ある異星の終焉(アクション)
種別:即興
お題:2つの場所
制限時間:15分+α(追記・修正あり)
――正確無比な狙撃は、あぁ、彼女だとわかった。
すかさず森の中へと身を潜め、弾幕をやり過ごす。
遠距離からの狙撃は、僕達を効率的に滅することができる方法の一つ。
(でも、彼女はそうしない)
彼ら人類にとって、僕らの血や体液は細胞分解を発生させる。
だが、彼女は例外だ。
そのように"造りなおされた"彼女は、むしろ、同じ人類より僕たちと接している時間の方が長いだろう。
――頭を下げた瞬間、巨大な大木が崩れ落ちる。
機械によって増幅された彼女の手足は、同胞の人類すら忌避する力を容易に放つ。
(彼女は、僕達を殺すためだけに、生まれ変わったのか)
もうすぐ、戦争は終わる。
僕達のような、この星に住む者達は滅ぼされ、彼女の母星にテラフォーミングされてしまうのだろう。
……彼女は、その後、どうなるのか。
解析された情報から、"作りなおされた"者達は、どう見ても人間達の惑星に適さない身体になってしまっていた。
むしろその身体は、僕達、この星に住む者に近いものだ。
恨むべきはずなのに、僕は彼女のことを、恨むことができなかった。
……なぜ彼女は、戦い続けるのだろう。
何百、何千と、朽ちることなく動かなくなった、同胞達がいるというのに。
(それは、僕も同じか)
――ふりおろされた刃をエネルギー磁場で受け止め、ねじりこんで弾き返す。
トンッ、と地面を蹴る音とともに、僕の眼前に立つ彼女。
……奇妙な二足歩行の生命体。
その美醜を、僕は、判断できるわけではないけれど。
(まっすぐにこちらを見つめる君は、なぜ、そんなに冷めた眼をしているのか)
彼らの肉体を解剖して判明した、視覚機関。
まったく異なる視界を持つのに、僕の眼には、それがとても冷めたものに映る。
錯覚なのかもしれない。
でもその眼は、最後まで抵抗を続ける僕と、同じものを感じさせた。
(侵略者である君は、けれど、いつかは朽ちる。僕達のように)
2つの場所。
キミとボクの、決して重ならない故郷。
――重なることができる、この一瞬の、殺し合いの時。
(そうされてしまった君が、唯一、ふるまえること)
許されていいはずがない。
この惑星で最後に残った、最強の戦士。
皆の亡骸を見つめた僕が、そんな感傷に、浸っていいはずがない。
……ゆっくりと、手元にエネルギーをためる。
『もっと早く、こうして話せるようになればね』
僕のつたない人間の言葉に、彼女は、驚いた眼をした後。
いつものように、大きく後部の熱噴射装置をふるわせて、切りかかってきた。
……まったく。
『そんな眼も、できたんだね』
呟く僕の声に、彼女は、どう感じたのか。
僕と同じように、彼女もまた、わざとすぎるほどのスキを造りだし。
後は、互いに殺し合ったタイミングを知る者同士、ぴったりと肉体に力をこめて。
――2つの刃を、同時に、暖かく刺し貫いたんだ。




