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aラストティア ~荒野の楽園編~  作者: 蒼骨 渉
第一章 満ちた世界と天変地異
4/60

03 天変地異

第一章を分割して読みやすくしました!

「よぉ~優理ちゃん、いらっしゃい。そろそろ来る頃だと思っていたよ、はい、お茶」


優理が図書館に入ると、すぐにそれに気づいたカウンターに座っているおじいちゃんが氷のはいった冷たいお茶を置いた。

 そのお茶をまだバクバクしている心臓と火照った体にぐいっと流し入れる。一瞬冷たくて体がキュッとなった後にため込んでた物を一気に放出する。


「こんにちはロムじい! お茶ありがとう。なぁ聞いてくれよ! 前におすすめしてもらったネズミの三騎士のやつ凄く面白かった! もう一〇回以上は読んだ。今日のおすすめは?」


「今日のお勧めは、【黒竜と七つの光】と【あのドラゴンは今どこに?】の二冊じゃ」


「どっちもドラゴンが出てくるんだね、どんな話なの?」


「一つ目は七人の光の戦士達が、世界を滅ぼそうとしている黒いドラゴンをやっつける話で、二冊目はその黒いドラゴンについての話じゃ。別々のストーリーじゃが、二冊を読むことによって完成するといってもよい作品じゃ。今日も一冊読んでいくのかい?」


「そうしたいのはやまやまなんだけど、今日はちょっと他に用事があってあんまり長くはいられないんだ。だからその二冊は決まりで、他の探してくるよ!」


「そうかいそうかい、いいのが見つかるといいね」


「ロムじい、はしご使うー」


「はいよ、落っこちないように気を付けるのじゃぞー」


 ロムじいの注意をちゃんと聞かずして二階へと駆け上がる優理。


 この図書館は二階建てで構成されていて、二階にある本棚は天井近くまでの高さがあり、大人でもはしごに登らないと届かないほどの高さだ。

 優理はこの図書館に通い続けているが、二階はおろか一階の本すら読み終わっていない。そのくらいたくさんの本があるのだが、優理が二階にこだわるのは、そこに冒険物のファンタジーの本が置いてあるからだ。


 二時間くらい本を漁って大体の目星を付けてから、再びロムじいのところに行きその本のタイトルを伝えた。図書館で本を借りることも可能なのだが、孤児院からの外出日は月に一度のこともあって、返すのにはしばらく時間がかかってしまう。そのためやむを得なくその場では持って帰らず、本のタイトルだけを伝えるのだ。

 その本が孤児院にやってくるか否かはおばさん次第で、優理の伝えた本をおばさんが経費で買ってくるのだ。ちなみに優理が特に読みたい本には赤い星マークが、次に黄色で星マークがついている。

おばさんはこれを見ながら、できるだけ優理が欲しい本を買えるように、街の本屋で探すのであった。


「おっ、そうじゃ優理。今日は天気が良いから丘の上からの夕日が綺麗に見えるぞ」


優理が図書館を出ようと扉に手をかけたときにロムじいが思い出したように言った。


「分かった、時間があったら言ってみるよ。じゃあまたねロムじい」


そう返事して図書館を後にした優理が続いて向かったのはお花屋さんである。

そこで優理は土と肥料を買った。新しい年度が始まり、季節的にも段々と温かくなってくるので、『ベル』にも気分転換が必要だろうと考えていたのだ。

喜んでくれるかなと肥料と土を大事そうに鞄にしまい時間を確認すると、夕食までにはまだ余裕があった。だから優理はロムじいに言われたとおりにここから一番近い夕日の見える丘まで自転車を走らせることにした。


 丘に着く頃には丁度太陽が水平線にさしかかるところで、その光が海の水に反射してきらきらと輝いていた。優理にとってこの景色は、まるでファンタジーの世界のように色鮮やかな美しいもの感じられた。

その自然の生み出す美しい姿に思わず見とれてしまい、しばらく見つめていた優理だったがふと後ろを振り返ってみると、そこには華族達の住む灰色の世界が広がっていた。

 彼らは己の自由と欲のためにキバミを奴隷のように扱うだけでなく、この美しい自然を破壊し、奪っていく。この魅力に気づくことも無く・・・・・・。


「なんて醜く汚い世界」


人間は遙か昔は自然との共存を図ってきていたというのに、今となってはそんな問題すら考えることも無く、ただ私利私欲と便利さを追い求めるようになってしまった。

もちろん文明は進化し素晴らしい世界だという人も居るかもしれない。でもその反面自然は、地球は、そして僕らのようにはぶられたキバミは・・・・・・。


「どうして僕は、空を優雅に飛ぶ鳥に、水の中を自由に泳ぎ回る魚に、なれなかったのだろう。深い緑の葉を付ける木や色とりどりの花になれなかったのだろう。どうして、人間に生まれてしまったのだろう・・・・・・」


決して生活ができないほど苦しいわけでも辛いわけでも無い。上を見なければ別に不自由だと感じることもない。しかし正確にはそう感じさせてもらえているだけなのかもしれないことも優理は知っていた。

孤児院を出たあとのキバミは華族の奴隷。


そんな未来。

あぁ、いっそ・・・・・・。


「こんな世界無くなっちまえばいいのに!!」


そう口にした瞬間だった!

ズドドドドドオォォォン

すさまじい振動音とともに天地が轟き、一瞬にして空が黒い雲に覆われた。

地面の揺れが激しく立っていられない。

海はうねるような波をあげ、木々は揺らぎ、鳥たちは方向を違えてぶつかり合う。


「なに? どうしたの!?」


急な出来事に動揺する優理。

町中の華族の人々も孤児院の子供達やおばさんもキバミ達もみんなが慌てふためく。

高度な文明の建物や設備も倒壊し電磁波を放ち、電気の帯を巻き始める。

至る所で火の手が上がり炎の海へと化す。

誰もが自分の身を守るので精一杯なため、目の前でうめき声をあげ助けを求める人さえも目に入らない。

全てのことが一瞬過ぎて手も足もでない状態だった。


そんな誰もが必死な時に、何故か優理は落ち着きを取り戻していた。

いや、取り戻したのではない、正確に言えば心を奪われていたのだ。

 そんな優理が心奪われるほどに見入ってしまうもの、そんなものが海のちょうど真ん中当たりにあった。それは・・・・・・。



一直線に輝く七色の光



 暗く覆われた世界で今まで誰も見たこと無いようなキラキラと七色に輝く景色。

雲の合間から海へと足を伸ばすその光の線を中心にして、輝き達が螺旋状に渦を巻きながら天へと昇っていく。それはまるで、この世の全ての輝きを吸い尽くしているかのように・・・・・・。


 しかしそれはようにではなく事実だった。

空の青や海の青

森や草木の緑

燃えるような炎の赤

太陽のような温かい橙と黄

色鮮やかな花や果実、生き物達の色


 その光の渦はこの世界から自然(カラー)を奪っていった。

 優理はそうとも知らず、ただただその美しい景色に言葉もでない感動を覚えていた。

 光の渦が最後の自然(カラー)を吸いきるかのように、フッと天へと消えていったのと同時に、天変地異が止まり、そこから何か輝く物が乾ききった元は海だった地に落ちていった。


 優理は何を考えるわけでもなく、その輝く何かの元へと走り出していた。

 そしてしばらく走った後、ついにその輝く何かを優理は見つけた。

 それは涙の雫のような形をした、手で握ったら隠れてしまう位の大きさの、七色に光る宝石だった。

優理がその宝石を拾い、手にした瞬間にどこからともなく声が聞こえた。


「七つのティアの頂点に立つ虹色のティアに選ばれし少年よ、我の声が聞こえるか」


優理は驚き、周囲を見渡すが誰も居ない。どうやらその声はこの宝石から聞こえているみたいだった。


「あんた、一体誰だ?」


「聞こえているようだな」


「質問に答えろ」


「その必要は無いが、強いて言うならば神だ」


 その声の主は神と名乗った。普通の人ならばきっと相手にしないであろうそのセリフを聞いて、優理は胸の奥が熱くなる。

 神は続けて言う。


「虹色のティアに選ばれし少年よ、今、世界では自然(カラー)が失われた。もしこの世界に自然(カラー)を取り戻したければ、汝と同じくしてティアに選ばれし者と共に楽園を目指し、そこで聖杯に祈りを捧げよ・・・・・・」


自然(カラー)が失われた? ティアに選ばれし者? 聖杯? 一体どういうことだよ」


 やや興奮気味に強い口調で神に聞き返すも、神からの返答はなかった。


 頭の中では何一つ理解できていないが、一つだけ感覚で感じるものがある。それは、もしかしたらこれが自分の待ち望んでいた世界、ファンタジーの世界なのかもしれないということだ。

 これが夢なのか現実なのか分からないが、もしこれが現実なのであれば、今までの退屈だった毎日や腐敗した世界から解放されるのかもしれない。今までの空っぽだった自分にもう一人の自分をあてがって変われるチャンスかもしれない。やや不謹慎かもしれないが優理はワクワクを感じずには居られなかった。

 そんな風にいろいろと考えていた優理の後ろから突然声がした。


「世界が変わるよ・・・・・・」


 その透き通るような清廉な囁きと同時に世界は大変動を遂げて、今までの地形とは全く別物のまるで異世界のような大地へと変貌するのだが、彼の意識はここで途絶え、淡白い光の中へと薄れていくのであった。


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