第131話 ラダームブランシュ山の戦い
131 ラダームブランシュ山の戦い
竜のハープが鳴り響き、シャルルロア兵は方向を変えた。一斉にリリー・スワンへ殺到する。
「バカな……! こんなこと……」
ダイアモンドナイトで応戦しているが、多勢に無勢。時間の問題だろう。ハイラが、
「ガーネット、トレニア、退こう。時間は十分稼いだ」
と退却を促した。
その頃、リリーはラダームブランシュ山の地下に入り込んでいた。黒百合の移動魔法で一瞬で奥にたどり着く。凍てついたクレバスの更に下は、火山の熱を感じる空間が広がっていた。
ぽっかりと開いた空間に、繭のような巨大な石が、浮いている。
「石の中にいるって言ってたわね」
なるほどなるほど。
これは、人間の手によるものではない。
手元にあるのは、銅の女神カルコス、サファイアのヴィアベル、ルビーのラトナ。
エメラルドはトレニアが所持している。
そしてアキラが持つガーネット。黒百合の女神のアメジストはあるが、彼女は今アキラについて戦っている。
点々と同じ距離に女神たちの石を置いていく。
「私達の名前を呼びなさい。力を貸してほしいというのなら」
「名前……」
それぞれの名は教えてもらっている。
黒百合の女神の名前は?
……知らない。
ずっと昔から、『黒百合の女神』と呼ばれていたと言っていた。しかし、彼女の姉たちは、それぞれに真名を持っている。
銅の女神カルコス、海の女神ヴィアベル、エメラルドを持つ砂漠の女神ベリロス。
……末娘の名は、なんだ。
彼女との信頼を築けていなかった事に気づく。
ドゴォォォォォォォォン!
その時、大地が揺れ、地中の岩盤が崩れ落ちた。
「あなたたち、なにをしてるの」
「……あなたは?」
「私はブランシュ」
ラウネルが襲撃された夜、ダイアモンドナイトに乗っていた子供。
覚えているわ。
冷静に冷静に、と言い聞かせる。
「リリー・スワンのお友達ね」
「そうよ。その石にさわらないで」
「こんな大きい石に、触られたからって何よ。……何が入っているのかしら」
「わるい人よ」
あなたも入れてあげる、と手を掲げた。指輪から放たれた光があたりを包む。
「あぶねっ」
事前に用意しておいた鏡を、盾の大きさにして光を跳ね返した。反射した光を浴びても、ブランシュには効果がないようだ。
「あなたが連れて行ったクラウスはこの中?」
「そうよ。お友達の邪魔になるからおかたづけしたの」
「……OK、そこ座りなさい。殺してあげる」
小柄のブランシュにヴィアベルの鉾はなかなか当たらず、焦る。ブランシュは自在にダイアモンドナイトを操り、直接リリーの腕を折ろうとしてくる。
「おわっ! あぶないじゃない」
「リリーの敵はみんな捕まえて閉じ込める。逆らうならあなたもよ」
……来る。
同じ手は効かないだろう。
「……死んじゃえ!」
「お前がね!」
ラスボス戦が始まりました!
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