今明かされる魔法継承と孤独な日々/インターリュード
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*interlude*
私が魔女の力を継承したのは偶然だった。黒魔術師ライバーを名乗っていたけど、それはキャラ設定だ。魔法が実在するなんて夢にも思わなかった。
きっかけはネットサーフィンだった。いつものように所在なく、ネットのアングラな記事を閲覧していた。もちろんそれはバーチャルライバー黒乃魔孤としてのネタ探しでもあったけど、暇つぶしという意味の方が大きかった。
その日、調べていた項目は魔法や魔女のこと。ありもしないことだと高を括っていた私だったが、奇妙な記事を見つけてしまう。
——魔女は教会を隠れ蓑にして現在も存在している。
戦争中に魔術師を用いた話や政治家を支える魔術師の存在などは都市伝説としてまことしやかに囁かれている。その類と同じだろうと思った。
しかしそこに書かれていた教会の名前は目を疑うものだった。
——高石教会。
同じ市内にある教会だったのだ。
「そういえば明日新刊のフラゲ日じゃん。あっちの方のアニメショップなら手に入るかな」
パソコンのディスプレイから離れ、回転椅子を回しながら物思いにふける。
高石の地域はオタク向けの店が多い。アニメショップは複数あるし、本屋もかなりの数があったはずだ。外に出るのは億劫だが、漫画はなるべく書店などで買いたい。掘り出し物を見つけることもあるから。
そのついでに高石教会へ足を運ぼう。自分の住んでいる地域の中に怪異や都市伝説スポットがあるなら見てみたくなるのがアングラオタクの性だ。
なによりバーチャルライバーが実地調査した結果を報告……なんて動画を上げたら少しはバズるかもしれない。最近の伸び悩みとはおさらばできるかもしれない。
そう思った私は高石教会へいくことを心に決めた。
翌日。
私は高石の街へと遠出した。いくら引きこもりとはいえ、趣味の買い物は楽しいものだ。買い物で興奮した私はつい店をはしごしてしまい、気づいたら夕方になっていた。
「すっかり遅くなっちゃったな。まあでも、夜の教会の方が趣きあるでしょ」
浮き足立った私はその足で高石教会へと向かう。
スマホの地図を片手に、高石教会を目指す。駅周辺は歩き慣れているが、少し郊外に出ると未知の世界だった。——そう、異界のようだった。
教会に近づくに連れ、どんどん周りが暗くなっていく。夏の日没は遅いはずなのに、この周辺にだけはすでに漆黒の帳が降りていた。
——嫌な予感がした。
けれど、怪しい怪異は絶好のネタだ。アングラ、オカルトオタクの血が騒ぐのが止められなかった。私は一歩、また一歩進んでいく。「ただ単に日没がもう早まってきているんだ」と自分に言い聞かせながら。
物音が聞こえたのはその刹那だった。目の前で女が一人倒れこんだ。
「ひっ!」
女の姿を見て、私の口から情けない声が漏れた。白いローブについた血飛沫と切り落とされた片腕が見えたからだ。
私はただ女を見下ろすことしかできなかった。足がすくんで逃げることも安否を確認することもできない。その時に気づいた。私は本当に異界に足を踏み入れてしまったのだと。
「どうやら私は運がいいようですね……」
「え?」
白いローブの女がよろよろと起き上がり、私を見る。素顔を布で隠しており、表情は読めないが目は笑っていた。
女はのそのそと一歩ずつ私へと向かってくる。私の足は未だに怯えすくみ、アスファルトに固定されたように動かない。やがて女との距離がゼロになる。
「喜びなさい。あなたは……選ばれた」
「選ばれた……?」
「そう、あなたはこの世の常識から逸脱した……高次の存在へとなるのです」
言っている意味がわからなかったが、次の瞬間点が線で結ばれる。教会、怪異、高次の存在……それは魔女のことであると。
しかし、時はすでに遅かった。女は片手を私の胸に宛てがっていた。
「亡者を操る我が魔術式よ……この者に祝福を与えたまえ。そして願わくば……永遠に受け継がれよ。それが我が一族の……悲願」
「あっ……ああ……あああああ!!」
胸が抉られるように熱い。身悶えるように胸を抑え、女から離れる。けれど、ことはすでに済んでいたようで、離れても熱さは治ることを知らず……身を焦がしていく。
全てが終わった時、私は地面に膝をついて放心していた。
「これであなたは魔女です。このカードを使って生き延びなさい。生きて……生きて魔法を後世に伝えるのです」
女はカードの束を持ってその場で倒れた。完全に生き絶えていたようだった。
私は言われるがままカードを手に取り、逃げるようにその場から立ち去った。
そこからどうやって帰ったのかは覚えていない。歩いている最中、意思を持った力が私の中からこみ上げ、頭の中に幻影を映してきたからだ。
それは魔女——サラサの記憶。視界とは別に私は魔女の記憶を見ていたのだ。
その魔女は迫害されていた。ただ他者と違うという……それだけの理由で。やがて魔女は誰も訪れない砂地へと身を隠す。何百年にも渡り、そこで暮らした。
そうすることで身を守ることはできたが、同時に彼女は時代に、人に取り残されてしまった。枯れた大地でひもじい暮らしを強いるものだった。
魔女は憤る。
「どうして自分はこんな貧しい土地に追いやられなければならないのか」
砂漠に人は訪れない。永遠の孤独。
なにより、こんな土地では後継者を見出すことができない。魔女は魔法の探求者であり、代を重ねて魔法を強くするのが目的なのだから。
そんな中でサラサが出した答えは大勢の魔女の仲間に加わることだった。彼女は自由と後継者を得るために組織の守護を受け入れたのだ。
——そして組織の命令で命を落とした。
皮肉と言えば皮肉だが、一時でも得た自由はかけがえのないものだったようだ。そして、後継者を見つけたことに安堵しているようだった。
魔女の記憶はそこで終わっていた。気づくと私は自分の部屋にいた。
「なんなの……これ」
私はそのままベッドに倒れこんだ。膨大な情報を処理しきれず、頭がパンクしそうだった。
魔女に魔法に……魔女同士の殺し合い。断片的な情報だが、それだけでも現実味がなさ過ぎる。
「寝よう……きっと遠出で疲れているんだ、私」
私は現実逃避するようにそのまま眠りへと逃げた。
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