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俺の周りは絶望ばかりだ  作者: キノコ二等兵
日南休直史の周りは絶望ばかりだ
8/202

理不尽な世の中

 教室へ向かう。もう覚悟は決めた。教師や他生徒、そしてヒナには頼れない。多少の怪我は止むを得ない。それが今の状況だ。次また俺に対する暴力行為がもしあったら、それ相応の行為で返す。学校にある物で無力化なんて簡単だ。一度でもそれを手に入れてしまえば、四対一までなら何とかなる───かもしれない。いや、ならないか。まず四対一にさせてくれるかが問題だ。最初はそうでも、周りの奴らが参入してきたらもう生きられない。首の一本位軽くなくなりそうだ。

 俺の教室がある三階の踊場で、もう一度覚悟を決める。吸ってぇ吐いてぇ・・・・・・。よし!行くか。

 薬を一気に三粒飲みながら残りの階段を上る。ここから先は戦場だ。どうやって武器を手にするかが、勝利の鍵だ。説得するという手段は、ある一定の有利さがこちらにないと多分出来ない。だから、まずは排除。説得はそのあとだ。

 階段を上がり最初の柱を曲がる前に、周りの確認をする。よし、殆どの生徒は飯か昼練でいないようだ。一、二、三!ダッ!

 柱から一気に飛び出て俺の教室へ向かう。コハルやセイエイの行動が今までと違うことを考えると、教室にいる可能性が高い。もちろん、ここで仕掛けて来ないのならそれが一番いい。喧嘩は先に始めた方が悪い。それが世の中だ。

 箒などの武器になり得る物を手にする時の理由は「自分の机の下が汚いから」とか言えば、疑われる率は減るはずだ。まあ、実際襲って来なければ、掃除をするだけで終わるだけだ。

 掃除ロッカーが抑えられていなければいいが。抑えられていたら、学校から逃亡すればいい。

 さあ、問題の教室だ。まずは、掃除ロッカーを確認、よし、抑えられてない。掃除するというカモフラージュの為に中から、プラスチック製の箒を取り出す。木製もあるにはあるが、折れるリスクを考えると、プラスチック製の方がいいと判断したわけだ。その前に折れるって俺の力でどうやって折れるような状況になるんだよ。壁に当てたってそう簡単に折れないのに。

 さらに追加でちり取りもだ。箒よりは小回りも利くし、何しろ尖っている。これはかなり大きい。これもプラスチック製を選ぶ。鉄製の方が絶対いいが、奪われたら対処のしようがない。

 道具を取ると、俺は自分の席のほこりやゴミを拾い始める。けど、思ったよりゴミあるなあ。消しかすとかシャー芯とか。こんな状況でまともな勉強が出来るはずがないのに、この量は多過ぎる。書いた量に比例してない。

 時々後ろを確認するが、コハル達の攻撃はない。目立つところでやりたくないからなのだろうか。朝、扉の前でやってきているのでそれはないか。それともここじゃあしづらい理由でもあるのか。

 テロテロリーン!何か来る。そう感じ席から離れると、コハルが目の前に立っていた。

「なんだよ、コハ・・・・・・ミケル。朝のこと謝りに来たのか?」

「はぁ?何で?てめえがいることが問題なのに、そりゃあねえよ。あといい加減コハルってミドルで呼ぶんじゃねえ」

「俺はお前からコハルって呼べって言われたんだがなあ。ざけんなよ。首一回折られたいか?」

「お前の病気知ってんだぜ?オレは。そんなお前がオレに勝てるわきゃねえだろ」

 この言い分だと、他の生徒には言ってないと思いたい。だが、選択肢としては消しておこう。喧嘩中に言いふらされたとしていたら、それでもう終わりだ。

「なんだよ。その目は、日南休」

「なんもねえよ。ただコハル、てめえを見てるだけだ。それともなんだ?目を合わせるだけで、喧嘩売ってるようにも見えんのかよ?」

「何度も何度もコハルと呼ぶなと言っている!」

「まあ、てめえがキレるのは勝手だが、俺はお前と喧嘩する気もないし、出来れば仲良くなりてえんだが」

 想定外の言葉だったようで、コハルは疑問を感じているように見える。やっぱり、俺の知ってるコハルではない事がこういう所からでも見える。

「まあ、ちょっとどけよ。掃除の邪魔だ」

「─────ざけんなよ。こんだけ虐めてんのになんも思わねえのかよ!?」

「そりゃあ、思ってるさ。さっきも言っただろ?俺はお前と仲良くなりたいって。まあ、朝のことは謝らないのはどうでもいいとして、虐めって分かってんならやめろよ。どうせ、今の俺が先生に言ったところで何の意味もねえけどよ。お前が一言でも自分がやりましたって言えば、それで罪悪感を持つ理由が無くなるだろ?」

 よし、揺らぎ始めた。あの時もこっちから許したから、仲良くなった記憶がある。最終手段を選ばなくてすむ道が来─────なかった。

「ぐっっが!?」

 コハルの鉄拳が右肩に炸裂する。かなり本気だろう。肩の形が変だ。

「ざけんなよ。ざけんなざけんな!なんでてめえはそうやっていつも上からオレを見る!オレはそんなに弱い奴かよ!」

 そんなに上から見ているつもりはなかったが、もしかしたらそう思えるのかもしれない。人との付き合いが少なかった俺のミスだ。俺が思ってる以上にコハルの憎しみは強い。

「・・・・・・すまねえな。コミュ障なもんで、人への話し方が下手なんだよ」

 肩がひりひりジンジンと痛む。だが、これは俺が悪いのでコハルには罪はない。

「っ・・・・・・まあ、先に言っとくが、俺が悪かった。何で怒ってんのか教えてくれないか?ミケル」

「そんなん自分で考えろよ。オレには答える義務もねえし、義理もねえ。あんのはてめえへの憎しみだけだ」

 少し痛みが引いたので、ゆっくりと立ち上がる。やることは分かってる。

「頼むよ。コハルっぐ!」

「だからコハルと呼ぶな!」

「だが、俺にとってはがっ!なぁ、お前はコハっば!コハルなんだよ。それ以下でもそれ以上でもねえ」

「なんでそこまで、コハルって呼ぶのにこだわる?自分が傷つけられてんのに」

「俺の最初の友人だからだ。それ以外に理由なんているかよ。たとえ、骨の一本や二本折れても、お前がもう一度俺を認めてくれるなら、俺は気にしねえ。簡単に言えば、ぼっち嫌だって言いたいだけなのさ。これはセイエイに対してもだ。俺はただ普通にお前らと学校行って、はしゃいで、それだけでいいんだよ」

「・・・・・・ふっ、馬鹿だな」

「やっと笑ってくれたな。コハル」

「呆れたんだよ。ほっんとてめえは馬鹿だ」

 一切の暴力もなくコハルを説得できた。だが、ここからだ。セイエイやクラスのみんなと、まだまだ相手はいる。けど、大きな一歩を踏み出せたと思う。

 仲直りした俺とコハル。そんなコハルの後ろから何かが来る。足元にあったはずの箒がない。コハルが奪っているのなら、蹴ったり殴ったりしたときに、追加攻撃としてきているはずなのだ。それがないって事は───コハルを助ける。

「どけ!コハル!」

 コハルにはちょっ!までしか言わせなかった──否、言えなかった。

ゴッッ!と言う音と箒が曲がると共に、右腕のどこかが少し曲がった。

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い─────そう頭が訴える。だからと言って止まらない。後でロキソニンでも貼ればいい。

「てめー!何コハルごと殴ろうとしてんだよ!」

 相手は当然だが、学生だった。多分、ヒナの命令を受けて襲ってきたモブだろう。俺に他クラスの生徒の友人なんていないし。

 そのモブに殴りかかろうとしたその時、殴ろうと振り上げた左手を掴まれる。コハルの腕ではない。じゃあ、誰だろう。

「おい、日南休。これはどういう事だ?」

 今まで関与してこなかった教諭が、こっちが殴ろうとしたときに限って止めに入った。

「コハ───ミケルを箒で殴ろうとしてたんで」

「それだけでか?」

 ・・・・・・は?それだけ?意味が分からない。俺に対してなら分かるが、これはコハルが殴られても、止めるつもりがないような言葉だ。

「今、それだけ?それだけって言ったんですか?」

「ああ、そうだが」

「ちょっと、待ってください。仮にもあなたは先生でしょう。生徒が暴力振られそうな時、止めるのが当然なんじゃないんですか?」

「だから、止めたんだが」

 おい、止める順番間違えてるだろ。俺よりも、モブを止める方が先決だと思うのだが・・・・・・ってそういや、今は学校全体が敵だったんだっけ。やばいな。この状況多分、先生が取り押さえている時に殴るんじゃないのか。

「俺を止めるのはまあ、いいでしょう。けドッ!?」

 衝撃が頭部に走り、俺の意識はなくなった。


 

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