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ゼロの魔女騎士《ウィッチナイト》  作者: 鴨志田千紘
第1章 争奪戦の幕開け
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次なる戦場

初めてこの作品を読む方へ

騙されたと思って第6部まで読んでください。あなたを物語に惹きこみます。


「ごちそうさま。お粥なんて久しぶりに食べたわ。作ってくれる人もいなかったし」


 お粥を完食した愛梨彩がそう言った。食べている間は一言も喋らなかったあたり、相当お腹が空いていたのだろう。


「味はどうだった?」

「ええ、ちょうどいい塩加減だったわ」

「そっか。ならよかった」


 器が乗っていたお盆を受け取り、はにかむ。

 どうやら人生初の誰かに振る舞う手料理は功を奏したようだ。我ながら会心の出来だったと思うが、いざ褒められるとちょっと照れくさい。


「私が寝ている間襲撃はなかったって言ってたけど……ほかにはなにもなかった?」

「うーん……特になかったな。ハワードがくることもなかったし、僕とブルームは基本屋敷にいたからね」


 僕たちの陣営は愛梨彩を中心として集まっている。彼女に無断でどこかを攻めることはまずしない。それに後衛と回復役がいないまま戦うのは無謀というものだろう。

 飲食物や日用品が心許ないなと思ってはいたが、今報告することでもないだろう。


「その……フィーラはどうなったか、わかる?」


 急に愛梨彩の口調がたどたどしくなる。彼女はそれだけ言うとすぐに俯いてしまった。


「いや、わからない。あの後は撤退することしか考えてなかったから。君が倒したんじゃないのか?」

「倒したわ。でも、氷漬けにしただけ。とどめは刺してない」

「そっか……じゃあまだ生きているのかもね」


 『とどめは刺してない』。それを聞いて安堵している自分がいた。はたから見たら甘い考えなのだろうけど、彼女の優しさが垣間見えて嬉しかった。友達同士で殺し合いなんてして欲しくないというのが僕の本心だった。


「お邪魔するよ。ああ、ちょうど食べ終えたところみたいだね」


 静かに部屋の扉が開いた。ブルームだ。言葉は穏やかで口も笑っているが、なにやら物々しい雰囲気を感じる。


「急ぎの用事かしら?」


 愛梨彩の顔は少し無愛想に見えた。いやいつも無表情なのだが、より不機嫌になった……と言えばいいのだろうか。


「ああ。今後の我々の方針に関わることだ」


 ベットの横までくると、ブルームは横長の封筒を愛梨彩に手渡す。封を切って取り出すと、なにやら招待状のようなものが出てきた。


「魔導教会からだ。要約して言うと『高石教会にこい』ということらしい」

 高石教会。成石地域にないからあまり詳しく知らないが、確か同じ秋葉市の中にある教会だと記憶している。なぜ教会側から『魔導教会にこい』という誘いが? 罠だろうか?

「ここには私の名前しかないわね」

「同じものが私にも届いた。どうやら私が愛梨彩と行動をともにしていると知っているからか、二つともこの屋敷の郵便受けに入っていたよ」

「呼ばれているのは野良の魔女……ってこと?」


 恐る恐る僕がブルームに尋ねる。


「そうなるね。おそらくフィーラ・オーデンバリやその他の野良の魔女にも同じものが届いているだろう」

「教会が野良の魔女を呼び出すなんて……今さら争奪戦のルール説明でもするのかしらね」


 ルールなんてない、やるかやられるかの殺し合い。そんな戦いに今さらルールを敷くとは思えない。多分、愛梨彩なりのジョークだろう。


「協定を結んで禁則事項を作る——という可能性はあるだろうが……体制側である教会側から申し出るというのはおかしな話だね」

「この屋敷の所在が知られている以上、出向いても出向かなくても戦闘は避けられない……か」


 顎に手を宛てがいながら愛梨彩は思案している。

 郵便が届いたということはそういうことなのだろう。「こちらはいつでも拠点を襲撃することができる」と脅されているようなものだ。


「じゃあ高石教会にいくのか?」

「野良の魔女を呼び出しているということは相手も総出でくるでしょうね。となると相手の戦力を知ることができる。私たちは襲撃する側だし、ここで防衛戦をするのも筋違いでしょ?」

「どのみち高石教会に賢者の石があるかも調べないとだもんな」


 僕たちの行動の基本は市内の魔導教会をしらみ潰しに襲撃して、賢者の石の在り処を特定することだ。高石教会に出向くことは理にかなっているわけだ。拠点が知られている以上、僕に反論はなかった。


「上手くいけば野良同士で同盟を組めるかもしれないしね。この呼び出しは双方にメリットとリスクが存在する。呼び出した教会にもリスクがあるし、野良側にメリットもある。危険だからという理由で回避する事柄ではないだろう」

「ちょうどいいわ。フィーラの生死も確認しておきたかったし。誘われた通り、四日後に高石教会へ出向きましょう」


 愛梨彩の決断に異論はない。

 ただ一つ気になることは——高石教会には咲久来もくるということだ。

 自分の意思を咲久来に伝えられるだろうか。自分の意思エゴを貫き通せるだろうか。

 不安はあるが、覚悟する。愛梨彩に味方している以上、これは避けられないことなんだ。今度こそ咲久来を止めてみせる。

続きはカクヨム(https://kakuyomu.jp/works/1177354054887291624)の方で先行して掲載されております。

興味のある方は是非そちらでも読んでみてください。

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