表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】へなちょこリリーの大戦争 ~暁の魔女と異界の絵師~  作者: 水樹みねあ
第七章 海の向こうへ~銅の国カルコス
63/155

第61話 出港の夜

第7章始まります

61


 冬が近づくラウネルを出て、2週間が過ぎ、僕たちはメリリャの港に到着した。シャルルロアを更に南に下った、大陸の端の港町だ。

 夏のような日差しの、晴れ渡る空と青く輝く海。白い帆船が居並ぶ港に、森の中の村から出てきた僕は自然と歓声を上げた。リリーもずっと機嫌がいい。


「大きな船ですね……!」

「3ヶ月乗るのよ。高い部屋にしたけど、船酔いはするだろうから、薬を買わなくちゃね」 


 乗船券を予約し、自分たちの荷物を預ける。

 食べ物は船が用意するが、服や薬は用意しなければならない。


 黒百合の女神のドールハウスを部屋に預けて、港町で買い物に出た。

 リリーは、船酔いの薬になる各種ハーブを買い込み、酒やお菓子、缶詰など予備の食料はシャーロットと僕で買い集めた。

 ひまつぶしになるようにと、本屋に立ち寄る。彼女が買い込んでいたのは、裁縫や編み物の本だ。

 僕は落書き用にノートと、インクを買い込み、店を出た。


「そういえば、アキラは絵が得意だったわね」

「少しですけどね。いつかリリー様を描かせてもらってもいいですか」

「ええ、いいわよ。今まで忙しかったものね」


 出港したら僕とリリーの物語を書き留めておこう。

 部屋に荷物を運ばせて、船の中を見て回る。

 メインデッキから見上げる帆は首が痛くなるくらい高く、陽の光を受けて輝いている。

「素晴らしいでしょう。船旅は初めてですか」

「あっ、ハイ、あの……」

「この船の船長コンラッドと申します。朝日や夕日を浴びる帆船は帆の影を水面に映し、満点の星を見上げれば、過去の冒険者たちに想いを馳せることができるでしょう。

旅をしたら、また乗りたくなる。さあ、中もご案内しましょう」

 

 そう言ってコンラッドは船を案内してくれた。

 船内に入ると、ピアノとハープが置かれている。


「海の神々を怒らせないように、時々、演奏するのですよ」


 さあそろそろ時間ですよとコンラッドが促す。


 ぞくぞくと他の客が乗船してくる。

 着替えなさいと、リリーに呼ばれ、部屋に戻った。

「出港したらパーティーがあるのよ。綺麗にしないとね」

 リリーに髪をセットしてもらい、港で大量に買い込んだ新しいシャツとズボンを着せられた。リボンタイはリリーの趣味なのかな。

 ドレスコードがあるのか。


 歓迎パーティーの船長の挨拶と音楽、乾杯をして、僕の初めての船旅は始まった。

 夕暮れの海に滑り出した帆船は、あっという間に港を出て、外海に出る。 


「楽しんでる?」

「……うわぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 いつの間にかドールハウスから出てきたのか、黒百合の女神が、ワイングラスを片手に、僕の背後に立っていた。


「びっくりした!!」

「そんなに驚かなくっていいじゃない」

 ひとりふたり増えたってバレやしないわよと、平気でワインを飲んでいる。

 夜の海の水面に、パーティーの松明の明かりが反射している。

 黒いドレスの黒百合の女神は、上機嫌で、リリーのグラスにもワインを注いでいる。


「銅の国は、私も初めてかもしれないわー」

「そうなんですね、銅の国ってどんなところなんですか」

「カルコスっていってね。銅の産出で栄えてる国よ。あとは食物を作ってる」

「……黒百合、お姉さんたちの国なんですよね」

「そうよ。金と銀、銅の姉さまたちは、私よりずっとずっと前に生まれた」


 銅の国カルコスは、金の国と銀の国に食物を輸出している。おだやかな国民性と、勤勉な人々が暮らす国だと説明してくれた。


「世界は、最初は、私達の一族が治めていたわけじゃなかったの」


 リリーは、テーブルで確保していたハムをもぐもぐと食べている。相変わらず偏食だな。

「黒百合、続けて。世界の始まりの話なんて、私にしてくれたことなかったじゃない」

「あら、聞かなかったじゃない」

「自分のことは話さないじゃない」

「あんたも同じだけどねてか。まあいいわ。私の母と会ったでしょう。母はあまり人間に興味がなくて、娘を三人つくり、三等分して治めさせた。

やがて、それぞれの女神に従う者たちが勝手に別れて、自然に国が出来上がった」


 食べ物を与え、知恵を与えた。勝手に生きていけるように、干渉し過ぎないように。


「カルコスが食物の提供を拒めば、他の国は滅びてしまうから、三国の間は平和が保たれていたの」

「……過去形なんですね」

 リリーがワインを次々と開けている。皿に盛ったハムとチーズの山がいつの間にかなくなっていた。

 船酔いしないのかな……?

「この均衡を壊したのは、ダイアモンドナイトね」

「正解よリリー」


 ランズエンドで暮らしていたその頃、ダイアモンドナイトが、自分の国が欲しいといい出した。

 それなら、姉たちのもとへ行き好きに暮らせと、ダイアモンドナイトは故郷を出された。


「私は面倒だから、地元での実家暮らしを継続したかったんだけどね、一緒に放り出されたのよ」

「……じゃあ、もともと3つだった国に、さらに2つ国を作ったんですか」

「そう。私を頼ってくる人間たちが増えてきて、集まってきたから食べ物を与えて近くに住まわせた」

 まあ食べなさいよと、黒百合の女神は、僕の口にソーセージを突っ込んだ。


「ラウネルは、隣国と戦が耐えなかったから、いつも死体が転がっていたわ。沼地だった土地をならして、花を咲かせて、

他国に攻められないように森と川を配置したわ。人間たちに頼まれたから」

「頼まれた?」

「ええ。で、湖のあたりに町を作った。それが旧ラウネル王国よ。それから人間が勝手に増えて、私のために神殿を作ってくれたわ」


 それで神官の旦那さんを堕落させたわけですね。

 鳥の手羽先にかじりついていたリリーが、口をパクパクさせた。 


「忘れてたけど、黒百合の女神って、本当に女神なのね……」

「僕もそう思いました」

「あんたたち、私に対する尊敬ってものがないわよね。まあいいけど」

 おそらく、旧ラウネルの人々は、黒百合の女神の力を借りるのに長けていたんだろう。


 銅の国の女神に、なんとか、ダイアモンドナイトを殺してもらうことはできないだろうか。

「……銅の国の女神は、……お姉さん、なんですよね」

「ええ、そうよ」

「彼女に、頼めませんか」

「ダイアモンドナイトを殺せって? あの子も姉さまたちにとっては『妹』なのよ?」

「僕たち人間には、神を殺すなんて荷が重いです。相手が人間ならともかく」


 シャルルロアの女王は人間だ。どうにでもなる。クラウスだってそうだ。

「……アキラ、でも、やる気だけはあるのね。こんな虫も殺せないような顔をして」

「……僕ができることは、あまりありませんけど……」

「だから、私達にやらせるってわけね。賢い子ねえ」

「以前、味方がいないなら作ればいい。力がないなら借りればいいと、言ってくれたのは、黒百合あなたでした」


 一番、僕に協力的な黒百合の女神の機嫌を損ねるのは得策じゃない。


「提案なんですけど、返品できませんかね」

「へ、返品!?」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ