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aラストティア ~荒野の楽園編~  作者: 蒼骨 渉
第三章 グオーレ王国
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03 自然の監獄

昨日は零章を追加していますので、まだ呼んでない方は是非読んでください!

グオーレ王国に向かう道中で優理とカレンはテントの親子のような貧しい人達に何度か出会い、その度に自然の恵みを自然の楽園(フォレストピア)から取ってきて配っていた。

久々のきちんとした食事が得られて笑顔になる者も居れば、感動して泣いてしまう者もいた。かと思えばあの男のように拒むまでは無いが、皮肉を口にする者や怒る者もいた。

やっていることは同じでも捉え方や捉える人によって全然違うのは仕方が無いことなのだ。


また優理達は自然の恵みを配りながら情報収集も行っていた。

あの男が言っていた「グオーレ王国は偽物だ」という言葉が今回の救出にきっと関係があるに違いなかったからだ。

しかしグオーレ王国について得られた情報の中に「偽物」と同じニュアンスものは無く、口を揃えて言うのは労働の対価として恵みが手に入る生活に困らない国ということであった。


 セピア世界では生活に困らないことが人々の最優先事項である。つまり労働の対価として生活できるならそれに超して幸せなことはないのだ。

だとしたら何が「偽物」なのだろうか? あの男が嘘をつくようには思えないが分からないことは解決しないままだった。

その代わりにグオーレ王国とは違う情報を入手することができた。


「こ、これが自然の恵み! おまえの持ってるそれが伝説のティアってやつか! みせろっ、みせてくれ、どんな形してるんだ? 神様かぁ?」

炭をかぶったかのように真っ黒で決して綺麗とは言えない髪の毛に、すきっ歯のやせ細った二〇代半ばくらいの顔立ちの男が、自然の恵みとティアを見て興奮して叫ぶ。


優理は苦笑いでやり過ごそうとしたが、その男は一瞬の隙をついて優理の首にかかっていたティアの紐をブチッと引きちぎり走り出した!

「――!?おい、まて!」と優理は慌てて追いかける。

「どうしたの優理!?」

急に走り出した優理にカレンが問いかける。

「ティアを取られた!」走りながら優理が答えると、

「バカ何してんの! 早く取り返さないと!」とカレンも走り出す。

なおも男は逃げながら狂ったように独り言を言い続ける。

「こ、これでぇ、やっと解放されるぅぅぅぅぅぅひゃひゃっ! 恵みさえ永久に手に入ればもうこんな暮らしとはおさらばだーーーい!」


「まずいですね・・・・・・、ティアは選ばれた者、つまりはティアの所持者(マスター)以外は使用できないのですが、もしそれを普通の人間が使ったら・・・・・・」

二人が男を追いかけて走っているところに急にイリィが現れて言った。

「つ、使えないならっ、何も問題はないってことじゃなくて??」

カレンが息を切らしながら質問する。

「そうだよ、使えないならただの石ころとなんら変わらないんじゃないのか?」

「残念ながら優理様そうでは無いのです。ティアの所持者(マスター)である者はティアの力を使ってゲートをくぐり自然の楽園(フォレストピア)まで問題なく行くことができますが。もしなんの能力もない人間がゲートをくぐろうとすると・・・・・・」

「うgぁわgyあぎゅgあぎnげええkぶzぐあnうぇdshがぁぁぁ・・・・・・」

イリィがそこまで説明したところで男がうめき声を上げてその場でもがき苦しみ始めた。


「どうした!?」

カレンが男に近寄り叫ぶ。

「間に合いませんでしたか・・・・・・」

男は言葉にならない叫びを上げながら身体を四方八方に捻らせる。

「おい大丈夫か、しっかりしろ! イリィなんとかならないのか?」

暴れる男の腕を後ろから抑えながら優理がイリィに聞く。

「優理様、残念ですがもうどうにもできません」

「そんな、精霊なんだろ? 精霊の力でなんとかできないのかよ!」

目の前で苦しむ人を助けないといけない、そんな正義感からなのか優理は強い口調で叫ぶ。

しかしイリィは首を横に振る。


「私たち精霊は自然を守るための自然と共に有る存在。私利私欲にまみれた行動や考え、非人道的な行いをする者は助けるに値しないのです。寧ろそういった者を拒み排除しようとします。それは優理様がこの世界に来る前にも思っていたことなのではないでしょうか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


憤りの感情を含んだはっきりとした返答に優理は返すことができなかった。なぜなら元の世界で優理は全くもって同じことを思っていたからだ。人間の異常なまでの欲求のために自然が次々と失われ機械だらけの灰色の世界となってしまったあの日常が嫌いで許せなかった。力のある者だけが裕福になり力なき者を貶めるあの世界が憎かったんだ。

この男も、例え環境が悪くて絶望していたからとはいえ、自らのためだけにティアの力を使おうとした、独占しようとしたことに変わりは無い。

つまり助けるに値しない人間・・・・・・。

優理はそっと男から離れた。


「じゃあこの男はどうなるんだ?」

 二人の様子を伺いつつカレンが尋ねる。

「ティアの所持者(マスター)でない者がティアの力を使おうとすれば、その者の精神は自然の楽園(フォレストピア)に辿り着くことができずに異世界を彷徨い続けます。そして最終的には自然の監獄(フォレストロジャー)と呼ばれる場所に行き着きます」

自然の監獄(フォレストロジャー)? それはつまり、悪いことをしたから収容されるってこと?」

「その考え方で間違ってないでしょう。肉体まではこのセピア世界から消え去ることは有りませんが、精神は自然の監獄(フォレストロジャー)に閉じ込められたまま戻ってくることはありません」

「死んだも同然ってことか・・・・・・」

「優理様、その通りです」


三人の会話が終わる頃には男は静か横たわっていた。彷徨っていた精神が自然の監獄(フォレストロジャー)に行き着いたのだろう。

優理達はその男を仲間達の元へ運んだ後、事情を説明してから穴を掘って墓を建てた。

ティアを盗んで独り占めしようとしたくらいの男であったからなのだろう、仲間からも居なくなって清々するよと言われてしまっていた。

罪人が罪を償うために裁かれるのと同様にティアの力には制裁が含まれているのだと気づかされた一件であった。


もう一つ得た情報は盗みを働く者、つまりは盗賊がいるという情報だった。

どこの世界にも海賊や盗賊と言った悪人は居るようで、異世界やファンタジーであればなおさら当然のことのように思えてしまう。

○○王になる!なんて者もいれば緑のマスクをかぶったマッスルボディもいる。金銀財宝を我が物にしたいだけの輩も居るだろう。

多種多様な形態と理念を持った集団なのは間違い無いのだが、道徳的概念が存在していないところに関しては一致しているのではないだろうか。

セピア世界における盗賊はどんな盗賊なのだろうか。まさか興味をもった矢先にその盗賊と出くわすことになるなんて優理は思いもしていなかった。


主な登場人物

・優理(主人公) 虹色のティアマスター

・カレン 赤色のティアマスター

・イリィ 赤のティアの精霊守護

・ニュートン ハリネズミ

・自然の楽園にいる美少女


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