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【完結】へなちょこリリーの大戦争 ~暁の魔女と異界の絵師~  作者: 水樹みねあ
第七章 海の向こうへ~銅の国カルコス
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第67話 楽しいゴーレム作り教室

神を作ろうとする心理ってなんだろうね

67



「神になるだって……? どういう意味だ」

 話に乗ってきたぞ。

 ロッドを取り出して、一歩下がる。


「ゴーレムの作り方を教えてあげる」


 ロッドで宙に絵を書いて、ゴーレムを出現させる。

 前回より大きく出来た、3メートル程度の紅く輝くゴーレムは、レッカの興味を引くには十分だろう。

「作り手の言うことを聞くわ。土木工事でも戦でも、人を使わずに済む。力持ちの便利な兵士になるわ」

「……こんなものどうやって」

「焦らないで。炎の精霊を呼び出していたわね。出会ったときに、リリー様を探してくれたでしょ、誰から使い方を教わったの?」

「この国の女神からだ。誰にでも使えるわけじゃないから、素質がある者が、選ばれる」

「それなら、簡単ね。まず炎の妖精を呼び出して、仲間を呼んでもらうの。わかりやすく最初からやるわね」


 ガレおいで、とロッドを振る。

 ふわりとガレが上空から降りてくる。

「大地の妖精を呼んで」

「了解した」

 僕のまわりに、金色の羽をもった妖精たちが現れた。


「人の形となれ……変われ!」

 周囲の土が盛り上がり、ゴーレムを3体生成した。

 

「妖精の力を借りるから、術者が疲れることはないわ。魔法を解除するまで命令を聞いてくれる」

「……」

「圧倒的な力で、アカネを守ってあげられるわ」


 先程までの疑っていた様子は消え、瞳がキラキラと輝いている。

「私はあなたの味方よ。さっ、練習しましょ」



 

 

「レッカ、いつまでちんたらやってるの。神官が、妖精ひとつ操れないなんてなさけない」

「こっちだって必死にやってんだ!」

「……必死さが足りないって言ってるの」


 僕の本気を見せてあげる。

「試してみたかったの。妖精の力がどれほどのものか。魔女になるってどういうことか」

 全力を出して、宙に絵を描く。

「これが今の僕の全力……! 変われ!」


 周囲の土を一斉にゴーレムに変化させる。

 20、30、50を超えたところで、がくんと力が抜けた。

 ガーネットの濃い赤色の兵団を出現させることができた。

 

「……すげえな……!」

「……素人の魔女でも、ここまでできる。神官のあなたなら、もっと強力な兵を作り出せるわ」

「おい、血が出てるぞ」

 ロッドを握りしめた手から、一筋の血が流れ落ちた。

 女の子の肌はだめだなあ、柔らかくて。

 レッカが何か呪文を唱えると、その傷はすぐに消えた。

「……ありがとう。優しいのね」

「このくらい普通だろ。なあアンタ、なんで、ここまでする? 他国のアンタには関係ないことだろう」

 お前たちを利用したいだけだと、とても言えない。


「私はリリー様にお仕えしてる。彼女の国の、王子がさらわれた」

「その王子はどうなった」

「……取り返すわ。それがリリー様の望みだから」


 リリーの望みであって、自分の望みではない。

 誰よりも自分が解っている。

「おい、泣くなよ。オレがいじめたみたいだろ」

「……えっ……」

「辛そうな顔、してる」

 ああ、辛いよ。

 彼女の願いが叶ったら、僕の願いは叶わない。

 このままでは終われない、そんな未来を受け入れるなんてまっぴらごめんだ。

 日が沈み、巨大な兵の影が闇に溶けた。

「私があなたたちを助けてあげる。だから、協力してほしい」

 黒百合の女神は、味方を作れと言っていた。

 それは僕の力のひとつだ。

 神だって作ってみせようじゃないか。生きたいように生きなきゃ、やりたいことをやらなきゃ、生きてる意味なんてないじゃないか。

 好きな人といられないなら、意味はない。

 そんな毎日なら、死んでいるのと同じことだ。


「変えたい未来があるの」 

「……アンタにはアンタの事情があるんだな。これほどの兵を一瞬で作れるんだ、アンタはリリーのために戦ってんだな」

 レッカの指が僕の頬の涙をぬぐった。

「さっきは悪かったな。今のアンタは、悪い魔女には、思えない」

「……騙されてるだけかもしれないよ?」

「いいさ。騙されてんならオレはその程度ってことだろ」

 夜の闇が森を覆い隠した。

「……大地の精霊よ、オレに従え!」

 深いところからの振動が伝わる。周囲の土が形を成し、レッカがようやくゴーレムを作り出すことに成功した。


「銅の国カルコスは、アンタに協力する。城に戻ろうぜ」



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