第101話 ヴィルガー王国編~カインとアイフィア
カインとアイフィアの出会い。ヴィルガー王国編スタートです。
「ラウネル王国は、私の兄ノアが統一した。だが、兄はすぐ亡くなってしまい、私が初代国王になった。その時、13歳だった」
なんと中学一年生で、王になったのか。
「隣国シャルルロア、そして長年の同盟国だった、ヴィルガー王国に挨拶に行くことになった。……私は、いつ身内から刺されるんじゃないかと、ヒヤヒヤしていたな」
船で、北へ向かい、初めて訪れたヴィルガー王国は、雪と氷に覆われた、真っ白い大地だった。
「黒い森から初めて出て、輝くような大地を目にして、私は、興奮していたんだと思う。兄に無理矢理、王などと重荷を押し付けられて、毎日うんざりしていた。……あの旅は、忘れられない」
うっとりと目を細めて天井を見上げる。
毛布にくるまった彼は、本当に……少年に見えた。とても90を過ぎて死んだ老人とは思えない。
「カイン様。続きを」
「……うむ。その時出会ったのが、アイフィアだった」
切り揃えられた銀色の髪に、アイスブルーの瞳。
毛皮があしらわれたロングコートを翻して、白い大理石の階段から降りてくる優雅な姿とは裏腹に、死んだような目をしていた。
『初めまして。新たなラウネル王』
ひんやりとした長い指に、結婚指輪が輝いていた。なんの感情もない、礼儀正しい挨拶だった。
「出会った瞬間にわかった、彼もまた自分の人生に希望を失っていると」
眼と眼が合った瞬間に、私達は恋に落ちたとカインはゆっくりと話す。
「……ん?」
「話してすぐに打ち解けた。私達は同じだった」
「カイン様。……男性ですよね」
「そうだ。心を奪われるとはああいうことだったんだな」
いや、論点はそこじゃない。
「彼の目に、真っ赤になった私が映り込んでいた。……だが、彼の目に光が灯るのを、私だけが見ていた」
雪と氷に覆われた宮殿を案内され、ガラス張りの温室の花園の中には色とりどりのガーペラや菜の花が一面に植えられていた。
「黄色の花びらやピンクの花が多くて、ここだけは一年中春なんだと……教えてくれた」
カインの口調は、その花園の空気まで感じさせるように、柔らかで、彼にとって幸せな記憶だったのだと思わせた。
「爪先までずっと温かくて、彼に触れられてからずっと……寒さを感じなかった」
うつむいたカインの頬は薄紅色に染まっている。
「彼の部屋の長椅子の上で、13歳だった私は恋を知った」
遅くなりましたが101話更新しました!
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