潜めた話の行き着く先は(恋愛)
種別:即興
お題:消えたサイト
制限時間:15分
「ネットワークコミュニティの幻想、なんて言葉があるけれど、じゃあ現実の関係性は真実なのかって話よ」
放課後の教室でたそがれていると、声をかけられる。
茶色に染めた髪と、ややルーズに着こなした制服。
スポーツに勉学にファッションと多忙な日々を過ごす幼なじみは、今日もまぶしい。
「なんの話かって、落ち込んでるのがわかったからね」
ぼさぼさの髪をかきあげるふりをしながら、彼女からの視線を避ける。
もっぱら、サブカル評価の高い映画や小説、評論なんかを好む俺とは対照的。
(『君の視点は、クールだね』)
ふと、入れこんでいたレビューサイトの主からよくもらっていた、定型文を想いだす。
……現実の俺は、レビュー内容ほど冷静になれない、くよくよした高校男子なわけですが。
「落ちこんでるのは知ってるよ。趣味があって話もあう、そんな人のサイトが閉じられたんでしょ」
しかたなく頷きながら、心配させたことを詫びる。
「気にしなくてもいいのに。お気に入りのものがなくなったりしたら、哀しいからね」
しんみりと同情するような言葉に、そういえば、話すのも久しぶりだと想いだす。
最近は、彼女が華やかになったことや、そのサイトに入り浸っていたこともあって、どこか距離を置いていたんだった。
「……ねえ。そのサイト、また復活してほしい? 恨んでない?」
不安そうに聞いてくる言葉に、俺は、想ったことを口にした。
つくろったわけでもなく、ただ、今の心にあることを。
「――いいんだ。そのサイトで語った語り合ったログは、確かに消えたけれど。……話し合った記憶自体は、俺の中にあるからな」
冷静にそう言った俺に、彼女は、くすりと微笑む。
「やっぱり、君の視点はクールだね」
その言葉にはっとして、眼の前の彼女を見つめる。
「言い出せなくて。まさか君が、こっそりやってる私のサイトを、覗きに来るなんて」
……一気に、顔が赤くなるのがわかる。
サイト以外で、いろいろな悩みや、想い人の話なんかをしてたのは……!?
「――消えたサイトの想い人と、現実の私。つないでっていうのは、卑怯かな?」




