第82話 おためし襲撃
ガーネットは悪い子なので、強盗ぐらいできます
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踊り子ハトホルが、エメラルドの持ち主かどうか、どうやって確かめるかと、僕たちは額を集めて話し合った。
「襲ってみる、というのはどうでしょう」
「乱暴ねえ」
「あくまでふりです。女神のエメラルドの所持しているなら、戦えるでしょう。古代の女王アミシは、不思議な力で敵を追い払ったといいますから」
「ベリロスの力を彼女が使えるなら、私達のゴーレムぐらい、簡単に叩きのめせるでしょうね。……よし、アキラとシャーロットで行きなさい。ただし、傷つけちゃだめよ、お芝居よ」
「わかった、まかせろ」
レネネが戻ってきて、
「今夜は次の公演が入っているのでムリですが、明日の昼なら空いてますとのことです」
と告げた。
「わかったわ、それなら、この店で待ち合わせでいいかしら?」
「いえ、彼女たちのミシュカンがあります」
「ミシュカンってなに?」
「布と木で作る、移動式の住まいです」
テントとか、モンゴルのゲルみたいなものかな。自分たちの住居に知らない人を連れて行って大丈夫なんだろうか。
「明日ホテルに迎えに行きますね」
話がまとまったところで、僕は腹を押さえてしゃがみこんだ。
「リリー様、ちょっと食べ過ぎちゃって腹が痛くって」
「まあまあ大変。今日はもうお開きにしましょう」
食べ残した分は、紙パックの容器に入れられて持たせてくれた。
レネネに謝礼を払い、帰宅させる。一度ホテルに戻り、リリーが盗賊ぽい衣装を作ってくれた。
布で顔を隠したシャーロットと、僕は念の為ガーネットに変身する。
間を開けて僕たちはそっとホテルを抜け出した。
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夕食をとったレストランの近くに戻り、ハトホルが出てくるのを近くの店で待つ。この国の紅茶は砂糖がたっぷり入っているらしく、甘いアイスティーが出てきた。
「それにしても襲ってみるとか、発想が物騒だなーお前」
「韻を踏まないでちょうだい」
どれほど時間があったのか、人通りが少なくなってきた頃、ハトホルと、楽隊たちが店を出てきた。
「よし……。ガーネット行くぞ」
「ええ。シャーロット、あなたは見つからないように離れて見てて。無理そうならすぐ逃げるから、後からついてきてね」
「了解した」
衣装や楽器を抱えたハトホルたちを尾行し、町外れまで歩く。充分な広さを確認し、ロッドを取り出す。
「よし……。人の形となれ……変われ!」
ゴーレムの肩に乗り、一行の前に立ちふさがる。
「な、ななな何者だ!?」
「見ればわかるでしょ、盗賊よ。金目のモノを置いていきな」
なんだ女かと一行は剣を抜いた。
「ふん……」
ゴーレムに命じ、高くジャンプする。
ズズン……と、道にひび割れができた。
「命が惜しかったら引け。そこの踊り子、宝石のひとつやふたつ持ってんでしょ」
「私をハトホルと知っての狼藉か」
「国一番の踊り子でしょ。素敵なステージだったわ。魔法使いみたい」
「……」
「エメラルドを持ってるんでしょ?」
「さあ知らないわね」
「手荒なことはしたくないんだけど……仕方ない」
ロッドで槍を描いて、頭上で大きく振り上げた。
「精霊に命ずる、刃を降らせよ」
氷の刃を空から降らせる。空気を切り裂く風が砂を巻き上げる。
「うわわわッ!?」
「に、逃げろ!!」
その氷刃の鋭さに、一行は四方に逃げ出した。
「仲間が傷ついてもいいのかしら? アミシ」
「何故、その名前を? それに何故私がアミシだと思う?」
「銅の国の神官に占ってもらったの。古代の女王のエメラルドを探している。……あなたが何者でも関係ないの」
「ふーん……。なるほど」
仲間たちが隠れたのを見渡し、ハトホルは両手を空に突き上げた。
「どうしてみんな私から、何もかも奪おうとするのよ!!」
手首につけられた鈴の音が鳴り響いた。すると、上空から、串のような石の柱が落下してきて、ゴーレムの頭を砕いた。
「きゃあああああ!」
思った以上に強力な攻撃に、本気の悲鳴が出る。
「逃がさないわ」
「……それはどうかな?」
ロッドを振り、さらにゴーレムを出現させる。
「こんなものじゃないでしょう? もっと本気を見せて」
「……賊風情がッ、後悔するなッ!」
鈴を鳴らす度に、上から、石柱が次から次へと落ちてきて突き刺さる。頭に直撃したら、即死だ。
「……あらあら、強盗? 踊り子さん、助太刀するわよ」
聞き覚えのあるリリーの声がして、顔を上げた。
「こんなものでよければ、私も作れるのよ。強盗さん。逃げたほうが身のためよ」
地面の砂が、ゴーレムの形になる。砂がさらさらと落ちた後、襲いかかってきた。
「仲間がいたなんて、聞いてないわっ……」
逃げろってことか。せめて事前に話してくれたら良かったのにと舌打ちをする。
リリーのゴーレムの攻撃は単調で、戦意がないことはすぐわかった。
「ムリムリ、勝てっこないわ。退散よ」
ゴーレムの拳で、地面を殴った。
「うわっ!? げほッ……っ! 待ちなさいっ」
砂埃に、ハトホルとリリーが立ち止まった間に、その場を離れた。
ホテルに戻る途中、シャーロットと合流する。
「ガーネット大丈夫か」
「ええ。でもこれで間違いないわ。彼女が、女王アミシよ」
砂漠とかオベリスクとか、遊戯王好きだったのがバレてしまうな




