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【完結】へなちょこリリーの大戦争 ~暁の魔女と異界の絵師~  作者: 水樹みねあ
第9章 雪と氷と呪いの女王~ヴィルガー王国編
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第105話 大海原へ

外洋に出ます。多少BL要素あります。ほんのちょっとです。

105話 


 港に着くと、エデルが待っていた。それにもうひとりいる。赤い髪に、細身の身体に簡易な胸当てをつけている。

「オレはハイラ。こないだ酒場で人を集めてたの見ていたよ。オレも同行させて欲しい」

「それはありがたい、ちゃんと到着すれば礼は払う」

「ありがとう。あと、図々しいお願いになるんだが……、無事にラウネルについたらオレに仕事を紹介してくれないか?」

 ハイラは背中の弓矢を示し、

「猟師だったが、別の国も見てまわりたい」

 と笑った。

「弓兵としても猟師としてても構わないなら」

「ああ。よろしく王様」

 しっかり見つめて握手をしてくる。こいつにはぜひ生き残って欲しい。


 船に乗り込むと、「兄上!!」と呼び止める声がした。

「レイフィア」

 アイフィアが身を乗り出して答えた。

「兄上、必ずお戻りを」

「ああ。戻って、必ず呪いを解いてみせる」

 ひょいと、私の腰を両手で掴んで持ち上げた。

「うわっ」

「私はカインを信じる。お前も、我らの無事を祈れ」

「……わかりました。兄上、カイン、どうか無事で」

 桟橋からレイフィアは私に向かって頭を下げた。



 錨を上げろー! とエデルの声がする。

 レイフィアに手を振り、アイフィアは私の手を取った。

 貿易で使われている船だが、外洋の、遭難が多い航路となるだけに、食料や水はヴィルガー王国が用意した。船室に入ると、ハイラが「腹いっぱい食っておけ、外洋に出れば吐く」と料理を持ってきてくれた。

「いいか、吐けば体力がなくなる。船は揺れて、寝ている間もふっ飛ばされるし、衰弱して死ぬ場合もある」

「わかった食っておく」

「あと、寝るときは紐でお互いの身体を縛っておくんだ。カイン、あんたは小さいから、転げ落ちて頭を打つ可能性もある」

 ベッドには柵が取り付けられ、長いクッションがくくりつけられている。

 きらきらと輝く水平線を頼んでいたのは最初だけで、港から外洋に出ると景色は一変した。

 

 どこまでも続く灰色の空に、高い波が船を揺らす。

 ハイラに教えられた通り、アイフィアはベルトに縄を通し、ベッドの柵につないだ。そして、私の腰の縄をつないだ。

 重さのある布団に二人で潜り込む。上下に揺れる状態がずっと続き、横になっていてもなにか不安定だ。

「カイン、狭いだろうが私に捕まれ」

 アイフィアの胸にしがみついて、揺れに耐える。布団の中で彼の暖かさにほっとする。兄が生きていた頃だって、こんな風に守られていると感じられなかった。

「……アイフィア」

「ん」

「抱きしめてて」

 離さないで。

 彼の手が頬を撫でて、「一緒にいよう」と口づけた。




 翌朝、ハイラが起こしに来た。

「おはよう、頭は打ってないか?」

「……」

 頭は打っていないが、常時視界が揺れて気持ち悪い。

「朝飯は食え」

「いらない」

「無理にでも食べろ、体力がなくなればどのみち死ぬぞ」

 言われた通りに、焼いたベーコンやパンを千切って食べるが、口にいれたそばから吐きそうになる。先に食べ終えたアイフィアが、私の口を手で押さえた。

「飲み込みなさい」

 吐き気をこらえて飲み込む。パンをひとつ食べ終わるのに時間がかかり、それだけで疲れ果てた。船酔い対策はとにかく寝ることだと、すぐに寝かしつけられる。

「なにかあったら起こすから」

 アイフィアに髪を撫でられて、私は眠くない目を無理矢理閉じた。


 どれだけ寝ていたのか、大きな揺れで目を覚ました。

 嵐だろうかと甲板に出てみると、水夫たちが水平線を指差して騒いでいた。

「カイン、来てみろ。幽霊船だ」






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