開花
もうネタ切れ、はやし。
私は、一途に走っていく。
爽やかな匂いを纏い、可憐に笑う少女の腕の中を目掛けて。
彼女の匂いは、なんだか懐かしい気がした。
お嬢様の名前は「鈴華」に決まった。『輪廻転生の娘』であり、秘桜に最も近づいた娘、という理由で付けられた。櫻音の者に名前を呼ばれたお嬢様は、さも嬉しそうに笑い、華やかな笑顔を見せる。私がお嬢様の名前を呼ぶと、櫻音の者よりも嬉しそうにし、きゃっきゃと笑う。なんだか優越感を感じるひと時だ。
どうやら、能力の判別が終わったらしく、ジジ…もとい櫻音の長老が姿を現した。
「どうでしたか、長老様。鈴華様の潜在能力は。」
「まあまあ、焦るではない。焦らずとも、能力は逃げて行かんよ。」
ゆったりとした口調で、長老が従者の一人にそう言う。
「『輪廻転生の娘』こと、櫻音鈴華の潜在能力は、『斬刃』。階級は伍。ありとあらゆる物を斬り裂く、迷いのない刃を操る。無論、斬る対象が心であっても、効果は変わらない。」
部屋の中にいた人たちが皆、息を呑む。当然だろう。なにせ、『能力階級』が最高値の『伍』なのだから。
能力階級、というのは、霊術師が保有する能力の強さを分けたものだ。普通の人間であれば、『弐』でも十分強い。だが、櫻音一家は、皆強力な霊力を保有するため、能力階級が『参』の人間が多くいる。だが、長老を始め、『賢者』と呼ばれる霊術師でも、能力階級は『肆』までしか行かない。『伍』を扱うのは、ごく限られた人間、それも、『創始者』に認められた者だけだ。
能力階級が『伍』。今まで見た『輪廻転生の娘』は皆『参』までしか行かなかった。だが、お嬢様は『伍』。創始者の生まれ変わりであれば、それくらいの値は出て当然だろう。ちなみに私は昔まで『肆』だったが、今では『伍』になっている。
時は流れ、お嬢様は5歳になった。
お嬢様はとても聡明で、書庫にあった本を読み始めるようになった。特に歴史に興味を持ったらしく、朝から夕まで読みふけていた。
また、能力の扱いもとても上手く、5歳とは思えないほどの術者としての成長も速かった。演練で私もたまに相手をするが、村の中の能力を持つ子供と比べれば、断然強かった。
そんなある日、突然お嬢様から『妖怪退治』を依頼された。内容は『双子山』の山頂に住む妖怪の尻尾を引きちぎって持ってこい、とのことだった。小さいのにそんなものに興味があるのか、と驚きながらも、私は刀に跨って空を飛び、双子山に行った。決して西洋の魔女の真似ではない。決して。




