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ゼロの魔女騎士《ウィッチナイト》  作者: 鴨志田千紘
第2章 魔女は己が欲《エゴ》のために踊る
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共同戦線

続きはカクヨム(https://kakuyomu.jp/works/1177354054887291624)の方で先行して掲載されております。

興味のある方は是非そちらでも読んでみてください。

感想、レビューなどもお待ちしております!

 それから数日間、僕らはくまなく秋葉市内を探し回った。もうすぐ八月になる……熱気はますます増していき、流れる汗がベタついていく。

 そんな苦労があってか、ついに僕らは綾芽の根城を突き止めた。

 先行していたナイジェルを追ってたどり着いたのは善空寺という廃寺だった。

 善空寺は大蔵山という秋葉の端にある山に建てられたお寺だ。広い境内に大きな本堂を構えているが、人の気配はない。敬虔けいけんな寺の形を保っているだけで、実態は真逆の魔の巣窟。境内には木偶人形どもが闊歩している。


「なるほどね」


 愛梨彩は顎に手を宛てがいながら境内を眺めている。


「なに頷いているのさ?」

「いえ……ここほど隠れ家に適した場所はないと納得していたのよ。善空寺はかつて武之内家っていう教会の魔術師が使っていた場所だから」

「つまりここも魔導教会だったっていうこと?」

「そういうこと。武之内が没落した後も魔導教会が管理していると思っていたから見落としていたけど……どうやら放置されたままのようね」


 お寺が魔導教会だったことに今さら驚きはしない。だが魔術師の家系が没落するのは少し気になった。やはり魔術式がない血筋は廃れていく一方なのだろうか。

 と、今はそんなことを考えている暇はない。


「で、どうする? とりあえずほかの班には所在を連絡したけど……みんながくるのを待つ?」

「確かに傀儡を操る綾芽を相手にするなら味方が多いに越したことはないけど……彼女、なに考えているかわからないものね」


 そう言った愛梨彩はチャットグループにメッセージを送る。


『私と太刀川くんで善空寺に攻撃をしかけるわ。ほかの三人はそのまま各々の班の仕事を続行して。傀儡魔法で離れた場所を襲う……なんてことも考えられるから』


 という内容だった。


『了解。無理はしないように』

『わかったのだわ』


 ブルームとフィーラの返答が即時に返ってくる。続いて緋色はサムズアップしたマンガのキャラのスタンプで返答していた。彼らしい返答で戦闘前なのに笑みが溢れてしまう。


「じゃ、いきますか」


 僕がそう口にした折だった。


「ほう、お前たちもこの場にきていたか」


 背後の石段から低い男の声が聞こえたのは。振り向くと——そこにはアインと咲久来がいた。


「九条……愛梨彩」

「まさかこんな敵陣の真ん前で乱戦を起こす気かしら?」

「あなたがそれを望むならこっちだって——」


 咲久来と愛梨彩が静かに睨み合う。だが、お互いに戦闘態勢には移らず、目線と言葉で牽制するだけだった。


「待て、咲久来。我々の任務は二宮綾芽の抹殺だ。目的は貴様たちと同じだと思うが?」


 咲久来を制止したアインが僕たちに問いを投げる。


「でしょうね。だったらどうするの?」


「取引だ。二宮綾芽討伐までの間、休戦協定を結びたい」


 僕と愛梨彩は言葉を失った。全く予想していない内容だったからだ。

 休戦協定……? 敵対している魔導教会と手を組めと言うのか?


「アインさん!」

「咲久来……お前だってそやつと戦うのは本意ではないのだろう?」


 アインが僕を見やる。


「それは……そうですが」


 できることなら……僕だって咲久来と戦いたくはない。だが——


「私は今回だけ共闘してあげてもいいけど……アイン、あなたわかってる? あなたは殺した相手に自分勝手な都合で共闘を持ちかけているのよ」


 愛梨彩の言う通りだ。咲久来が従っているのはアイン・アルペンハイム。この無表情な男こそ僕を殺した張本人なのだ。

 恨んだり憎んだりするつもりはないが……簡単に割り切って信用できる男じゃない。隙を見て背後から愛梨彩を撃つ可能性だってあるのだ。提案を鵜呑みにはできない。

 しかし、次に取った彼の行動は意外なものだった。


「すまないことをしたと……思っている。私はお前を殺すべきではなかった」


 無精髭の男は申しわけなそうに頭を下げたのだ。その行動があまりに予期せぬことで、自分はなんと声をかければいいのかわからなくなった。

 正直魔導教会の連中は話の通じないやつらばかりだと見なしていた。しかし、この男は頭を下げたのだ。少し……ほんの少しだが、アインのことを信用してもいいのかもしれないと思った。


「えっと……その……まあ一時的だとしても共闘してくれるってことならいいよ。過去より今の方が大事だし」


 口をついて出たのはそんな言葉だった。大事なのは過去じゃない。今であり、未来だ。なによりこの場での最適解は彼らと協力して綾芽を倒すことなんだ。自分のわがままを通す時じゃない。


「協力、感謝する」


 アインが深く下げていた頭を上げる。さっきと変わらず表情に起伏は見られないが、心なしか清々しい顔つきに見える。


「どうやら敵の大将もおいでのようね」


 本堂の入り口に綾芽の姿が見える。糸目で妖しく笑うその顔には喜悦の色が溢れていた。

 善空寺襲撃戦。想定外の協力を得た僕たちは綾芽へと立ち向かう。強敵だった魔女とスレイヴが味方になるとこうも心強いとは。

 必ず勝利し、綾芽の凶行を止めてみせる!


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