幼き日々の記憶
新連載!
「これはね、わたしの先の代のお話」
そう彼女は言った。
膝の上で自分を見上げる幼子の頭を優しく撫で、彼女は微笑んだ。
彼女はいつも優しく自分に触れた。そして、いつも多くの話を自分に語る。それはいつも『ここ』ではない『どこか』の話で、自分には理解できぬものも多かった。
それでも、語る彼女を自分は好きだった。
文字を学び始めた自分へ、彼女は今度は本を書いてくれると言った。
「母様」
自分の呼びかけに、彼女はなぁに?と首を傾げる。
彼女が自分の生みの親でない事は、誰に言われるでもなく理解していた。それどころか、彼女が周囲の人とも違う事を、ぼんやりと理解し始めていた。
だが、だからとて、不安など微塵も感じたことはない。
彼女は、そういう生き物なのだ。
「なんでもないよ」
ふふふっと笑って胸にしがみつく幼子を、彼女は変なのと笑って抱きしめた。
これは彼女が語った、過去の話。
いつも自分の心の端に残っていた、切ない物語。
その理由を知るには、まだ幼かった無邪気な自分。
持病悪化のため、すごく不定期になると思います。
高校時代の作品ですが、原本はすでに手元になく、脳内にあるのみ。
設定やらちょこちょこ変えながら、ちゃんと着地させたい。
兄弟モノのBLみたいに思われそうですが、自分が腐っても自分の作品にはそういう設定は不思議と入ってこないので、あしからず…。