表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
84/155

第82話 おためし襲撃

ガーネットは悪い子なので、強盗ぐらいできます

82


 踊り子ハトホルが、エメラルドの持ち主かどうか、どうやって確かめるかと、僕たちは額を集めて話し合った。

「襲ってみる、というのはどうでしょう」

「乱暴ねえ」

「あくまでふりです。女神のエメラルドの所持しているなら、戦えるでしょう。古代の女王アミシは、不思議な力で敵を追い払ったといいますから」

「ベリロスの力を彼女が使えるなら、私達のゴーレムぐらい、簡単に叩きのめせるでしょうね。……よし、アキラとシャーロットで行きなさい。ただし、傷つけちゃだめよ、お芝居よ」

「わかった、まかせろ」


 レネネが戻ってきて、

「今夜は次の公演が入っているのでムリですが、明日の昼なら空いてますとのことです」

 と告げた。

「わかったわ、それなら、この店で待ち合わせでいいかしら?」

「いえ、彼女たちのミシュカンがあります」

「ミシュカンってなに?」

「布と木で作る、移動式の住まいです」

 テントとか、モンゴルのゲルみたいなものかな。自分たちの住居に知らない人を連れて行って大丈夫なんだろうか。

「明日ホテルに迎えに行きますね」

 話がまとまったところで、僕は腹を押さえてしゃがみこんだ。

「リリー様、ちょっと食べ過ぎちゃって腹が痛くって」

「まあまあ大変。今日はもうお開きにしましょう」

 食べ残した分は、紙パックの容器に入れられて持たせてくれた。

 レネネに謝礼を払い、帰宅させる。一度ホテルに戻り、リリーが盗賊ぽい衣装を作ってくれた。

 布で顔を隠したシャーロットと、僕は念の為ガーネットに変身する。

 間を開けて僕たちはそっとホテルを抜け出した。


---


 夕食をとったレストランの近くに戻り、ハトホルが出てくるのを近くの店で待つ。この国の紅茶は砂糖がたっぷり入っているらしく、甘いアイスティーが出てきた。

「それにしても襲ってみるとか、発想が物騒だなーお前」

「韻を踏まないでちょうだい」

 どれほど時間があったのか、人通りが少なくなってきた頃、ハトホルと、楽隊たちが店を出てきた。

「よし……。ガーネット行くぞ」

「ええ。シャーロット、あなたは見つからないように離れて見てて。無理そうならすぐ逃げるから、後からついてきてね」

「了解した」


 衣装や楽器を抱えたハトホルたちを尾行し、町外れまで歩く。充分な広さを確認し、ロッドを取り出す。

「よし……。人の形となれ……変われ!」

ゴーレムの肩に乗り、一行の前に立ちふさがる。

「な、ななな何者だ!?」

「見ればわかるでしょ、盗賊よ。金目のモノを置いていきな」

 なんだ女かと一行は剣を抜いた。


「ふん……」

 ゴーレムに命じ、高くジャンプする。

 ズズン……と、道にひび割れができた。


「命が惜しかったら引け。そこの踊り子、宝石のひとつやふたつ持ってんでしょ」

「私をハトホルと知っての狼藉か」

「国一番の踊り子でしょ。素敵なステージだったわ。魔法使いみたい」

「……」

「エメラルドを持ってるんでしょ?」

「さあ知らないわね」

「手荒なことはしたくないんだけど……仕方ない」

 ロッドで槍を描いて、頭上で大きく振り上げた。

「精霊に命ずる、刃を降らせよ」

 氷の刃を空から降らせる。空気を切り裂く風が砂を巻き上げる。

「うわわわッ!?」

「に、逃げろ!!」

 その氷刃の鋭さに、一行は四方に逃げ出した。

「仲間が傷ついてもいいのかしら? アミシ」

「何故、その名前を? それに何故私がアミシだと思う?」

「銅の国の神官に占ってもらったの。古代の女王のエメラルドを探している。……あなたが何者でも関係ないの」

「ふーん……。なるほど」

 仲間たちが隠れたのを見渡し、ハトホルは両手を空に突き上げた。

「どうしてみんな私から、何もかも奪おうとするのよ!!」


 手首につけられた鈴の音が鳴り響いた。すると、上空から、串のような石の柱が落下してきて、ゴーレムの頭を砕いた。

「きゃあああああ!」

 思った以上に強力な攻撃に、本気の悲鳴が出る。

「逃がさないわ」

「……それはどうかな?」

 ロッドを振り、さらにゴーレムを出現させる。

「こんなものじゃないでしょう? もっと本気を見せて」

「……賊風情がッ、後悔するなッ!」

 鈴を鳴らす度に、上から、石柱が次から次へと落ちてきて突き刺さる。頭に直撃したら、即死だ。


「……あらあら、強盗? 踊り子さん、助太刀するわよ」

 聞き覚えのあるリリーの声がして、顔を上げた。

「こんなものでよければ、私も作れるのよ。強盗さん。逃げたほうが身のためよ」

 地面の砂が、ゴーレムの形になる。砂がさらさらと落ちた後、襲いかかってきた。

「仲間がいたなんて、聞いてないわっ……」

 逃げろってことか。せめて事前に話してくれたら良かったのにと舌打ちをする。 

 リリーのゴーレムの攻撃は単調で、戦意がないことはすぐわかった。

「ムリムリ、勝てっこないわ。退散よ」

 ゴーレムの拳で、地面を殴った。

「うわっ!? げほッ……っ! 待ちなさいっ」

 砂埃に、ハトホルとリリーが立ち止まった間に、その場を離れた。


 ホテルに戻る途中、シャーロットと合流する。

「ガーネット大丈夫か」

「ええ。でもこれで間違いないわ。彼女が、女王アミシよ」


砂漠とかオベリスクとか、遊戯王好きだったのがバレてしまうな

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ