第106話 幽霊船退治
幽霊船を焼き払います。なおハイラとメキラはメキラ×ハイラになります。
106話 幽霊船退治
幽霊船という以上は、幽霊が動かしているのだろう。
「こんな昼間からか」
「前から噂が絶えない、オレはその退治に来た」
ハイラは望遠鏡を覗き込んだまま、答えた。
「退治……? 何故?」
「友達が、乗ってる。助けなければ……」
水平線を揺らめく幽霊船は、今乗っている船と大差ない。マストから垂れ下がった帆が、風に煽られてはためく。
「ハイラ、手伝うぞ」
「はあ!? カイン、あんた王様なんだろ?!」
「幽霊船に船を沈められたら意味無いだろう。国に帰らないといけないんだ。なんにせよ、友達が乗っているというなら放ってはおけないだろう」
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詳しく聞かせろと袖を引っ張ると、
「私も聞きたい」
とアイフィアも首を突っ込んできた。
「……乗っている友の名前はメキラ。海峡を彷徨う幽霊船退治のために、一緒の船に乗っていて……、その船が沈んだ。オレは助かったが……」
港町で、用心棒を続けながら、メキラの帰りを待った。
「数カ月後、例の船の目撃情報が次々とあがった。今いる、ワイルドアデン海峡、このあたりで」
「船乗りたちが「死者が操っている」と教えてくれた。もともと荒い海だ、乗せてくれる船が少なくて、幽霊船は見つからなかった。だから、カインあんたが船を出してくれと言った時、チャンスだと思った」
「人が幽霊船を呼んだような言い方するな」
「ははっ、すまない。でも感謝している」
見ろと、ハイラが幽霊船を指差した。遠くにいたと思っていたが、凄まじいスピードで突っ込んできた。
「オレはあいつを助けたい。ソンビになってるかもしれないけど……。来るぞ!」
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衝突音が響き、幽霊船から明らかに生きている人間ではない水夫たちが攻撃してきた。
「化け物だ怯むな!! たたっ斬れー!」
エデルが水夫たちに命令をし、斧で応戦する。
「ゾンビってやつか」
かつては生きていた人間だったであろう者たちの襲撃は、単調だが力が強い。みすぼらしい服装、腐りかけの腕から繰り出される一撃は重く、必死でかわす。エデルたちが切り払っては海に投げ入れていく。
ハイラに付いて走ると、船首に一人だけ、まるで新品の鎧に立派な槍を構えた戦士が立っている。
全身を包む黒い靄が、守っているように見える。
「あいつがメキラだ。カイン、オレが矢を当てるから火を!」
「友達なんだろう!?」
「大丈夫だ」
矢を番えたハイラが、戸惑うことなく、前に飛び出す。気づいたメキラは無言のまま、突進してくる。
「今だ」
速射でメキラの足を甲板に縫い止める。その矢に炎の魔法をぶつけ、燃え上がらせる。
「すごいコントロールだな王様!」
「そっちこそ!」
メキラを包んでいた黒い靄が、炎の勢いで消えていく。
ふらりと倒れ込んだメキラを、ハイラが支えた。
「……う……ッ」
「しっかりしろ、オレだ!」
まさか、生きているのか?
てっきりゾンビになったものだとばかり。バシバシと頬を叩いている。
「……痛……、ハイラ……か……?」
「良かった、話はあとだ」
「……助けにきてくれると、信じていた」
肩を貸し、ハイラとメキラが立ち上がった。
「おーい、そっちは片付いたか」
アイフィアが剣を鞘に収め、駆け寄ってきた。
甲板の上のゾンビは一掃されている。
自分たちの船へ戻ると、ハイラが帆に火矢を放った。
そして、なにか異国の呪文をハイラとメキラが唱えると、幽霊船は光に包まれて消えていった。
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ひとつ気になることがある。数ヶ月、幽霊船にいたのに、なぜメキラは無事だったのか。とても食料がある状態ではないと思うのだが。
「どうも、ゾンビに襲われた者は、同じようになってしまうらしい。だらか、オレもゾンビの仲間になってしまっていたから、食事を取らなくても死ななかったのだろう」
しかし、つい数分前まで、ゾンビだったというのに、ケロリとしている。
「さっきの呪文みたいなのは……?」
「あれは経といって、教えを説いたものだ。ああ……、カイン、あんたたちの国の神々とは違う、仏にお仕えしている」
「ほとけ……?」
「もともとは人であったが、迷いの世界を越え、真理を体得した方だ」
ハイラとメキラの説明はよくわからなかったが、我々の知るものとは違う特殊な力を得ているらしかった。
ゾンビになっていたというより、仮死状態だったのだろう。
「彷徨う幽霊船の魂を鎮める命を受けてここまで来たが、幽霊船に囚われてしまった。ありがとう、おかげで任務を遂行できた」
とメキラは頭を下げた。




