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整えられたその味は(300字SS)
「美味しそうだね」
「ありがとうございます」
食卓の上に並べられた、色とりどりの朝食。
若々しい色にあふれたサラダは、焼きあげたハムエッグの黄白と調和する。
粒のたったお米は、朝日の眩しさを映すよう。
「さすがだね、嬉しいよ」
「……ではなぜ、浮かない顔をされているのですか」
テーブルを見る主人の顔は、言葉と違って冴えない。
「もったいないなって」
「なぜです? 至らぬ点がありましたでしょうか」
いや、と主人は呟いて、続ける。
「一緒に、美味しいって言いあえないのが、寂しいなって」
「――いつも通り、味覚センサは誤差の範囲で、味付けは正常のはずですが?」
……主人が苦笑する理由を、調理型人形である彼女は、理解できない。




