エボリューション・キング
初めてこの作品を読む方へ
騙されたと思って第6部まで読んでください。あなたを物語に惹きこみます。
俺を守るためにみんなが一丸となって戦っている。死霊や魔獣を倒していくフェンリルとヨルムンガンド。魔女の呪文を全て斬り伏せているブルーム。俺とフィーラを守っている愛梨彩。
「ちょっと、なに笑ってるの!? 真剣にやりなさい! この作戦の要はあなたなのよ!?」
杖を持ちながら正座していたフィーラが俺に説教をする。さっきまでなにかぶつくさと言っていたから、いきなり説教されるとは思わなかった。
「ごめん。みんなで協力して戦っているのってなんかいいなって思って」
「はあ!? あなたの頭は平和ボケしてるの!? そんなこと言っていられる状況じゃないのだわ!」
正論すぎて反論する気になれなかった。俺はただただ「ごめんごめん」と平謝りする。
「それに私が協力するのは今回だけ。ここを切り抜けたらまた敵同士よ」
俯きながらフィーラが言う。表情は読み取れないが、物憂げな声色に感じた。その後は再びぶつぶつと言葉にならない言葉を喋るだけだった。
ふと、愛梨彩の方を見る。苦しそうな表情で、中から水のバリアを維持している。なにか声をかけたかったが、言うのは躊躇われた。必死だけど、諦めてはいない。そんな顔をされたら黙って見守りたくもなる。頑張っている人間に「頑張れ」とは言えない。
障壁の外は死霊と魔獣がうじゃうじゃといるが、最接近しているわけではない。死霊の弓から放たれた矢がバリアを掠めるが、痛手ではなさそうだ。
「詠唱の文言が決まったのだわ!」
「文言……? ってまさか今まで詠唱考えてたの!?」
なにをぶつぶつ言っているのかと思えば、まさか詠唱を考えていたなんて。俺が言うのはおこがましいかもしれないが、この状況でそんな悠長なことしていていいのだろうか?
「詠唱の文言って重要なのよ? 日本語でも『名は体を表す』って言うでしょう? それと同じで詠唱はカッコよく、かつ綺麗なほど魔法は洗練されるの」
人差し指を立てて、得意げにフィーラが言う。詠唱にそんな秘密があったとは。だから愛梨彩の術の名前は厨二臭いわけだ。
「お楽しみのところ悪いけど、スフィアがもう保ちそうにないわ……なるべく早くお願い!」
「時間がない! 早速そのカッコいい詠唱、お願いします!」
俺は乞うように頭を下げる。
フィーラは「わかったのだわ」と言い、立ち上がる。そして跪いている俺の頭の上に杖を置いた。
「フィーラ・ユグド・オーデンバリの名をもって命じる! 白亜の国を救いし騎士王よ。悠久の時を超え、この依り代を御身とし、その御霊を現世に顕現させよ!」
魔力で満ちた金色のオーラが俺の体を暖かく、優しく包みこんでいく。力は集まった。残る仕上げは命名のみ。さあ、術名を叫んで俺の力を解放してくれ!
「『|昇華魔法:救国の騎士王』!!」
与えられた名前は伝説の騎士王——アーサーの名。
スフィアが消えると同時に俺の体は光を放って進化し、顕現する。昇華前よりも大きくなった肉体は鎧兜を纏い、魔力が迸っている。まるで魔力の嵐に身を委ねているようだ。
これは英国を救った英雄の力。救世主、アーサー王を模した力だ。この力があればどんな窮地だってひっくり返せる!
「太刀川くん! これを!」
愛梨彩が俺に『魔刃剣』を投げ渡す。彼女はなにも言わない。何度も死線を共にした相棒だ。黙って頷くだけでも意味が伝わってくる。——「あとは頼んだわ」
「私にできるのはここまで……」
力尽きたフィーラが前のめりに倒れこむ。間一髪のところで俺が抱きとめると、力なく「さあ……レイ。やっておしまい」と命じるのだった。
「ああ、任せてくれ」
目をつぶった彼女に語りかける。言われなくたってわかってる。俺の体には愛梨彩の『復元』の力とフィーラの『昇華』の力が宿っている。
——証明してみせる。君たち二人の力が合わされば無敵だってことを。
フィーラのことを愛梨彩に託す。俺は大群の前へと躍り出て、剣の出力を上げる。
「そんな見せかけだけの力で……!」
アインが業火を放ってくる。だが、そんな攻撃は今の俺の前では無意味だ!
「見せかけなんかじゃないさ! この体にみんなの想いが託されているんだから!」
避けずとも鎧が業火を弾き返す。俺は迫りくる魔獣どもを瞬く間に切り裂き、アインに突進する。勢いそのまま、目標を剣で薙ぎ払う!
「速い!? 『障壁式——ヘータ』!」
「遅い!」
小さく展開された火の壁を剣で粉砕し、吹き飛ばす。アインは魔獣の群へと突っこんでいき、沈黙した。これでまずは一人。次は——
「『土塊の——』」
瞬く間にサラサのところへと跳躍する。自分の肉体をフル活用した高速戦闘も『|昇華魔法:救国の騎士王』を使ってる間なら負担はない。
「そこだ!」
今の俺は誰にも止められない! 死霊を盾にする暇など与えるものかよ!
剣はローブを裂き、アインと同じようにサラサも吹き飛ばされていく。これで魔女二人は抑えた! 残るは——
「太刀川くん! 私がチャンスを作る!」
声の方を見ると、愛梨彩がフィーラを抱えながら跳んでいた。手には……氷の魔札。
「『封殺の永久凍土』!」地表が凍土と化し、魔獣たちの足が凍結する。「今よ!」
「この一撃で終わらせる!」
再び戦場の中心に戻った俺は剣に最大限の魔力をこめる。この体から溢れる魔力の嵐を余すことなく注ぎこむ。剣は戦場の端にまで届くほど伸びていく。
準備は整った。この一振りで全てに手が届く。領域全てが俺の距離だ。
フィーラは『名は体を表す』と言っていた。俺はこの一撃に名前をこめなければならない。この戦いに勝利するという揺るぎのない想いを。
——イメージするのは最強の聖剣。なら、名前は一つだ。
「エクスカリバァァァァァァァァァア!!」
絶叫とともに剣を横一文字に振り抜く! 止まった的となった無数の魔物たちは刹那のうちに真っ二つになった。押し寄せる恐怖は一変、目の前は死屍累々となる。
同時に『僕』の変身が解除される。今の一撃で昇華した分の魔力を使い切った。だが、肉体はまだ動ける。
「退くわよ、みんな!」
愛梨彩の掛け声だけが戦場に響き渡る。戦っていたブルームと神獣たちは彼女に応じて、教会を去っていく。彼女らを追うために僕も重たい体にムチを打つ。
魔導教会の尖兵たちは倒した。けど依然として魔女たちは生き残っている。この戦いは始まりに過ぎない。僕と……野良の魔女たちの反旗の物語の序章だ。
続きはカクヨム(https://kakuyomu.jp/works/1177354054887291624)の方で先行して掲載されております。
興味のある方は是非そちらでも読んでみてください。
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