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aラストティア ~荒野の楽園編~  作者: 蒼骨 渉
第三章 グオーレ王国
32/60

18 白の巨塔

閲覧・ブクマありがとうございます!

え?まだブクマしてない??

またまたご冗談を!


あ、今ならブクマ1つにつき2ポイント加算されますし、評価していただくことで日間ランキングにも載ることができるんですよ~。


え?メリットが無いって?

そんなバナナ!?

「おーい、カレーン、チキー、居るなら返事してくれー。ったくどこまで行ったんだ・・・・・・」

 二人を追いかけたはいいが全然追いつかない。こころなしか坂になっているようで、呼吸が荒くなる。

それにしても結構な数の囚人が檻の中には閉じ込められているな。そんなにティアの力を無理矢理使おうとした悪人が沢山居るのか? それともチキの親分みたいに故意に送られてでもいるのだろうか? どちらにせよ自然の監獄(フォレストロジャー)にいる人々の目には光が宿っていない。

 囚人達の様子を伺いながら足を進めていると優理はあることに気付く。

「この香りは・・・・・・土?」

さっきまでの人間の蒸れた汗の臭いとは異なる、雨の中の森のようなじめじめとした土の香りが優理の鼻をさしてきた。

さらによく見ると壁にあった灯りは既に無くなっていて、代わりに紺色に近い深い青が壁に染みこむように映っていた。その青が紺へと近づくにつれて土の臭いもよりいっそう深く香ってくる。

「外だ・・・・・・」


 見渡す限りに生い茂る木々は空を覆うほどの高さまであり、この暗さはそれ故なのか、夜だからなのか疑問に思うくらいだ。地面は踏むと靴後がくっきりと残る水分の含んだ焦げ茶色の粘土といった感じである。

 通路の続きであるかのように捉えられるその土の山道を、優理は警戒しつつも悠然と歩く。

よくよく土を見れば落ち葉や枝が乱暴に崩されている。きっと二人の仕業だろう。ただ、カレンとチキもここまで来たなら僕のところに戻ってきてもおかしくはないはず。なのに何故未だに合流できてないのか。

その疑問に対する答えがこの先にあった。


長身の樹木でできたアーチをくぐり抜け飛び込んできたその光景は、思わずあっと息を呑むほど幻想的な景色だった。

それは雲一つ無い紺碧に染まった空を背にした純白な巨塔。

一言で表すなら【白昼夢限(はくちゅうむげん)の塔】だろうか。

下から見上げても一切終わりが見えない真っ白な塔は、天国まで直結行けます! と謳われても欠片も疑うことなく納得をしてしまうくらいの高さを誇っていた。


あっけにとられながらも塔の入り口に続く三角州型の階段をゆっくりと上がる。するとこの空間に相応しくないであろう二色が見えてきた。カレンとチキだ。

二人は塔の入り口で立ち止まっていたが、優理の姿を視界に捉えるや否や駆け寄ってきた。


「優理遅かったではないか」

「なにのろのろ歩いてるのよ、待ちくたびれちゃったわ」

「それはこっちのセリフだ。急に監獄から森に変わったんだから一度引き返してくるだろ普通」

優理がため息交じりに口にするが、二人は不思議そうに首を傾げた。

おっと、この二人には普通は通じないみたいだ。

「まぁいいや。それよりこの塔は一体何なんだ」

「ウチもここまできたのは初めてだから分からないけど、なんか凄い雰囲気出してるよね・・・・・・オバケでもでてくるんじゃないかな」

 チキは怖いものが苦手なようで想像しただけで身震いしている。

自然の監獄(フォレストロジャー)自体は精神世界なわけだから幽霊くらい居てもおかしくないだろう」

「ひいっ!」

 わざとではなく本心で恐怖心を煽る発言をするカレン。

 チキは優理の後ろに回って服の袖をギュッと掴んでくる。


自然の監獄(フォレストロジャー)に白い巨塔・・・・・・。とりあえず中に入ってみようか。セピア世界もそうだけここも分からないことだらけだから何かヒントになるものがあるかも。それこそリングがあるかもしれないし」

「た、たしかにリングはあるかもしれないけど・・・・・・。オバケでそうじゃん」

「じゃあここで一人で待ってるか?」

「そんな、卑怯だぞ! ずるい、大人げない! か弱い美少女をこんな僻地に一人きりにするなんて。あーわかったぞ優理、アンタ童貞だろ。ウチの目は誤魔化せないぞ!!」

「な、何言ってんだよ!! ちがっ・・・・・・わなくないけど、ソレとこれとは無関係だ!」

 全く関係の無いところで自分の童貞をばらされたというか言わされてしまった。別に年齢的には問題ないし寧ろ健全だ。誇ってもいいことだ。しかし年下であろう少女にこんなことを言われるなんて恥ずかしいというか情けなさを感じずには要られない。

 赤面する優理と泣き面のチキが互いに言い争っているのを見てカレンは小首を傾げる。

「チキが泣いてる理由は分かるのだが、優理が恥ずかしそうにしているのは何故なのだ?ドーテイってのに秘密があるのか?」

 おっとここにもいじめがいのあるウブなターゲットが。

チキは半月型に目を変形させ、口角をぐいっと広げると、優理からパッと離れてカレンの元に素早く近寄っていき、

「ドーテイッテイウノハネ ―――ンガッ」

「余計なこと教えなくていい!」

 間一髪、優理は両手でチキの口を覆って喋られないようにした。チキは口をもごもごとさせて暴れる。

「優理はドーテイって知ってるの?」

 純粋な気持ちで質問しているからこそ余計にタチが悪い! その意味を知ったときのカレンの様子が目に浮かぶようで――――絶対に教えてはいけない!

「えーっと、そうだな。まぁまぁかな、うん。あ、でも僕も定義とかはよく分かってないから教えるのは難しいな・・・・・・」

 目をウロウロさせながら必死で誤魔化す優理。

「定義があるなんて数学みたいだな。あまり数学は得意ではなかったから今度じっくり教えてもらうとしよう。頼んだぞ優理!」


そ、そんなこと死んでも頼まないでくれーーーーー!


 心の中でそう叫びながらも、頭の中では実際問題どう教えたら良いんだ、と真剣に考えてしまう優理であった。

 チキは笑いが止まらないのか目と鼻から粘液を垂らしながらフヘェッっと変な声を漏らしている。

「よし、じゃあ行くか。チキもティアの所持者(マスター)ならオバケくらいに負けるな」

 赤い髪をなびかせてカレンは塔へと向かって歩き出した。


 優理は一先ずやり過ごせたと胸をなで下ろす。すると

「ンガッンガガガガッ!!」

 ずっと両手で口元を塞がれていたチキが手足をバタつかせた。

「あ、ごめん」

「ぷはっ!」

 ようやく拘束から逃れたチキは荒く息を吐き出して吸う。乱れた髪と服を直してから優理の方にちらっと目をやり、あざ笑うように鼻を鳴らして塔へと歩を進めていった。

「あんにゃろう」

 初対面から天真爛漫で考えるより騒ぐという小動物感溢れるチキに振り回されてばかりな気もする。この先も一体どうなることやら。

 雲一つ無い紺碧の空を見上げる優理の心には暗雲が立ち込むのだった。


主な登場人物

・優理

・カレン

・チキ

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