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俺の周りは絶望ばかりだ  作者: キノコ二等兵
巨大人工浮島《ギガフロート》編
187/202

外側の天国2

 内部に入っても外と比べれば少ない程度のもので不調な修也にとっては辿り着くまでに離脱する数だ。


 俺も万全ではないがそれでもやらなきゃいけない。内部の敵をひとりひとり仕留めていきながら上へと登っていく。


 7階で連絡橋を渡るとそこでスピーカーからJPPの声が聞こえてきた。


『よくここまで来ることが出来ましたネ』


「褒めるなら何かプレゼントを貰いたいんだけどな」


 録音なのかJPPは一切反応しないまま次へ進めていく。


『この先ハ、研究施設を改造し作成したものでス。上へと登る為にはこちらが展開したBOWを全て排除してくださイ』


 上から眼帯の様な器具が落ちてきた。それを拾い互いに頷くとそれを取り付ける。


『その眼帯にはBOWが何体いるカ、どこにいるのかを視覚的に表示してくれるものでス。BOWが見つからずという状況を避けるための措置でス』


 電源を入れるとこの先に大量のBOWが確認出来た。その上容姿まで多少予想出来るものが見ることが出来る。


「なんて数……今までもやって来たけど狭い場所かつこの数は……」


『修也キツいと思うがここから移動だけって訳にもいかないからな』


「分かってます。芹や刹那さんを救う為にもこんなので止まってるわけにはいかない!」


『大体のルールは理解いただけた様ですのデ、扉を開放しまス。到着を楽しみにしてますヨ』


 JPPからの連絡が終わると先の扉が開きその音に反応したのか、近くのBOWが俺たちの前に立ち塞がった。


 修也に体力を使わせない様に俺は前に出て1番前にいたBOWを一太刀で捌くと、その背後から別のBOWが仲間の骸ごと俺へと攻撃を行う。


 BOWに仲間意識がない者もいるのは知っていたが、その巻き込む速さが元々狙ってやったとしか思えない。


 腕の表面部分を抉られたが、このくらいだったらとうの昔に味わっている。だが痛いことに変わりはないので強く噛みしめると即座に得物の持ち手を変えて味方を巻き込んだBOWの首を切り落とす。


「修也、敵の来る方向随時教えてくれ!お前の負荷を減らすにはそうするしかない!」


「分かってます!背後から3体来ます。タイミングは攻撃した際次の攻撃に移る時間がないぐらいの幅です」


『流石にやる……!』


 修也に指示で背後に目を配ると確かにちょうどそうなる様な間を空けてこちらに向かってくる。


 1列になる事で1体だけに見えるようにして1体を回避した後その後ろが攻撃をするという奴か。


 人でさえ息のあった行動が必要なのにそれをBOWで再現出来るなんてありえない。もしかしたら変化したタイプのBOWなのかもしれない。


 となると息を合わせる事ができない現状では修也を守りながらBOWを仕留めるのは難しい。なら……。


 俺は上に銃を向けると弾丸を撃ち込み天井を破壊し修也との間に壁を作る。


「白銀さん!?」


『お前は上の奴を叩け!下の残った奴は俺がやる!倒し終わった後すぐに彼女たちを助けられるようにな』


「分かりました!」


 瓦礫を階段の様に登る音が聞こえた。段々それが遠く、上の方に上がって行ったので登ったのだろう。


 これで意識を割かなくて良くなった。柱の部分に気をつけてBOWを仕留める。


 タイミングを合わせてくるのなら回避場所を変更して合わせ辛くすれば良い。


 平凡越しに見た戦闘技術は例え体感であってもあいつに出来て俺に出来ないはずはない。いくら全盛期と比べてミジンコレベルまで弱くなっていてもだ。


 巨大な爪が振り下ろされる。俺はそれを回避せず真正面から受け止めて腕をがっちりと掴む。


 勢いを殺す際にメキメキと腕が鳴ったが、気にするほどじゃない。声帯機として使っているナイフを取り外すと、それを胸部に差し込み心臓にダメージを与える。


 タイミングをずらしても攻撃をする時間があれば向こうだって対応はしてくる。2体目のBOWは回り込んで俺の横から爪で薙ぎ払う。


 コハルの所で作ってもらった武器でその腕を切り落としつつ態勢を変えると、切った腕が1体目の顔に突き刺さる。


 痛覚のせいでうめき声をあげる。その瞬間掴んだ腕の力が弱まったのでその腕も切り落とすと、飛び上がり1体目を縦切りで2等分に切り伏せた。


 2つになった身体が床に落ちる前に更に奥にBOWが身体から飛び出るように腕を伸ばして俺の身体を掴み横の壁に叩きつける。


 コンクリート片が返しのように身体に刺さり抜けなくなったところに追加で攻撃が飛んでくる。


 コンクリート片が返しごと砕けた事で腕は動いたが、攻撃は当たらない。


 一方的に殴られる痛さを思い知らされる。やはり戦いは数だな……。


 視界が暗くなっていく。酸素が足りなくなっているのだろう。まずい。


 急に風が俺を包む。室内にいたらそういう機械がないと味わえない筈のものだ。暗くなったのは出血じゃない。外に出たという事だ。


 四肢の動きを封じていた壁はもうない。骨が折れているから痛みはあるが動ける。


 袖下のアンカーを飛ばし元いた場所へと移動する。


 室内に戻るとBOWたちは俺を倒したと判断したようで、上にあがろうと瓦礫を剥がしていた。


 そこまで知性が高いのか……?そりゃああいう攻撃方法が取れるわけだ。


 だが逆に知性が高いせいで俺が死んだと判断してしまった。


 2等分になったことで落ちた声帯機ナイフを拾うとそれを左手に、銃を右手に持つと右の1体にそれらを突き立てる。


 普通なら戻れないからこのBOWたちがとった対応は間違ってない。だが俺が普通ではない事をあのJPPから聞いていない事がこいつらの判断ミスだ。


 心臓部とコアを潰して崩れ落ちる身体を土台にもう1体のBOWへと飛びかかる。


 BOWは音で反応して振り返ると俺の初動をその厚い皮膚で防ぐ。


 勢いのおかげでナイフは刺さってはいるもののダメージとしては薄い。痛覚を感じにくい今の俺が同じように受けても違和感を感じる程度の物だろう。


 ナイフが刺さった腕で俺の頭を掴もうとするが、それを俺は巻きつくように回避をしBOWの頭に刺し込んだ。


 BOWが呻き声を上げながら痛みで頭に手を伸ばす。その隙を見逃さずに俺は腕に刺さったナイフを抜き取り胸部へと叩き込んだ。


 巨体が地面に崩れ落ちる。倒れたBOWから俺は武器を拾い血を拭き取る。


『くっ……はぁ、はぁはぁ……』


 肩を上下に動かしながら銃のバッテリーを取り替えると修也を追う為に折れた右足を休ませる為に引きずりながら、本来上に上がる為に用意されていた階段へと向かった。

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