第77話 魔力の源
夜明け頃、目が冷めてしまった。横で眠るガーネットに布団をかけ直し、宿を抜け出した。
「リリー、どこへ行くのよ」
「裏山まで」
心配だからと、黒百合も一緒に裏山まで付いてきた。
闇の中を箒で飛ぶ。山頂は開けていて、オレンジに染まり始めた水平線を見渡せた。
宵闇は次第に明るみ、青に変わっていく。
「あの子、アキラって呼んでも返事をしなかった。石の力に、持ち主の心が、奪われることがあるのかしら」
「ないとも限らない。まあ、あんたの祖母はそんなことなかった。私の力を対して使わなかったから。リリー、私に乗っ取られるとか思ったことないでしょう」
アキラは、魔女に変身しても、アキラとしての意識を失うことは、今までなかった。
アメジストから呼び出した神である、黒百合の女神をずっと一緒にいるが、彼女は決して私を支配しようとはしないだろう。
そんなことをする必要がないからだ。
アカネとレッカは、それぞれ石を必要とせず、炎の精霊を使役していた。
「アキラはガーネットの力を使い続けていたら、魔女から戻れなくなるかもしれない」
夜が朝に変わるように、徐々に自分を失ってしまうのではないか。
「別にいいじゃない。クラウスを見つけるまで大切にして使ってやればいいわ」
時間が経ってガーネットに支配されるなら、それまでのことだと黒百合は笑った。
「あの子が、完全に魔女になってしまうかは、あの子の問題」
「冷たいじゃない」
「アンタは? リリー」
「なによ、私が優しくないっていうの?」
最近の自分の態度を振り返る。
温泉に入って、海鮮丼食べて、マッサージ受けて、寝る。
アキラが他国の政治に介入していたが、エメラルドを探すためだと放っておいた。労りの言葉をオマケ程度にかけて。
「……そうねえ……。うーん。優しくなかったかもしれないわ」
あの子は私を裏切らないと安心しきって利用してきた。
子供ではない、向こうも解っていながら付いてきているのだと、優しさの上にあぐらをかいて。
「あの子がいなければ、クラウスが人形にされている可能性に気づけなかった。アカネとレッカにエメラルド探しを手伝ってもらうことも」
認めざるを得ない、村娘のへなちょこリリーとは違う。本物の魔力の源を、あの子は知っている。
誰かを救うために力を尽くす優しさ。それこそが、魔法。
私がどこかで落として、失ったもの。
「強くならなくては。私も」
土塊を両手に取り、力を込める。
できるはずよ。私はリリー・ロック。
「暁の魔女が精霊に命じる、人の形を取り我に従え……変われ!」
手のひらの土が人の形になり、周囲の土を巻き込んで、背丈3メートルほどのゴーレムが完成した。
「まあまあね。でも、リリー、もっとできるでしょ?」
「えっ」
「だから、あんたはへなちょこだっていうのよ。100体くらいバーンと作って見せなさいよ」
ゴーレムを作るならこんな風に、と黒百合の女神は、木に手のひらをつけた。
「一個一個なんて、とろくさいことしてないでよね」
バチン、と音がして、大地が揺れた。
木の幹を伝わって、エネルギーが揺れるのがわかった。
たちまち、最初に作ったゴーレムと同じ大きさの物が5体出来上がった。
「……あー、そんなやり方もあるのね。わかったわ。残りは私が」
アメジスト色の巨大なゴーレムは、朝焼けの光の中で輝いた。
合計100体のゴーレムを作り上げ、その肩に飛び乗る。
「これでいつ、戦になってもだい、じょう、ぶ」
短めですが、アップしちゃいます。せっかく自宅待機なので。
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