳しい理由、それは―――――――」
喉元に突っかかり溜まっていた唾がゴクリと音を鳴らして通り抜けていく。それはまるで解けずに溜まった問題の塊が全て解けて無くなるように。
「ラムじいがウチらと同じ・・・・・・」
「ティアの所持者・・・・・・」
そんな馬鹿な、と思わざるを得なかった。
誰も予想しなかった、というより出来なかったであろう新事実に、今度こそ僕等は開いた口が塞がらなかった。
「儂もかつては君達と同じくティアを使いこなし、自然と共に過ごしていたものよ。ホレッ、ホッ、ホレー」
雷に打たれたように硬直する僕等を前にして、非力な腕を回し、陽気な足取りでステップを踏むじじい。それに対して未だに頭の整理が付かない若者。
そんな動かない若者に対して動く老人がこの様子をおかしいと思ったのか首を傾げて、
「ん、どうしたんだみんな固まって。もしかして聞こえなかったのかな? もう年寄りじゃ有るまいし一回で聞きとらんかね。儂は君らと同じくティアの所持者だったのだ。もう十年以上も前に死んでしまったんだがな」
いや、聞こえなかったから硬直しているわけじゃ・・・・・・って、今なんて?
「「「死んでるって!?」」」
二度目の雷が落ちると同時に僕等の時が再び動き出した。
「おぉ・・・・・・急に動き出したらびっくりするぞ、心臓が止まって・・・・・・って一度止まったんだった。あはっはっは!」
軽い冗談のつもりで笑い飛ばそうとする、時の止まっていたじいさん。二度の雷に打たれた僕等はここから怒濤の質問攻めを開始した。
数十分にも渡る質疑応答の内容を纏めると、まずラムじいは生前にティアの所持者だった。それが大体十年ほど前の話。つまり十年以上も前に死んだ人物であるということ。何故今、肉体を灯してこの世に存在しているのかは本人も不明らしいが、目が覚めたらセピア世界に居たらしい。コレが約一月前とのことだ。目覚めた時は自分が何者であるかすら分からなかったが、チキに出会い、ティアを目にした時に記憶が戻る。そこからは知っての通り、チキに自然の監獄について教え、占いで僕等を導くに至ったのだ。
死んだはずの者が生き返り、元ティアの所持者として現ティアの所持者に指南をする。前者だけを考えればあり得ない話だが、後者が続くことでこれも誰かの作為的な運命とやらに成り代わりそうな案件だなと僕は思った。
思ったのだが、それ以上に不思議で面白い、まるでファンタジーのような話をラムじいが語り始めたことで僕の追求はここで終わった。
「ソラ君とは関係の無い話にはなるが少しだけ儂の話をきいてくれやしないかい?」
少し寂しそうに、そして懐かしそうにラムじいは息をついて話始める。
「儂がかつて君らと同じティアの所持者だった、正確に言えばティアの守護者だった頃の話だ。儂のかつて生きていた世界はな、このセピア世界とは全く異なる、それはもう美しい七色に輝く世界だった。
赤・青・黄・緑・紫・水・橙の国はそれぞれの守護者が王として統治し、その七色の国に囲まれる形で中心にあったのが虹の国―――レイン王国だった。儂は紫の守護者として度々レイン王国の王と揉めてての、それはもう国同士の対立と同意みたいなものだったから毎回大変で、沢山迷惑をかけてしまったよ。
それは私情なのでさておきだ、その七色に美しい世界は儂が死ぬのとほぼ同時に滅亡してしまった。何故か? それは神の掟に逆らったからだ。
この七色の世界、別名を【神の胴体】と呼んで、【神の胴体】では神の血を継いだ我々人間が神のルールに従って暮らしていた。神に胴体があるのならもちろん頭部もあるわけであって、【神の頭部】と呼ばれる世界には神族が存在していた。
事の発端となったのは神の胴体の人間が神の頭部の神族との間に子を授かったことからだった。掟上は、二種族は交わってはいけない、接点を持ってはいけないことになっており、唯一例外として認められていたのは虹の国の王のみ。にも関わらず、神族との接点を持つだけで無くその体内に神族の子を宿した者が居たというのだ。神族の長は酷くご立腹されたようで、一時は神の胴体を消し去ろうとまでしたらしいが、虹の国の王の計らいでなんとか思い留まらせることに成功した。これで滅亡の危機は免れたように思えた。が、ここからが人間の悪いところであった。一度許されてしまったことにより、我々はその掟を平気で破るようになってしまったのだ。
簡単に言えば、神族の体に人間の男が興味を持ってしまったわけだ。まだ普通に接しているだけなら交流を深めるためと言えたかもしれないが、そうはいかず、半ば強引な性交に窃盗、監禁などやりたい放題だった。
そこからはもう想像できるだろう。
神族による一方的な制裁が人間に下された。圧倒的だったよ。
それでも儂を含めた各国の王は最後まで人間を、神の胴体を護るべく、神族の長の元へ向かう果てしない塔を登っていった。
結果として儂等はティアの守護者でありながら神の胴体を護ることが出来ずに、国の滅亡と共に世を去ったわけだ。
さて、君たち若きティアの所持者がこのセピア世界にその名を受けたのは果たして何のためだろうかな。ただの偶然だろうか? それとも必然なのか? もしかしたら神の暇つぶしってことも有り得るだろう。
儂がセピア世界で目覚めたのも何か役目があってのことかもしれない。
しがない占い師だが元ティアの守護者として、君たちティアの所持者の力になろう」
過去を懐かしむのと同時に、侵した失態や成せなかった使命にやるせない表情を織り交ぜながらラムじいは自分の過去について語ってくれた。
僕が想像なんかくだらない妄想に過ぎない、本にしたら上中下巻の重圧な物語になりそうな壮大な世界の物語だった。
主な登場人物
14話参照




