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俺の周りは絶望ばかりだ  作者: キノコ二等兵
日南休直史の周りは絶望ばかりだ
9/202

そんな理不尽な

 ───やはり、こいつにここは厳しいのかもしれないな───

 何の声だ・・・・・・聞いたことがある声だが、何か思い出せない。

 ───()にも出来たんじゃけえさ、問題ないじゃろ───

 ───あの~幾ら同じでも、育ちが違えば、屑さって違ってくるんじゃあ・・・・・・───

 口調が違うだけで、音声は殆ど変わらない。

 ───どうであれ、この者には無理だった可能性が高い。()はそう考えるが、()達はどうかね?───

 どうかなとか、確かにとか、少なくとも俺には何かの会議を行っているように思えた。部屋が暗いのかそれとも目が開いてないのかは分からないが、兎に角どこで話しているかまでは分からない。

 ───全員の意見を取り入れると、平凡にはまだ無理して貰うと言う結果が出た。文句はないな?ある者は挙手を───

 手を上げるときのすぅという音が微かに聞こえたら、反対者がいるって事だが、一切の音もない。つまりは誰も上げず、批判もしていないと言うことになる。それか、批判はあるが、それに変わる策がないから渋々従っているというのもありゆる。まあ、見えないから憶測でしかないのだが。


 ───以上をもってこの会議を終了する。全員平凡が助けを行うこと。勿論、自分の事を優先してもらう───


 話が終わり足音が聞こえるとともに、体が重くなり睡魔が襲う。結局ここが何なのかが分からないまま、俺はまた眠ってしまった。



 ─────────────────────────

 ─────────────────────────











 まぶたが重い。最近寝てなかったっけ?そんなことはなかったと思ったのだが、まあ、しっかり今の間で寝れたって事でいいか。

 まずは、確認しよう。ここは学校だ。ベッドが硬いし枕も硬い。俺の家はこんなに硬くない。そんで、ベッドがあるところは、保健室ぐらいだろうから、ここは保健室だ。絶望病で倒れた記憶はないし、その前に薬だって飲んでる。そんな状況で倒れるとは思えない。

 薄く目を開けると、周りはカーテンで囲われていた。風邪引いてもカーテン何て使われないのが普通なのに、使われているということは普通ではないことの証明だ。そうとしか言いようがない。

 カラーーーーとカーテンを開けると、少し離れたところに生徒がソファーに座って本を読んでいた。ブックカバーが付いてるが、サイズ的にラノベだろう。熱でも計っているのだろうか。

 とにかく、ベッドからおりぃ!?ぐぅぅぅ・・・・・・。

 左肺が痛い。とにかく痛い。さらに頭も痛い。薬を飲みすぎた後の症状に近い。ゴフォゴフォと咳をすると、血の混じった痰が出た。完全な副作用だ。

「おいおい、大丈夫か・・・・・・って血出てんじゃねえか。水でも飲むか?」

 ソファーで本を読んでいたのはコハルだったようだ。コハルが俺を心配してくれているって事は、俺の知ってるコハルなのだろうか。

 俺は、大丈夫だ。ただの副作用だと答えると、コハルはそうかと胸をなで下ろした。うーむ、やっぱり俺の知ってるコハルじゃねえな。って事は、まだここは俺の知ってる世界じゃないってことだな。

「あっ、そういや目が覚めたら校長室来いって教諭が言ってたぜ。そこまで送ろうか?」

「いい。1人で行けるし、お前も俺と一緒にいるとやばいだろ」

 俺が校内暴力を受けている以上、そんなやつの近くにいれば巻き添えを食うのは確実だ。それに、まだ信用できない点がある。コハル自身も俺に対しての暴力があったんだ。まるでそれを忘れているかのようで、少し気にくわない。台があったらバンバン叩きたい。だが、無駄な争いはしたくない。ここは抑えよう。

 まだ肺は痛いが、学校にいればそれだけ殴られる率だって上がってくる。さっさと校長室に行って帰ろう。その前にバイトがあるが。

「そんじゃあな、コハル。俺バイトがあるからさっさと行って帰るわ」

「あ、ああ。じゃあな」

 俺は、二階にある校長室へ向かうために静かに保健室を出た。もちろん、ここから先は地獄だ。他に誰もいないからコハルが俺を看ていたのだろうし、それにまだ時間的に校舎にいる生徒は多いかもしれない。味方がいない以上極力生徒および、先生などにもあわないようにしよう。それが今俺が出来る事だ。

 変に歩けば逆に目立つ。足音は平均程度、歩く速度も歩き方も一般的なものにすればいいはずだ。

 何とか誰にも会わずに階段は上がりきり、校長室の前にたった。1人の生徒に校長自らが話すことなんて普通は無い。それがあるって事は、今までの暴力についての事か、それとも別のことか。多分後者だとは思うが。

 俺は大きく深呼吸をしてからノックをし、俺の名前を言いつつ扉を開ける。

 中には当然ではあるが、校長だけがいて、他には誰もいなかった。

「いきなりだが、本題に入ろう。君はなぜ、ここに呼ばれたか分かるか?」

 何があったっけ・・・・・・?多分それが寝てた理由だと思うが。

「すいません。憶えてないです」

「ふむ・・・・・・そうか、よく分かった。日南休君、こっちへ」

 やっぱ憶えてないってはっきり言ったのはまずがったか。俺は校長の机の前に立つと、ある紙を渡された。裏返しになっていたので、表側を正面に出して読む。んと何々・・・・・・。

【本日を以て貴方を───】

 その先は読めなかった。否、読んだが理解出来なかった。

「は?」

「はとは何かね?それが事実だ。呼んだのなら、早くするのだね」

「ちょっと待てよ!いくらなんでも退学はないだろ!?せいぜい停学処分だろ!」

「生徒に手を出した。それ以外の理由があると思いかね?」

「そんなら、何で他の奴らはなんないんだよ。おかしいだろ!」

「他の生徒が暴力を振るったと言う事実はない」

 ざけるな。ざけるなざけるな。いくらなんでも理不尽だ。見ていなければやってないって事になんのかよ。

「これは決定事項だ。変更はない」

 俺は、何も言わず校長室を後にした。

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