遅刻・ダメ・絶対
風呂から上がった私は、再び制服に着替えライネスの元へ行く。
厨房に着くと、橙色の髪を肩くらいまで伸ばし、頭のてっぺんには妖怪でも発見しそうのアホ毛が一本生えている少女がライネスにぺこぺこしていた。
顔を下げる度にアホ毛が揺れて何か鬱陶しい。
「ごめんなさい!もう遅刻なんてしないから!」
「これで何度目だと思ってんだ?」
「んーと、3回...いや、2回目だ!」
「それはいつから数えてだ、あぁ?」
言うや、少女の首に腕を回し完全な絞め体勢に入ったライネス。
少女も抵抗しているが、さすがは元冒険者。
その肩から手首までの筋肉は伊達じゃないらしく、到底脱出出来るようには見えない。
「一昨日から数えてです!ほら、きちんと言ったから離して、ね!」
「そうかそうか。一昨日遅刻のたしか昨日も遅れてきたよな?で、今日はどうした?」
「あ、今日の分数えてなかった。テヘペロ許してちょんまげえぇぇぇえ!死ぬ死ぬ!本当に死ぬ!」
少女のおちょくりに堪忍袋の緒が切れたライネスはさながらマウンテンゴリラのようだった。
少女も消沈寸前でお客さんも嫌な顔をし始めたので私は止めに入ることにした。
「もうやめてあげたらどうですか、ライネス。ソフィーが死んでゾンビーになっちゃいますよ。」
「そうだな。それは困る。ところでゾンビって.......」
「良かったですね、ソフィー。これからは遅刻なんてしちゃダメですよ?」
「だから、ゾンビって.......」
ライネスに解放されたソフィーを慰めつつ、きちんと注意もした。
これぞ飴と鞭。
「わかったよぉ、シーナ。私、とりあえず二日に一回間に合うように頑張ってみるよ!」
「毎日時間通りに来て下さい。それでは働きましょうか。」
「おー!どっちが多く運べるか勝負だ!」
勝手に戦う気になってるアh、もといソフィーの事は放って、帰ったお客さんの食器を片付けにホールに出た。
「シーナ、ゾンビって生きてるのか、死んでるのかどっちなんだ!?」
とか言ってるマウンテンゴリr、もとい亭主も無視する事にした。