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俺の周りは絶望ばかりだ  作者: キノコ二等兵
巨大人工浮島《ギガフロート》編
197/202

殺戮者2

 移動の途中で明かりが付いた。これで地図を機能の失いつつある目に負担をかけずに確認できる。


 泳ぐように移動しなんとか6番ハッチに到着すると、巨大人工宇宙島(スペースフロート)の職員が慌てふためきながらこちらへ向かってくる。


「白銀さん!ご無事で!」


『状況は?』


「2号機を奪取されました!」


 ロックが掛かってた筈なのにどのような手段で外したのだろう。


「それを追ってウルフ隊と軍の1、3小隊が出撃してます」


『余ってる機体はあるか?そいつで出る』


「白銀さんたちの機体に追いつけるように調整してたバーサーカーが1機余ってますが、まだOSと調整が…」


『可能な限り2号機と同じOSを導入してくれ。あとはこちらでなんとかする』


「分かりました。3分待ってもらえれば」


『2分で頼む』


 ゼロから設定するとなると中々の時間はかかるのは理解しているが、このハッチ内の機体を全て出すぐらいなのだから少しでも時間が惜しい。


 OSを職員に任せている間に俺は機体の操縦桿の固さを確認する。———ちょっとしたことで斜めになったりする事はなく変な癖が付いている形跡も無い。これなら操作ミスが起こる事は少なそうだ。


「白銀さん準備出来ました!癖も含めて同一なんで気をつけて!」


『わかった。白銀タケル出るぞ』


 コクピットを閉めて出撃位置に足を固定する。


『ご武運を!』


『ああ!』


 久しぶりに感じる肉体への負荷だ。肺や首の酸素を入れる膜が塞がって息が苦しい。


 長いトンネルのようなカタパルトを抜け宇宙(そら)へと身を出す。


『現在の状況を……』


 モニターをぽちぽちと触り、空域を見渡す。ウルフたちがいるのは右前方向のようだ。


 スラスターを吹かしてその場所へと向かっていると数本の光の線が走り抜けては消えていく。


 消えてから数秒も立たないうちに花火のような爆発が9つ……いや、11つか?


『ほぼ同時とまではいかないだろうけど、やっぱりそれだけ性能差があるのか……』


 なんとか機体カメラが捉えられる距離までたどり着くと、盗まれた機体に食い付いていたのはやはり同機種であるウルフたちの機体で、他はおぼつかない部分も含めても全くと言っていいほど置いていかれている。


 こちらに意識が向いてない今がチャンスだが、現状ではあの速度を撃ち抜くのは直撃はおろか掠らせるのは至難だ。


 だが当たらなくてもウルフたちの援護になればそれだけでもいい。


 スコープを手に取り機体のセンサーと同期させると相手の移動先を予測して2発放った。


 爆発はない。あるのは漂う宇宙ごみが弾に当たって溶ける際の光だけだった。


 分かっていたが、やはりフォックスでさえ当たられないから近接戦をしているのにそれ以下の技量である俺では当てる事は無理だった。


 弾を放った事で敵味方両方に気づかれた俺は、すぐにウルフたちと合流をする。


『こちら白銀。ウルフ隊長聴こえますか?』


『おう!もう動けるぐらいにはなったのか?』


『全治まで長いと聞いていたのだが』


『戦争じゃなくて戦闘なら今の俺でもこなせます。訓練よりはマシですよ』


『おけい!じゃあ早速こき使わせて貰おうか。フォックスは支援を、俺とシラギンで追い詰める!』


『了解。シラギン、動きは最悪止めなくていい。射線上に誘導してくれればそれで構わん』


 ウルフと俺は挟み込むように移動していくが盗まれた機体から十数本の光が降り注いでくる。


 不快になるほどのセンサー音が鳴り響く中回避をしながら近づいていくが、元々の機体性能の差と迂回と直線との差2つが、不利な状況を生み続ける。


 回避を限界まで削ればそりゃ詰めれるだろうが、ビームなんて紙一重で回避してたら熱で機体がどうなるか分からない。


 ちらりとウルフの方を見るがやはり彼も攻めあぐねている様子だ。


 設定で機動力を優先にしていても、精々数パーセントだ。白兵戦ならまだしもこれだけ離れていたら正直という状況である。


 パターンをどうにかして変えることが出来れば、そこから道を切り開けるだろうが……。


 覚悟を決めよう。どうせ白兵戦になったら俺の機体じゃ無理だ。可能な限り設定を2号機に近づけても、元々の機体に近接データが少ないのだから行えばオーバーホール必至だろう。


 俺が無理して敵のロックを稼いでその後は任せるしかない。


 ペダルを強く踏み一気にスラスターを吹かし肉体に負荷をかけながら最短距離を狙う。


『シラギン…!』


『ロックを稼ぎます!あとは……!』


『早まるな!チームワークを忘れるな!』


 向こうからしても数を減らせた方がいいのは当然だ。銃身がしっかりとこちらに向けられる。


 銃口が光り始めていく。このまま回避しても先程の光弾で撃墜コースだ。どうせ落ちるならワンチャンに賭ける。


 その光弾が通るであろう場所を予想してその部分に弾を撃ち込む。


 2つの光弾がぶつかり合う。カメラがチリチリと音を立てて状況を予想するしかない。


 盾を構えながら移動して行くとカメラが復活したのと同時に2号機が目に入った。


『くっ……』


 左手でマチェーテを掴み袈裟斬りが放たれる。


 近接攻撃が出来ない今の状態だが、タックルぐらいは出来る。紙一重でその攻撃を回避した俺は盾殴りで一瞬敵の動きを止めつつ武器をはじき飛ばす。


『ウルフ!』


『理解してる!』


 右側から回り込んだウルフはライフルを投げ捨て左肩のビーム剣を抜き取るとそれを横薙ぎに放つ。


 それでも2号機は手首裏に取り付けてあるアンカーナイフでその攻撃を弾く。


 これで完全に使える機体の武器はなくなった。俺たちが声をかける前にフォックスからの正確な銃弾が2号機の左肘を貫いた。


 叫ぶように暴れるとこちらに攻撃をすることもなく、地球に向かって逃げていく。


 逃がすわけにはいかないので追うとすると機体が悲鳴を上げて起動を停止する。


『もう追える程こちらに余裕はない。それに暴走してるような感じが見えるやつに近づくのは危険だ。他の巨大人工浮島(ギガフロート)からの連絡を待つしかない』


『……了解です。ウルフ隊長』


 俺は2人の機体に抱えられながら基地へと戻っていった。

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