住処を探して(妖怪)
種別:即興
お題:"不明"
制限時間:15分+α(微修正あり)
くるくる回る、風車。
イメージで作ったものだが、うまくできている。周囲の風にも合わせて、気持ちよく羽が躍っている。
「さて、風は送られるでなく、歩かねばな」
そうしてまた、硬い地面の上をえっちらおっちら。
汗水垂らして歩く姿は、どこへやら。
「廃墟なのか、新築なのか。わからないのぅ」
あれか、これが大昔に流行った、あなろぐ型って奴の気分なのじゃろうか。あなろぐ型って言い方も、はたしていつの頃だったのか。
――あの家に住んでいたのも、はてさて、いつのことか。
「木造りも、文化事業だと言っておったなぁ」
追いやられて流れ着いて、住んだ家は、何千回と修繕された歴史遺産。
それも、管理する人の少なさから、今後はどうなるかわからないと言っていた。
……あれから、ずいぶん経つ。朽ちるのを見たくなく、さまよい出てはきてみたが。
「記録になるのであれば、記録の中で触れられれば、それが真実になるのじゃろうか」
生まれた頃の人間達は、記憶だけで生きていた。
いつの間にか、過去を記録するすべを身につけて。
住む場所を追われた頃には、過去も未来も時間すらも、混ざった世界へと旅立っていた。
「でじたる、ってやつは、そんなに居心地がいいのかのぅ」
……元気だ、心地よく、永遠がある。そういった感情らしきものを、文字で見たことはあるが。
わしの知る元気と、液晶って鏡のなかの元気。それって、同じかのぅ?
「まぁ、考えても仕方ないか」
とりあえず、自分は元気な想いでいればいい。
泣かなければ、傷がなければ、声が出せれば、身体があれば、心があれば。
そうして独り、絶えぬ光の道を行けば。
人と呼ばれた命の果てを。
「木造りの家は、どこかにあるじゃろうか」
幸せを運ぼうにも、住む家がなければ与えようがないものなぁ……。
とはいえ世界は広いもの。
わしのような変り者がいるのなら――まだ、木造りの家でご飯を食べる、変り者もいるじゃろう。