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第50話 最果ての地・ランズエンド

お待たせしました、2ヶ月ぶりの更新です。

50

■ 最果ての地・ランズエンド




 吸い込まれそうな群青、白い花が咲く木々。

 草いきれに包まれた頭を起こすと、一面のたんぽぽが大地を覆っている。

 気温は真夏のようだが、咲いている花は春のものだ。どうなってるんだ?


 立ち上がると、海が見えた。

 白い砂浜に繋がる、高い高い白い岩の切り立った崖が、まるで人影のように連なっている。


「ここはランズエンド。最果ての地」

 

 黒百合の女神が、風になびく長い黒髪を押さえている。

 ドレスのすそが翻る強い風。

 空が近い。

 眩しい陽の光が降り注いでいる。

 忘れかけていたが、彼女は女神だった。


「ここが私の故郷」


 帰郷したというのに、彼女の表情は暗い。

「親御さんはどちらに」

 女神の、さらに母親に会う。我ながら大胆な依頼をしたものだと思う。

「ねえ会わせなきゃ駄目? 私、母様苦手なのよ」

「そのために来たんです。ねえリリー様」


 リリーは寝っ転がったままて空を見ていた。

「天国じゃないのね」

「天国でもなんでもないわ。ここは人が暮らすには何もないから、人間が寄り付かないだけ。ただの忘れられた島よ」

「そうね。……でも、空が近いわ。死んだのかと思った」


 リリーが立ち上がって背伸びをした。

 どこか淋しげな横顔は、明るい陽の光に照らされてよく見えない。

「親が生きてるなら、幸せじゃない。お母さんに会いに行きましょう」

「えー……」

「いいじゃない。どうせ何年も会ってないんでしょ。私なんて覚えてもいない。産んですぐ死んじゃったから」


 じゃあついてきなさいと、黒百合の女神は滑るように歩き出した。

 いつもソファで寝てるか、なにか食べてゴロゴロしている姿しか見たことがなかったから、風のように進む彼女の姿は新鮮だ。


 森の木々は白い花をつけている。つぼみはほんのりとピンク色で、見覚えがある。

 地面はたんぽぽで覆われていて、黄色いじゅうたんのようだ。

 日差しはあたたかい。

 地上は秋だというのに、ここだけ守られているような温かさだ。


「これ、りんごですね」


 白い花が世界を覆っている。咲き誇る姿は、母の故郷のりんご畑を思い出させた。

 といっても、畑ではないようだ。

 りんごの森を抜けると、白馬が現れた。

「あら迎えにきてくれたのね」

 黒百合の女神がたてがみに触れると、また別の馬が現れる。


「増えた」

「乗りなさい」


 リリーの馬に乗せてもらい、彼女の腰にしがみつく。森を駆け抜けると、急に視界が開け、石畳みの道が丘に続いていた。

 振り返ると、海が見える。海まで続く道は人間が整備しているんだろうか。鐘の音が鳴り響く。一斉に鳥が飛び立った。

 人が暮らしているのか?

「さあ着いたわよ」

「教会……?」

 扉が開くと、ひょっこりと神父が出迎えた。

 彼は軽く手をあげて、「おかえり」と微笑んだ。

「ただいま。紹介するわ、私の夫よ」

 旦那さんがいたんですね。……ん!?


「……結婚してたんですか!?」


1月は入院してたので、これからは更新速度早くしますね。

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