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ゼロの魔女騎士《ウィッチナイト》  作者: 鴨志田千紘
第3章 学園の魔女
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学食にて

続きはカクヨム(https://kakuyomu.jp/works/1177354054887291624)の方で先行して掲載されております。

興味のある方は是非そちらでも読んでみてください。

感想、レビューなどもお待ちしております!

「はあ! 転校生って疲れるのだわ!!」


 ラーメンの乗ったトレーをテーブルに置き、どさりと落ちるようにフィーラは椅子に座った。

 授業を終えた僕らは学食へとやってきていた。今日は始業式とホームルームのみで、午前中で学校は終わりだ。

 このまま返って明日に備えることもできたが……せっかく学校にきたのだ。ご飯くらい学校で食べてもバチは当たらないだろう。


「それはそうでしょ。学校に外国からの転校生がきたんだから。珍しいに決まっているわ」愛梨彩がフィーラの対面の席へと腰を下ろす。「だいたいいつから画策していたのよ?」

「アリサたちが学校にいくって言った時からよ。ハワードに『潜入のためだから』って言ったらすぐ手続きしてくれたのだわ」


 彼女は割と早い段階からサプライズを用意していたらしい。それにしてもハワードはなんでもやるんだな……


「で、緋色は最初から知っていたわけだ」

「まあな。最初相談された時は驚いたけど、まあいっかって」


 僕と緋色がそれおぞれの相棒の隣の席へと座る。ちょうど四人掛けのテーブルが空いていて助かった。午前中までしか授業がないから、学校外へと食べにいっている生徒が多いのだろう。


「『まあ、いっか』じゃないでしょ。今、屋敷にはブルームしかいないじゃない」

「あの魔女なら一人でも平気なのだわ。さあ早く食べましょ。ラーメンが伸びちゃう」


 フィーラは愛梨彩に有無を言わせず、「いただきます!」と箸を手に取った。僕も久しぶりのハンバーグ定食を食べたくてうずうずしていたところだ。箸を手に取り、緋色と一緒に「いただきます」と斉唱する。


「はあ。しょうがないわね。いただきます」


 遅れて愛梨彩が呆れながら箸に手をつけた。本当は嬉しいのだろうけど、彼女は野良陣営のまとめ役だから手放しでは喜べないのだろう。

 ハンバーグに口をつける前にまずはサラダから。キャベツの瑞々しさが歯ごたえでわかる。ごまドレッシングというチョイスも完璧だ。サラダもスープもご飯もついて良心的なお値段……学食は偉大である。

 そしてハンバーグを一口。味はいわゆる専門店のジューシーなものではなく、家庭的なまろやかな味。これはこれで乙な風味である。ご飯が進む進む。


「うーん!! やっぱりラーメンは最高ね! 毎日ラーメンを食べられる環境にいる日本の学生が……羨ましいのだわ」

「だろう? 日替わりメニューとかもあるから学食は飽きねーわな」

「ヒイロ! あなたの坦々麺の味見もさせて!」

「ほいよ」


 二人仲良く麺類を注文していたのはシェアするためか。なるほどラーメン好きのフィーラらしい。というか……


「緋色……尻に敷かれてない?」

「ん、そうか? お互い違う味が楽しめて一石二鳥だろ?」

「そうよそうよ! そういうあなたたちはなんで二人揃ってハンバーグ定食なのよ! 仲よしアピールかなにかかしら?」


 痛いところを指摘された。もちろん理由はあるのだが、彼女もハンバーグ定食を選ぶのは予想できたことなのだ。とりあえず反論だけはしておこう。


「違うって!! これは愛梨彩にオススメを伝えたら一緒になっただけで!」

「太刀川くん、ミニトマトあげるわ」

「っておい!! 隙を突いて勝手にミニトマトを渡すなよ!」


 フィーラと口論している間にいつの間にかサラダに増えたミニトマト。食べることはできるが……別に僕も好きではないんだよなぁ。なんだかんだ魔女の言うことを拒否できない僕も尻に敷かれているようなもんか。

 早速、のけものにされたミニトマトを口にいれる。酸味と甘みの絶妙な塩梅……好みが分かれるのも理解できる。


「で、情報収集の方はどうだったの?」


 会話がひと段落したからか、愛梨彩が本題に入った。学食にただ食事をしにきたわけじゃない。今日一日聞いたことを共有するためだ。


「死んだ友田だけど……やっぱり誰から恨まれててもおかしくないって」

「さっき本宮も同じこと言ってたなー。『絡み方が面倒臭いんだよなぁ、あいつ』って」

「それじゃ誰に殺されたかわからないのだわ。容疑者が多過ぎるじゃない」


 フィーラの言うことは最もだ。魔術式を継承した以上、誰が魔女になっていてもおかしくない。友田に恨みを持った人間を探し集め、その中から可能性が高そうな人間を絞る……という方針では時間がかかるかもしれない。


「魔女としてはなにか感じないの? 近くに魔女がいれば少しはわかるんじゃないの?」


 隣にいる愛梨彩を見やる。彼女はしばし顎に手を宛てがい、「うーん」と唸る。


「感じないわね。私が以前学校にいた時も咲久来くらいしかわからなかったし……この学校で魔女の存在を感じたことはないわ。今も、昔もね」

「この学校が地脈の集結点に近いせいなのだわ。魔力が滲み出てるから判断しづらいもの」

「やっぱ魔女は学生じゃないんじゃねーの? 教会の連中だって探しにきてないわけだろ? あのハワードの推理が外れたってことかもしれないしよ」


 魔女の存在を感じない愛梨彩とフィーラ。そして現れる気配がない魔導教会の連中。なにより友田を恨んでる人間なら学校外にもいるかもしれない。


「早速詰まったね」


 かなり早い段階で万事休すか。考えても仕方ない気がしたのでひとまず「ごちそうさま」と箸を置いた。


「まだ初日なのだわ。もう少し捜査続けましょ。私はこの学園のことまだ把握できてないし」

「お前はラーメン食べたいだけだろ」

「うっ……! それもあるけど、ついでだってわかってるわよ!」


 緋色とフィーラの痴話喧嘩で話が逸れる。二人はいつもこんな調子ではあるが、学校にいるせいかいつもより和やかなやりとりに見えてしまう。本当にただの学生のやりとりのようだった。


「フィーラの言う通りね。それに勝代くんが言っていることは間違っているし」

「え? マジ? こいつラーメン食いたいだけじゃないの?」


 緋色がフィーラを指差しながら目を丸くしていた。気に食わなかったのか、フィーラは彼の指を掴んで、退けた。


「私は真面目にやってますぅ!」

「はあ……そのことじゃないわよ。さっきの『学校に教会の人間がきてない』って話よ」

「あ……」


 僕には一人心当たりがあった。魔女や魔術師の行動が夜間に集中しているなら、昼間はいるかもしれない。未だに通い続けているのかもしれない。


「いるじゃない、一人。教会所属の魔術師ウィザード、《《八神咲久来》》が」

「咲久来か……確かに咲久来は元から学園にいた人間だからこっちで捜索してるかもね」


 咲久来のことを一番熟知しているのは僕だ。彼女はずっと魔術師ウィザードであることを隠して学校にいっていた。地脈がある学校の監視……だったと考えることだってできる。咲久来が今もいる可能性は大いにある。


「とりあえず今日は帰りましょう。聴きこみをするにしても、生徒が少な過ぎるし。ごちそうさま」

「だね。明日出直そうか」


 結果は振るわなかったが……まだ初日だ。教会が本格的に捜索を始める前に見つけたいが……焦りは禁物だ。


続きはカクヨム(https://kakuyomu.jp/works/1177354054887291624)の方で先行して掲載されております。

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