城戸教会
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小さな教会には人っ子一人いなかった。目の前には仄暗い空間が広がっているだけ。
「やっぱりいない……か」
「流石にこんな小さい教会じゃ防衛もままならないのだわ。まあ、当然と言えば当然ね」
愛梨彩とフィーラは礼拝堂の祭壇を探っていた。僕と緋色は……所在なく堂内を眺めていた。魔術に精通していない僕らができることといえば、周囲を警戒することくらいだ。
「これ以上探っても無駄だろう。長居して教会の連中に察知されたら面倒だしね」
「そうね。城戸の屋敷の方へと向かいましょうか」
ブルームの進言を受け、愛梨彩とフィーラが戻ってくる。ここまでは予想通り。元々教会の方に期待はしていない。
僕ら五人はそのまま教会を後にする。このまま城戸家の屋敷に向かおうとしたその時だった。
「ああ……ああ!! お会いしたかったでありんす、フィーラさん!」
「アヤメ……!!」
そこにいたのは黒色の和装を纏った魔女とその防人。——綾芽と貴利江。撤退するのが遅かったか!
紅玉の瞳はフィーラと緋色のみを捉えていた。僕らは彼女の眼中に入っていない。
「ちょうど我慢の限界でありんした。『様子を見ろ』だなんて……まことにまどろっこしい指示」
綾芽の口からこぼれた言葉……一瞬、耳を疑った。
指示だって? 彼女が『様子を見ろ』と誰かに言われて、襲撃を我慢していたって言うのか? 快楽主義な綾芽が?
「裏に誰かいることはわかってはいたのだわ……あなたを野に放った飼い主が」
フィーラは眉をピクリとも動かさずに綾芽を睥睨していた。綾芽が平伏するほどの人物が……バックにいることまで読んでいたようだ。
「あら、興奮のあまりつい口が滑ってしまいんしたねぇ。でも、どうでもいいことでありんす。わっちはぬしさんと戦えればそれで!!」
綾芽が魔本を開き、岩の鏃を放ってくる。それをすんでのところで稲妻が粉砕する。
「アリサ、レイ、ブルーム。予定通りに行動して。ここは私とヒイロが受け持つのだわ」
ブルームが無言で頷く。遊撃担当の彼女も二人に任せるのが適当だと判断したようだ。
「わかったわ。気をつけて、フィーラ」
「任せなさい! こっちには勝ちに代わるヒーローがいるんだから!」
「おうよ!」
緋色のサムズアップが頼もしい。
綾芽とはすでに交戦経験がある二人だ。心配はない。僕らはフィーラに言われた通り、城戸の屋敷へと向かう。
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