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【完結】へなちょこリリーの大戦争 ~暁の魔女と異界の絵師~  作者: 水樹みねあ
第9章 雪と氷と呪いの女王~ヴィルガー王国編
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第101話 ヴィルガー王国編~カインとアイフィア

カインとアイフィアの出会い。ヴィルガー王国編スタートです。



「ラウネル王国は、私の兄ノアが統一した。だが、兄はすぐ亡くなってしまい、私が初代国王になった。その時、13歳だった」

 なんと中学一年生で、王になったのか。

「隣国シャルルロア、そして長年の同盟国だった、ヴィルガー王国に挨拶に行くことになった。……私は、いつ身内から刺されるんじゃないかと、ヒヤヒヤしていたな」

 船で、北へ向かい、初めて訪れたヴィルガー王国は、雪と氷に覆われた、真っ白い大地だった。

「黒い森から初めて出て、輝くような大地を目にして、私は、興奮していたんだと思う。兄に無理矢理、王などと重荷を押し付けられて、毎日うんざりしていた。……あの旅は、忘れられない」

 うっとりと目を細めて天井を見上げる。

 毛布にくるまった彼は、本当に……少年に見えた。とても90を過ぎて死んだ老人とは思えない。

「カイン様。続きを」

「……うむ。その時出会ったのが、アイフィアだった」

 切り揃えられた銀色の髪に、アイスブルーの瞳。

 毛皮があしらわれたロングコートを翻して、白い大理石の階段から降りてくる優雅な姿とは裏腹に、死んだような目をしていた。


『初めまして。新たなラウネル王』


 ひんやりとした長い指に、結婚指輪が輝いていた。なんの感情もない、礼儀正しい挨拶だった。

「出会った瞬間にわかった、彼もまた自分の人生に希望を失っていると」


 眼と眼が合った瞬間に、私達は恋に落ちたとカインはゆっくりと話す。

「……ん?」

「話してすぐに打ち解けた。私達は同じだった」

「カイン様。……男性ですよね」

「そうだ。心を奪われるとはああいうことだったんだな」

 いや、論点はそこじゃない。

「彼の目に、真っ赤になった私が映り込んでいた。……だが、彼の目に光が灯るのを、私だけが見ていた」


 雪と氷に覆われた宮殿を案内され、ガラス張りの温室の花園の中には色とりどりのガーペラや菜の花が一面に植えられていた。


「黄色の花びらやピンクの花が多くて、ここだけは一年中春なんだと……教えてくれた」

 カインの口調は、その花園の空気まで感じさせるように、柔らかで、彼にとって幸せな記憶だったのだと思わせた。

「爪先までずっと温かくて、彼に触れられてからずっと……寒さを感じなかった」

 うつむいたカインの頬は薄紅色に染まっている。


「彼の部屋の長椅子の上で、13歳だった私は恋を知った」

遅くなりましたが101話更新しました!

2021年もよろしくお願いいたします! 感想・ブクマ等お待ちしております……!! 

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