殺戮者
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会長が派遣した護衛と合流し俺たちは巨大人工宇宙島に特になく到着した。
「予定通りの到着でありがとう」
「会長様。それでは自分たちはこれで」
「ああ。急に呼んだ分支給も回しておく」
護衛の人たちは敬礼を会長にすると部屋を後にする。
ここからが本題だ。会長は机の上に資料を出すとJPPはそれを手に取る。
「もう1人の日南休。奴が行った行動のおかげで巨大人工浮島内軍部の発言力が上がってしまった」
一度は実戦に参加して生き延びた人たちを閉じ込めた。そんな人たちを抑え込むのならそれ相応の力は必要になる。そうなれば軍部の力が強くなるのも当然だ。
「軍部の力が自分たちを脅かすことのないようにして欲しいト?それは無理でス。私たちの戦力ハその辺の警備会社以下でス。そういうのハ末っ子のマツナガ君にでも頼めば良いかト」
「まだあいつには普通の生活を送って欲しい。常に誰かに命を狙われるような事にはなってほしくない」
俺に首輪を付けるためにヒナを誘拐しておいてよく言うよ全く。それが原因で根底の反乱行動につながってるのに。
とはいえ身内ぐらいには優しいだけマシだとは思うがな。
「となればまずはあなた方の派閥が軍よりも強くなる必要がありまス」
「俺が自由に動かせるのはさっきの部隊と、ウルフ隊だ。他は少なからず軍部が関わってる。いざという時は信用出来ない」
いくらトップの人間でも力までひとりで持っていたら今みたいなパワーバランスにはなってないし当然か。
「我々が信用出来る保証ハ?」
「日南休は例の件があるし、ジャンヌに関しては俺と同じく軍が力を持ち過ぎるのは自分が新たな派閥になるという願いとは離れる」
「私が軍と手を組んデあなたの場所を乗っ取る可能性もありますガ」
「自分で言っただろ。その辺の警備レベルしかないって。そんなやつの話を聞くとは思えないし聞いたところでお前さんは軍からいいように使われる。ただの人形にしかならないだろ」
「それはあなたに協力しても同じでハ?もっと簡単に言えばいいでしょウ、そんな取ってつけたような理由なんて言わなくてモ」
「……」
ずっと言葉という刃物で戦っていた会長にとってはそれは難しいのだろう。JPPの言ってることは友達に頼むような感じでと言えということかもしれない。
だが、派閥のトップともなれば友達なんていない。いるのは自分の地位を奪おうとするやつだ。
だから話を聞いてもらうために人の子を誘拐したり今ここに呼んで先程の巨大人工浮島への人質にしようとしたりしてるのかもしれない。
「助けテ…そういえばいいんでス、カイナガ。私たちに仮を作ったところデこちらが貰えるものは限りがあるのですかラ」
『信用出来ねえ…』
「貴方の場合ハヒナさんのケースあるしそうでしょうネ」
『本当だよ。誰のおかげで手を汚す羽目になったのやら』
「……憎くはないのか?日南休…」
純粋な疑問だろう。本来ならこうやって話してる方が珍しい程の暴力を受けていたのだから。
『ビジネスパートナーだよ。何も貰ってないけど』
「私モ日南休さんにハ何も頼んでないですネ」
「ビジネス要素はどこに?」
『「そりゃ(それは)もちろん———」』
俺たちの言葉を止めるようにアラームが鳴り響く。それに続いて放送も入る。
『アラートFF91!アラートFF91!場所は6番ハッチ!再び繰り返す———』
「来るのは大体予想ついてたが、なぜ基地内で見つかっている!軍の奴等と手を組んだとでも?」
敵が来たらしい。会長の様子と俺たちが来たタイミングを鑑みて、外側の天国の可能性は高いだろう。
照明を落とされると俺はすぐに懐中電灯を手に取り、会長とJPPに明かりを向けて生存を把握する。
「マ、眩しいでス……」
『悪いがこういうのがあったら消音武器で攻撃されてる可能性も考えられたんだ。カイナガ!6番ハッチは何処だ』
「地図が入った携帯を渡すからそれで向かってくれ。———ありがとう」
『破壊されたら宇宙に投げ出されるし、ヒナも危ないんだ。行ってくるが物理的に鍵を掛けとけよ』
義眼の暗視装置を使用して懐中電灯をJPPに投げ渡すと俺はすぐにその場所へと移動を始めた。