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第84話 ミシュカンの戦い

エメラルドをめぐる戦い。


 レネネに案内され、ミシュカンの中に入る。

「ようこそ客人」

 奥には、主人用のイスと、客人用のイスが並べられて、テーブルにはお茶の用意がしてあった。

 座った途端に、一斉に団員たちが入ってきて剣を抜き並べた。


「……あら……? なんの真似かしら」

 ハトホルは微動だにせず、リリーを見据えている。

「大人しくしてもらおう。リリー、先日は助けていただいて感謝する。……お前たち、あの女の盗賊とグルだろう」

「……」

「日に二人も、魔女と遭遇することはない。第一、この街の盗賊どもは、私を決して狙わない」

 彼女が右手を上げると、刃の輪が一歩狭まった。

「昨日の女盗賊も凄まじい魔力を持っていた」


「アキラ、あなたなんでしょ」

 とレネネ。

「さっき、お土産を見ていた時、観光ガイドの私ですら聞いたことない独り言を言ってたわ。異国の言葉でしょう」

「ボッシュートのことですか? ええ、僕の国の言葉です」

 そのせいでバレるとは予想外だった。

「私たちの目的は、古代の女王が所持していた女神のエメラルドよ」

「何故、私が持っていると思う」

「最初から聞いてくれるなら話すわ。殺すかどうか、それから判断したらいいわ。私たちをこの人数で殺せると本気で思うならね」

「……」

 リリーが右手を上げると、アメジストの指輪から、黒百合の女神が現れた。

 空中から突然現れた姿に、剣を構えていた団員たちが後ずさった。

 しかし、誰も声を上げない。

「よく鍛えられているのね」

「……ただの観光客ではないようね。いいわ、話を聞こう」


 お茶どうぞとハトホルは促した。自分のカップに注いで口をつける。

 毒なんて入ってないということだろう。


「最初から話すわね。私達は、あなたを傷つけるつもりなんてない。私はリリー・ロック、ラウネルの魔女。私たちは、ラウネルの王子・クラウスをシャルルロアに奪われている」

「なにゆえ、テル・アルマナにやって来た?」

「王子を取り返すためは、仲間が必要なの。私の親友は、エメラルドの持ち主である女神ベリロスに命を助けてもらった。女神のエメラルドを持ち帰らない限り、目を覚まさない」

「私には関係ないこと」


「そうね。まったくその通りね。私はシャルルロアの女王を倒して、王子を取り返さない限り、国に戻れない。だからやるしかないのよ」

 黙って聞いていたレネネが口を開いた。  

「あなた方が大変な旅をしているのはわかりました。しかし、お姉さまがエメラルドを持っているとどうやって証明するのです。お姉さま、耳を貸す必要はありません。殺しましょ」

「レネネ、あなたたちが、私達を殺そうとしたことでわかったわ。彼女が持っているんでしょう。もっていなかったら、知らぬ存ぜぬですむ話だし。魔法が使えることだって、別の精霊と契約したとかなんとかでごまかせるようなことなのに。彼女が魔法を使えるということを、仲間は知っている。特別な人間だということも。死んだ古代の女王のエメラルドのことなんて知らない、それで済む話なのに」


 きっと、ハトホルはずっとそうして来たのだろう。

 仲間たち以外に、魔法を使わず、女王としてではなく踊り子として生きてきたのだろう。

 この街で。

 彼女の暮らしを奪ってしまうかも知れない。しかし、やらなくてはならない。


「あなたは無視できなかった。本人だから」

「……私が、女王だと?」

「ニネ王とあなたのことを、見させてもらった。ニネ王本人からね」



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