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ゼロの魔女騎士《ウィッチナイト》  作者: 鴨志田千紘
第3章 学園の魔女
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消えた二人のクラスメイト

続きはカクヨム(https://kakuyomu.jp/works/1177354054887291624)の方で先行して掲載されております。

興味のある方は是非そちらでも読んでみてください。

感想、レビューなどもお待ちしております!


 教室の中で生徒たちが慌ただしく動いている。下げられた机のせいか、教室がやけに広く見えた。

 なにかを製作している人、なにかを打ち合わせしている人……そしてどうしたらいいかわからずぼーっと突っ立っている僕ら三人。

 委員決めが終わるとすぐさま学園祭の用意へと移っていたのだ。フィーラはクラスの女子に連れられ、学園祭の説明を受けていた。童顔だからか違和感なく学生として溶けこんでいる。

 成石学園の学園祭は毎年一〇月の第一週の土日に行われる。中等部なども合同で行うため、規模はかなり大きい。

 開催まで一ヶ月を切っているとなると……準備が忙しくなるわけだ。大掛かりな準備は前日や前々日に行われるものだが、教室でもできる作業があるのだろう。


「うちのクラスはホラーハウスって聞いたけど……なにするの?」


 隣の緋色に疑問を投げかける。

 一学期全く出席していなかった僕は催しの内容を知らなかった。字面から判断すれば、恐怖の館なのだが……なぜ『お化け屋敷』ではないのか。


「いわゆるお化け屋敷。けどほかのところもお化け屋敷やっててな。だからうちはあえて『魔女の館』にしたってわけだ。だからホラーハウス」

「勝代くん。今日の冗談は一番冴えてるわよ。全然笑えないけど」

「お、そうか? って冗談言ってねーわ!! マジだよ、マジ。現実見ろ、九条」


 冗談なら面白いが……残念ながら本当のようだ。製作班が作っている小物なんかはあからさまに髑髏の意匠がつけられている。本物の魔女が隣にいるからか、僕も全然笑えない。


「というか僕らはなにもしなくていいのか?」

「あー俺らはほら、当日の脅かし役だからさ。人手が必要な準備日以外はこれといって仕事はないってこと」

「初耳なんだけど」

「そりゃ休んでだからな! 勝手に決められたってわけだ!」


 愛梨彩のぼやきを一蹴して、大笑いする緋色。

 もしかしてお前が画策したのか? まだ学校にいた頃に僕と愛梨彩の仲を取り持とうとしたのか。


「あ、九条さん! ちょっとこっちきて!」


 不意に愛梨彩を呼ぶ声が聞こえた。呼んだのは井上さんという背の高い女子だった。


「私?」


 確認するように愛梨彩は自分を指差す。それを見た井上さんは何度も頷いていた。聞き間違いではないらしい。


「いってきなよ」

「でも……」

「クラスに紛れて情報を集めるのも仕事の内だよ?」


 俯いていた愛梨彩が顔を上げる。少しは僕の言葉が腑に落ちたようだ。


「あなたって……本当に口だけは達者ね」


 そんな捨て台詞を吐いて、愛梨彩は井上さんのもとへと向かった。悪かったね、口先だけで。でも口ばかりもたまには役に立つだろう?


「井上さんが呼ぶなんて珍しいね」

 井上さんは顔もスタイルもいいが、自分から率先して動く人間ではなかったはずだ。どちらかといえばオタク気質の強いタイプで、クラスの中心でなにかをする人間ではない。


「あいつ衣装班だからな。なんか井上の趣味がコスプレらしくってよ。最初は本人も乗り気じゃなかったんだけど、いざやるとなったらスイッチ入っちゃったみたいなんだわ、これが」

「あーなるほど」


 しばし所在なく衣装班の様子を眺めていると、愛梨彩が色々と測られ始めた。脅かし役の衣装を作るために呼ばれたってわけか。


「あれはきっと魔女の衣装だな。間違いねぇ」

「魔女が魔女の衣装着るのか……なんかそれジワるな」


 緋色に言われてステレオタイプな魔女姿の愛梨彩を想像したら、吹き出しそうになった。黒いとんがり帽子に、箒を持った魔女……案外似合いそうなのがまた面白い。

 愛梨彩は勝手がわからなかったのか、ぎこちなくあたふたしている。彼女がクラスメイトとまともに話すのはこれが初めてなんじゃないだろうか?

 けど、こういうクラスメイトとなに気ない日常を過ごしている彼女は新鮮で……ずっとこんな時間が続けばいいのにと切に願った。これが本来あるべき彼女の姿のはずなんだ。


「あ、なんか俺も呼ばれたわ。んじゃ、いってくるわ」

「いってらー」


 一人物思いにふけっていると、緋色も別の衣装班に呼ばれたようだ。僕が呼ばれるのも時間の問題だが……この間に少し気になったことを確認しておこう。

 暇そうなやつは……


「一乗寺も脅かし役?」


 ちょうどすぐ近くに一乗寺がいた。さっきまで一緒にいた本宮は……どうやらこの企画の主任のようだ。文化祭実行委員の相田と佐藤と忙しそうに打ち合わせしている。


「ああ、まあね。だからご覧の通り暇なんだよねぇ」

「あのさ、聞きたいことがあるんだけど」

「なに?」


 暇だったからか、一乗寺は嫌な顔一つせず応じてくれた。


「桐生さんって……きてないの?」


 このクラスには二人いない人物がいた。一人は友田礼央。不審死をした魔女の被害者だ。

 そしてもう一人が桐生睦月。物静かで、目立たない女の子だった。いなくても誰も気に留めていないように見えたのは、彼女のそういう性格ゆえでもあるのだろう。


「桐生……ああ、いたね。太刀川が学校こなくなったあたりから見てないよ」

「なんか理由があるのかな」

「うーん、どうだろうね。本当にいつの間にかこなくなったって感じだったし。直前になにかあった……とかはないと思うよ? 俺の知る限りだけど」

「そっか」


 僕の直後……となると五月か六月。少なくとも僕がいた時点ではクラスでなにか問題が発生していた覚えはない。

 いわゆるいじめだとか仲間外れにするとかはなかった。桐生さんは桐生さんで友達がいたはずだ。さっきの井上さんとは一緒のグループだったような気もする。一乗寺の言っていることは本当のことだろう。

 五月なら魔女関連の事件もまだ頻発していない時期だ。サラサが死んだ八月とも関連性はないように見える。桐生さんは無関係なのかもしれない。


「太刀川、よくクラスメイト覚えてるね。一学期ほとんどこなかったのにさ」

「一年の頃一緒のクラスだったから。ってか空いてる席があれば気づくでしょ?」

「じゃあ、友田のことも覚えてる?」


 やはり友田のことはクラスメイトにも知れ渡っているか。一乗寺から会話を切り出してくるということはそういうことなのだろう。


「うん、まあね。話は少し聞いたよ」

「調子のいいというか、自己中心的というか……まあ人の悪口ばかり言ってたしなぁ。他人をいびるのが大好きなやつだったし。こんなこと言うのはあれだけど、呪われても仕方ないでしょ」

「呪い?」

「それは言葉の綾だよ。誰かから恨み買っててもおかしくないでしょ? ってこと」

「誰が恨んでてもおかしくない……か」


 僕が抱いていた印象は間違いではなかったようだ。人のいい好青年である一乗寺にここまで言わせるなんて……相当悪さをしてたのだろう。僕がいなくなった後、クラスがどうなっていたか少し察した。きっと授業もサボっていたのだろう。


「そういうこと。まあ、友田の死で学園祭が開催自粛しなかっただけよかったと思うよ」


 一乗寺は悲しむ様子をつゆも見せなかった。一見冷たい態度にも見えるが、相手が不良と考えると当然だと納得もできる。

 そんな折に、今度は僕を呼ぶ声が聞こえた。井上さんの声だ。

 ちょうど話がひと段落したところだ。いないクラスメイトについての情報は聞き出せたし、とりあえずよしとするか。


「じゃ、いってくるわ。教えてくれてありがとう」

 

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