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言葉は彩る。世界を時代を未来を

作者: 結記

言葉っていいよね。

「お疲れ様」


「30年間、ありがとう」


「大好きだったよ!!」


「忘れないから!」


「元気でね!」


「ゆっくり休んでね」


「ありがとう!」


「ありがとうございます!」


「バイバイ!」


「サヨナラ」


「ありがとうございました……っ」


たくさんの声が聞こえる。



この30年間、色々なことがあった。

誰もが苦しく泣き叫んだこともあった。

その度に立ち上り、支えてきたのは名も知らぬ誰かであった。

その誰かに伝えるために名前を呼ばれ続けた。


何度も、何度も呼ばれ続けた。


「ありがとう」の感謝の言葉も「くそったれ!」と罵る悔しげな声も。


覚えてる。


「どうして……!」と行き場のない怒りの音も、「なんで」と嘆く思い出の心も。


覚えている。


あの日の涙も、あの頃の笑顔も、あの時の怒りも、あの喜びも。全部。知っている。覚えてる。


たくさんのことを教えてもらった。

たくさんのことを見せてくれた。


あぁ、感謝を伝えなきゃいけないのは………私の方だと言うのに。


あぁ、終わりの時が近づく。

あと、半日。早く、早く言わなくては。後悔する。

でも、この身に言葉などない。この身に口などない。

ポロポロ涙が零れることもない。花綻ぶ笑顔も見せれない。


≪おい。聞こえてるか?≫


何処からか声が聞こえた。

自分に語り掛ける、その声は。

初めて聞くのに、何処か懐かしかった。


≪ちょっと、そんなに乱暴な口調したらダメでしょ!≫


≪うっさいなぁ。いいだろ、別に。おい、お前、聞こえてんなら返事ぐらいしろよな≫


≪まぁまぁ、落ち着いて。やぁ、君。初めまして……と言うのも可笑しい気がするけどね≫


声は三つあった。

乱暴なだけど、どこか優しい香りのする少年の声。

華やかだけど、心のある少女の声。

緩やかな、けれど厳しさのある男性の声。


≪あなた達は誰ですか?≫



そう、呟いて、思わず口を塞いだ。

それに、気づいて自分の手を見下ろした。

手がある。足がある。顔がある。声が──出る。


≪誰ですか?はねぇだろ!俺達はお前の先輩。何だってなら、兄弟さ!≫


≪兄弟……?≫


≪ええ、そうよ。詳しいことは、すぐにわかるわ。≫


≪準備が出来たことですしな。さぁ、行きなさい≫


その声に弾かれたように、飛び出した。

何でかは分からないけれど、そうしなくちゃ行けない気がした。


あと半日。


愛してくれた。助けてくれた。優しさをくれた。


全てを教えてくれた、この国の人たちに……!


最初で最後の、感謝を



『ありがとう!!』




その日、日本各地で白を纏う少女のような少年のような姿をした子供を目撃した人が多々現れた。


何代も生きる老父が言った。


「この国では、時代が終わるごとに、時代が感謝を伝えに来るのだよ。」



逆もあるのだけれどな。



と、悪戯気に笑いながら。








「──絆を教えてくれた時代に感謝を」




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