第一話
異世界オルトヴァーデルで魔法の才能と剣術の才能
それぞれを限界突破能力まで引き出したぶっちぎり最強戦士が誕生…するのかもしれない。
俺の名前は羅美野 凛。
どこにでもいる高校生…だったはずなのだが、スマートフォンデビューし今はソーシャルゲーム三昧の日々だ。
このままでは、ウルトラレア引換券のボーダーからふるい落とされてしまう…。
そいつぁヤバイとばかりに俺は追加課金を決め込むためにスニーカーを履き、ググプレカードを目指し、いざコンビニへ向けて足を向けて家を飛び足した。
時刻は午後十時を回ったあたり、俺は足取りも軽く河川敷の方向へ行った。
「(あーあ、俺もゲームみたいに女の子にモテまくったり、空を飛んだり、ファンタジーの世界に転生したりできたらなぁ…)」
そんな夢のようなことを夢想しつつランニングしていると、河川敷の段差に腰をかけている人物が視野に入る。
またか…、という印象。
この場所を通る時間帯にたびたび見かける俺と同じ学校の制服を着た女生徒。
毎晩こんな夜中になにやってるんだ?
普段なら気づかれないようにコッソリ走りぬけるのだが、俺はつい足を止めてしまった。
日本人形の様な長い黒髪に黒いふちのメガネをかけた少女、そしてどこか他人を近づけさせない暗い陰気をまとっている。
そして普段横切るときに見る彼女の陰気がさらにダークオーラをまとい四倍ほどに膨れ上がっている気がする…。
「どうしたの?」
俺は頭で考えるよりもさきについそう口走ってしまった。
「えっ?」
長い髪を揺らしながら声のした方向、つまり俺のほうに振り返る。
ヤバイ…、ついさっきやっていたソシャゲの主人公になりきってしまっている自分に驚く、
慌てて俺は話題を探すために目を右往左往させる。
「キミ、なにかゲームとかするの?」
「…………」
……………やばい。何いってんの俺。いくらオーラに親近感を覚えたからって初対面でいきなりかける言葉じゃない!
冷や汗を垂らしながら仁王立ちする不審者に向かって、彼女は消え入りそうな声で
「ゲーム……とくにソシャゲなら」
と持っていたスマートフォンをこちらに向けた。
その瞬間俺の身体はスマートフォンの光に包まれ意識が遠のいていった…。
◇