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俺の周りは絶望ばかりだ  作者: キノコ二等兵
巨大人工浮島《ギガフロート》編
190/202

外側の天国5

 憤怒たちの乗った船が港に到着した所を近くのビルから覗くひとりの化物がいた。


「ニホンに残っていたものに対してもああするか巨大人工浮島(ギガフロート)は」


 化物は机の中から仮面を取り出すとそれを取り付けてどこかへ歩いていく。


 広い建物の中で同じ服を着た人々が立っており、そこに化物は靴音を鳴らしながら連絡橋を渡っていく。


「皆、集まってもらい感謝する。君たちも知っての通りここミクロネシア巨大人工浮島(ギガフロート)は、彼らにとって不都合な人間が送られる場所だ」


 集まっている人々の多くは同様の容姿をした青年で専門家でなくともクローンかなにかは判断できるものだ。


「君たちの多くも経験したであろうアフリカ地域への武力介入は国連からの依頼であったとはいえ、戦場に投球されたのはほぼ全てここにいるものだ。彼らの気持ちは分かる。自国の人間を使い死亡すればそれだけで国内情勢は悪化する。その為に我々はいるわけだ」


 連絡橋の手すりを掴み乗り出しながら声を強くしていく。


「だが彼らは君たちが血反吐を吐きながらも、眠ることが出来なくなるほどの苦しみを受けたにも関わらず社会不適合者のレッテルを貼られ、そしてあまつさえこの場所に幽閉した」


「君たちが貰うべきであった地位も名誉も全て奴らが奪い、故郷に帰ることさえ否定した!」


 化物の持つ手すりはその握力で歪み千切れて破片を持ち上げる。


「我々の帰る場所を取り戻し奴らに同じ苦しみを味わわせる!全てを失ったものたちの国を作るために———そうこの場所こそが君たちの新たな故郷、祖国となる為に外側の天国(アウターヘブン)を宣言する!」


 ひとりひとり考え方は違う。それは当然だ。皆が同じであればこんな場所に青年たちを閉じ込めておく必要はない。クローンとはいえ生まれてマニュアル以外の行動をすれば自然とその方針や理念は変わっていく。


 そのように変わってしまったのが彼らだ。社会では多数の考え方と違えばそれは否定される。隠すものもいればそれが出来ないものもいる。


 そんな彼らを救う為に化物は宣言したのである。


 ひとりの青年が不安なのか化物に対して信用する為に仮面を外せと発する。


 疑念は分散するのは当然だ。誰とて顔の知らない人間など信用に値しない。


「確かにそうだな、良いだろう。だがそれには条件がある」


 化物は連絡橋から飛び降りると青年たちの前に立つ。


「一切の甘えは許さない。巨大人工浮島(ギガフロート)に家族や友人がいても殺す覚悟があるかだ。それがないのならそれが出来るまでこの国で細々と暮らせ」


 それが出来るものなどそう多くはない。だがここにいるのはほぼ全てが元々家族などいない。友は血塵へと消えた。


 抜けるものはまだ心が癒えていない者だけでほぼ全てが残った。


「君たちに新たな覚悟を与えよう」


 ゆっくりとその仮面を外す。近くの青年はその顔を見て驚きを表情に出しながら首を縦に振った。


 その顔はキュウだったが内出血が目立ち右半分は機能していないように見え、次に左の袖を捲るとそちらも違和感しかない腕となっていた。


「これで信用してもらえるだろう。巨大人工浮島(ギガフロート)によって負った傷だ。私はもう元の名を名乗るつもりはない。今から我が……我々が殺戮者(ホロコースト)だ」


 殺戮者(ホロコースト)は建物内にいる青年たちに見せる為その顔のまま建物中を歩き元いた部屋へと戻った。

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