目を覚ませ僕らの日常が侵略されてるぞ2
『声に関してはまあいいよ。慣れりゃあいいし』
「もう一ついいニュースがある。聞くか? 」
『聞きたい。俺の身体のことならもういいニュースじゃねえぞ? 』
「分かっている。身体のことならさっきのにまとめるに決まってるだろうが」
いいニュースというのはなんだろうか?
「声が女性っぽくなったから女装がしやすくなったってことだな! 」
『————————————ごめんなにいってるかわからない。おればかだからまったくわかんない』
「というのは冗談で」
『冗談ならもうちょっとまともな奴にしてくれ。少なくとも俺は怪我人なんだからさ』
軽く咳き込むと話を続ける。
「いいニュースは、インの安全だ。俺としては元から苦手な奴だからどうでもいいんだが、友達って言ったのが効いたんだろうな。ヒナヤスミの怪我も重なったのも大きいだろうがな」
身体の中が熱くなる。もうあんな顔を見なくていいって事だよな・・・・・・? 雨の中1人悲しんでいるようなことはないってことだよな・・・・・・?
包帯で右腕は分からなかったが、左腕は自然と震えていた。まだ関わりは少ないけれど、それでも助けた意味があった。
『そうか・・・・・・今インはどこにいるんだ? 』
「窓原たちのところだ」
『はあ!?なんで? 自分から殺されに行ってるじゃんか! 』
「その場に行ったわけじゃないから俺に言われたって分からん。次会ったらどうなっているのかねえ」
空から落ちてくる弾を撃って別方向に飛ばすとかふざけた事は出来るのに、なんで戻ったんだよ・・・・・・イン!
「お前の行動がインになにかを考えさせたんだろうな。友達っていうのが理解できたとか言ってたが」
『全然分かってねえじゃねえか・・・・・・』
「インからしたらヒナヤスミのやった行動が、そういう風に感じたのかもしれないなあ」
イン・・・・・・こりゃ生きなきゃいけない理由になっちゃったな・・・・・・。
左腕をベッドの側にあった杖に伸ばして立ち上がろうとすると、マスターが止めに入る。
『インのとこに行く。どうなってるか心配で夜しか眠れない』
「眠れてるじゃないか・・・・・・あいつらの事だ、どうせくる。お前は休んでろ」
『なんで俺が勝手に首を突っ込んだのに、向こうが来ることになるんだよ? 謝罪するのはこっちだろ』
「来てくれたところで謝罪すれば良いだろう。お前は絶対安静してもらわなきゃこちらが困る! 」
強く肩を掴んでベッドに戻される。左側はそれほどだったが、やはり怪我をしていた右側は痛みを訴えていた。
「痛みで顔が歪んでるのが見えるぐらい今のお前の状態は悪い」
『だって強く握ったじゃん肩を』
「俺は肩に触れるぐらいにしか触ってない! それなのにもかかわらず歯をくいしばるほどの痛みを訴えている奴になにができる? 寝てろ。いいな? 来たら起こしてやる」
ベッドから離れて扉の前に立ち一度こちらを振り返る。ちゃんと寝ているのを確認したマスターは部屋を後にした。
・・・・・・さてと、外に出ますかね。怒られるのは分かっているが、行かないと。
起き上がろうとまた杖に手を伸ばしていると、悪寒が背中側にある窓から感じた。あの象か・・・・・・?
ゆっくりと振り返る。そこにいたのは、あの時の少年だった。
『シュレ・・・・・・』
「やあ平凡君。元気してた? 」
『おかげさまでオレノカラダハボドボトダ! 』
「ああはいはい、すごいすごい」
『傷つくからそう言う反応辞めて』
「自分がされるような行動するからじゃん」
正論に正論を重ねるのはメンタルに響くから辞めちくりー。
窓に身体を出しながら声をかける少年。
『インたちから追われてるんだ。こんな総本山みたいなとこに来て大丈夫なのか? 』
「大丈夫じゃない」
『じゃあなんで来たのさ? 』
息苦しいのか服の首元を整えると軽く息を吐く。
「忠告だ。憤怒と温和には従うな。彼らは平凡君寄りのアレ側だから。君とアレが敵対する場合情けなしで君の敵に回ると思うよ」
アレ・・・・・・? アレってなんだ?
「知らないようならそれでいいんだ。俺——————いや、かぶるからこの一人称は辞めよう。せっかくだから君のつけてくれた名前にしよう。シュレで——————いちいちこんな状態にしてから話してるのは、君との会話に割り込まれない様にする為だ。向こうからすればシュレは死んだはずだからね。君が昔思った通り」
『ご苦労様です』
「どうも。彼らと別れて人間に近しくなったシュレは今までアレがやってきたことに違和感を覚え始めたわけだよ」
『しかし、いきなり言われてもな・・・・・・信用するなって』
「気持ちはわかる。だから気に留めておくだけで良いから意識はしておいて。もし違和感を感じたり、分からないことがあったら呼んでね。こんなよく分からない空間でしか君とは話せないけど、協力はする」
『信用するなって言うならお前も信用できないけどな』
本当のことを言っているとしても俺からすれば、憤怒たちの方が信用できる。だからシュレの考えも気に留めておく程度にしておこう。頭の中で話せてしまうのだから、シュレの話は漏れるかもしれないしな。
それはシュレの立場が悪くなるので、俺もそこに関しては注意しようと思う。
「自分が正しいと思うものを信じれば良いから。それじゃまたどこかで。また象さんに襲われない様にねー」
窓から落ちるように離れると、すぐに気配は消えて世界はまた戻った。
・・・・・・あの象コントロール出来ないのかよ・・・・・・。
俺はその答えに大きくため息を吐いた。




