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ゼロの魔女騎士《ウィッチナイト》  作者: 鴨志田千紘
第2章 魔女は己が欲《エゴ》のために踊る
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ツタエタイコト

初めてこの作品を読む方へ

騙されたと思って第6部まで読んでください。あなたを物語に惹きこみます。


 愛梨彩は屋敷に着くとすぐに緋色の復元を始めた。戦闘後はピンピンしていた彼だったが、やせ我慢していたのだ。傷こそなかったが、負の昇華魔法で負荷がかかって体が疲弊していた。


「傷がないのにどうして復元したんだ? 元の状態に戻しても意味ないんじゃないの?」


 緋色とフィーラがいるゲストルームから立ち去ると、すぐに先を歩いている愛梨彩に尋ねた。復元魔法は復元し続けることで『元の状態を維持する魔法』のはずだ。一時的に緋色の状態を治しても意味がない。


「一般人の自然治癒力では魔法の影響を治すのに時間がかかり過ぎるのよ。だから、魔力を浴びせることで自然治癒力を促進させたの」

「僕と同じ理屈か」

「そういうこと。あなたも魔力を浴びてるから自然治癒力が高まってるでしょ? フィーラの昇華魔法でも同じことは起きるでしょうけどこと回復という点では不向きなのよ、あの魔法は」


 フィーラの魔法の場合、対象が肥大化してしまうというデメリットがあるのだろう。その点、復元魔法は一時的に元に戻しつつ、対象の自然治癒も促せるというわけか。


「なんかお互いに足りない部分を補ってるみたいだね」

「そう……だといいわね」


 見下げると、階段を降り切ったところで愛梨彩の足がはたと止まっていた。


「さっきのフィーラの言葉、気にしてるの?」


 ——「時間をちょうだい。気持ちの整理を……したいのだわ」


 僕たちが部屋を去る前にフィーラが言った言葉だ。改めて同盟を組みたいと伝えたのだが、彼女にも思うことがあるのだろう。

 彼女の願いは「名誉」だ。愛梨彩を倒さなきゃ「最強」にはなれない。その願いを手放すには勇気が必要なのかもしれない。


「もう殺し合いをすることはないって頭ではわかってるんだけどね。ただどうしても少し怖いのよ。また望まぬ戦いをすることになるんじゃないかって」


 あの日と同じだ。フィーラと戦うことになると知った時と同じ儚げな横顔。

 なんと声をかければいいのか、一瞬躊躇いが生まれる。


「大丈夫だよ。戦うことになりそうだったらまた素直に叫べばいいんだから。『戦いたくない』って。諦めずに言い続ければきっと相手にも届くよ」


 でもここでなにも言わないなんてできなかった。僕は主人を支える従者スレイヴだ。青臭い綺麗ごとかもしれないけど、彼女を支えるためなら言える。——諦めるなって。


「あなたには教えられてばかりね」振り向いた彼女は優しく笑っていた。「さっきもそう。私は戦いたくないと思いながら心のどこかで諦観していた。仕方ないことだって。自分の願望を押しつけてるだけだって。でも、そこで挫けてはいけなかったのね。それに気づけたのは太刀川くんのおかげよ。ありがとう。フィーラを信じて待つことにするわ」

「ど、どういたしまして」


 僕は瞬時に口元を手で隠し、俯いた。そんなキラキラとした顔をしないで欲しい。僕は当たり前のことを言っただけなんだから。

 静寂が二人を包んでいく。今ならもっと青臭いことでも言えるんじゃないかって思った。


 「僕が君を一生支えるから」とか。

 「ずっと君の力になりたい」とか。

 「君が迷った時は僕が手を引っ張って先導するよ」とか。


 考えただけで胸がドキドキしてきた。いや、待て。これはもはや告白なのでは!?

 けど今なら言えるかもしれない。どんな恥ずかしい言葉でも彼女を想えば言える。僕は彼女の支えになりたいのだから。

 そうだ、僕も素直に言えばいいんだ。ありのままの気持ちを伝えれば。


「あのさ——」


 だが言葉を紡ごうとした矢先、別の音が静寂を切り裂いた。聞き覚えのあるチャイムの音だ。来客——といえば心当たりは一人しかいない。


「ハワードがきたようね。先に客間へいってて」

「……わかった」


 不貞腐れたつもりはなかったのに、吐き出した言葉のトーンは低かった。

 いいところで邪魔をされてしまったが、かえってよかったのかもしれない。冷静に考えてみると、とんでもないことを言おうとしていたんじゃないだろうか。

 伝えるのは別の機会に取っておこう。それまではこの気持ちを胸の奥に秘め、黙々と主人を支えるさ。


続きはカクヨム(https://kakuyomu.jp/works/1177354054887291624)の方で先行して掲載されております。

興味のある方は是非そちらでも読んでみてください。

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