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aラストティア ~荒野の楽園編~  作者: 蒼骨 渉
第二章 セピア世界
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06 七色に輝く鏡の盾

カレンちゃんカッコイイですね~!


 火炎竜が通った跡は黒く燃え焦げている。

 優理はその焼け焦げた跡と一掃されて倒れている骸骨等をみて背筋が固まった。

「あんなの、僕も食らったらひとたまりも・・・・・・」

「ふぅ、危うく巻き込むところだった」

 汗をぬぐいながらカレンが呟く

「それはアウトだろ!」

しかしカレンはそれには構うことなく力強く近づいてきて

「なんで合図を待たずに戻ってきた君は。ちゃんと言っただろ? 火の玉を空に打ち上げたらと・・・・・・」

「え?いや、だって火が空に上がったから・・・・・・」

「え、いつ?」

「ついさっき」


 そう、確かに火は敵に自分の位置を知らせるためにカレンが打ち上げた。がしかし、カレンが言っていたのは火の玉であって、火の閃光ではなかったのだ。それを優理は火が上がったから奇襲を開始する合図だと勘違いしてきてしまったのだ。

「ふ、不覚・・・・・・、君はそんなことも理解できないのか!」

「火の玉も火の閃光を同じ火だろ! 間違ってもしょうが無いじゃないか!」

 あーだのこうだの言い合いをする二人に水を差すようにイリィが聞く。

「ちなみに優理君、さっきの変身? みたいなのは一体どうやったんだい?」

「そうだ、あれは一体何だったのだ?」

「えーと、あれは・・・・・・」

 ちょっとばつが悪そうにポリポリと頬をかきながら優理が答える。


「カレンの合図で戻ってきたはいいけど近づく術が無くて、考えた結果、何かに化けて近づいたらばれないんじゃ無いかなーって思って、それを想像して変身したというか・・・・・・」

 優理はカレンから教わった想像を駆使して自らを別の物体へと変身させたのだった。

「なるほど、そんなことも可能なのですね」

 ティアの精霊であっても未知なこともあるらしい、イリィは感心したように頷いた。

「君にしてはよくやったな、無事に敵も討ち果たしたわけだし、はやく村長にこのことを報告してあげないとだな」

 こんな自分でも役に立てた・・・・・・と嬉しくてついガッツポースをする。

優理は上機嫌で村へ戻ろうとした、その時。


「なるほど、近くに村があるのか・・・・・・」

 優理達が声のする方へ振り向くと、なんとさっきまで気絶していたはずのイレイザがいつの間にか灰色のドラゴンのような物体のところにいるではないか!

 二人が言い合いをしている最中に目を覚まし、逃げる準備を整えていたのだ。

「このまま帰るのはしゃくだからな、置き土産にその村を焼き焦がしてやろうじゃないか!」

 そういうと灰色のドラゴンのような物体にまたがり、村のある方へ飛び立っていった。

「くそっ、とどめを刺し忘れていたか」

「どうしよう、このままだと村が!」

「考えるのはあとだ、走るぞ!」

 三人はイレイザを追いかけるために村へと急ぐ。


 三人は村に着いたが、先に飛んで向かったはずのイレイザの姿はなく、村も何事も無かったかのような静けさであった。

「間に合ったのか?」

「いや、そんなはずは無い、奴の方が断然に速くたどり着いているはず・・・・・・」

 カレンが冷静に否定する。

「じゃあなんで居ない?」

「村を壊すのが目的じゃないってことか、だとしたら・・・・・・」

 カレンが何かに気がついたような表情を浮かべた瞬間


「ご名答」

なんとカレンの背後にイレイザの姿が!

「カレン様!!」

 イリィが声を荒げて叫ぶ。 

「しまった!」

 気付いたときには既に遅く、背後に現れたイレイザは剣先をカレンに向けて技を唱える。

擬似爆発(Lエクスプロージョン)


ドガーーーーン!


 剣先から放たれた爆発をカレンは受け身を取ることもできず、「がはっ」っと血を吐いて倒れる。

「カレン!」

爆風を腕で防ぎながら、狭い視界でカレンの姿をなんとか捉えると同時にイリィの姿がだんだんと消えていくように見えた。

「すみません優理様、カレン様の意識がなくなってしまうと私達精霊もおなじく・・・・・・」

 そう言いかけたところでイリィは完全にその場から消えてしまった。

 どうやらティアの精霊は、そのティアの所持者(マスター)の意識や魔力が無くなると、元の世界に戻ってしまうらしい。


「クフフフフ」

 薄気味悪い笑みを浮かべるイレイザ。

「君一人では何もできないんだろう? この女剣士は私が頂く。とその前に、見せしめにこの村を消してやろう!」

 そう言うと、影から灰色のドラゴンの乗り物が現れ、イレイザはそれに跨がると空高く昇っていった。どうやら上空から巨大な《擬似爆発(Lエクスプロージョン)》を放つようだ。

 優理は恐怖で足がすくんでしまっていた。

 カレンは動けないしイリィも消えた。前回みたいに助けが来てくれる可能性なんて考えても仕方ない、僕がやるしかない・・・・・・でも為す術が無い。僕なんかじゃ、あのイレイザ相手には無力。また、失うのか・・・・・・。また、守れないのか・・・・・・。


 頭でいろんな思考が巡っていたそんなとき、

「いてっ」

 ポッケにいたはずのニュートンが優理の手を噛んだ。

「ニュートン・・・・・・?」

 ニュートンはそのまま優理の袖を噛んで引っ張っている、まるで行けっ! といわんばかりに。

「ニュートン・・・・・・。そうだよな、僕が、僕が行かなくて誰が行くんだってことだよな」

 小さな体で大きな人間に立ち向かうニュートンの姿を見て、優理は勇気をもらった気がした。

 そして上空に昇っていくイレイザに近づくように、村の中へ走って行きながら考えた。


 あの爆発を食らったら終わりだ。かといって守るだけじゃまた繰り返されるし、俺もやられておしまい。なら、村を守りつつ、相手に致命傷を負わせられる反撃ができるそんな技が必要・・・・・・。

 不意にニュートンが、短い手をおなかの前で構えて、痛いと叫ぶような表情を浮かべた直後に、構えていた手を前に押し出す、そんなジェスチャーをした。

 それを見て、優理はピンときた。

「ありがとうニュートン、今度こそみんなを守ってみせるよ!」


 走りながら優理は頭の中でイメージを作る。

 すると、上空でイレイザが村の方を向き直り、剣を構えてあの技を唱え始めた!

擬似爆発(Lエクスプロージョン)

 再び剣先から、今度はさっきよりも巨大な火の玉が剣先から放たれた。

 いまだ!

優理は近くの高台に昇ると、その火の玉が近づくタイミングに合わせてそこからジャンプし、火の玉がぶつかるその瞬間に、右手を勢いよくかざして叫ぶ、

「全ての攻撃を受け止め、威力を倍にして反射する盾!」


七色に輝く鏡の盾ミラーフォースシールド


ポッケから顔を出すニュートンも優理と同じポーズを取っている。

その右手から火の玉の爆発を全て受け止めるような巨大な鏡の盾を創造し、振り絞るようにして腕に力を入れ押し返す。

「いっけええぇぇぇぇ!」

受けた以上のエネルギー量で跳ね返されたその光線は、流星の如く七色の光を帯びながらイレイザの元へと跳ね返っていく。


 既に《擬似爆発(Lエクスプロージョン)》を唱え終わり、意気揚々と笑い叫んでいたイレイザは、爆発音が聞こえないことを不思議に思い、村の方を見下ろす。

「えぇ!? な、ど、どうして・・・・・・うぎゃあああああああ」

七色に輝く鏡の盾ミラーフォースシールド》によって跳ね返された攻撃を目視した時には既に遅く、

ドガーーーーーーーン


 巨大な花火が打ち上がったかのような超爆発が上空で巻き起こった。

 その音に反応して避難していた村人達もわらわらと外へ出てくる。

 あっやばいこのまま落ちたら軽傷じゃ済まないぞ・・・・・。

 高台から勢いよく飛び出してしまった優理は、背中から地上に落ちていく。


 ボフッ

「あれ? 痛くない?」

 イメージしていたよりも柔らかな音と感触がする。

「さすが優理様です」

「無茶しすぎよ・・・・・・」

 柔らかな感触の正体は、さっき消えたはずのイリィで、優理はそのごつくて筋肉質な腕に抱きかかえられていた。その隣にはカレンの姿もあった。

「カレン、良かった・・・・・・生きてた」

「バカね、あのくらいで死んでたまるもんですか」

「よかっ・・・・・・た、ほんとに・・・・・・よ・・・・・・」

 その返答を聞いていたのか定かでは無いが、安堵と疲労がブワッと押し寄せてきたのだろう、優理はゆっくりと目を閉じていった。


「無理も無いですね、一日中特訓していましたから」

 イリィは顔に似合わず微笑んだ。

「頑張ったね、優理・・・・・・」

 そう言うとカレンもふらっと体をよろめかせた。

 イリィはその体を太い腕で支え、ゆっくりと寝かせた。

 ほどなくして村人達が横たわる二人を見つけ保護してくれた。イリィはカレンの意識がなくなったので消えたのだろう。

 爆発によって起きた煙が晴れるとイレイザの姿はそこにはもうなかった。


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