ヒナ4
コツン———コツン———コツン。
足音が鳴り響く。今ここにいるのは俺とマスターのふたりだ。中には入らせない様にしている以上この攻撃の首謀者かもしれない。
俺は拳銃を取り出すのと同時にマスターは吹き飛ばされた。
『マス……』
「久っさしぶり〜キュウちゃん!」
『んな……なんで、なんでお前が!?』
「その声嫌い」
喉の声帯機が破裂する。当然破片が飛び散るので痛みが首を襲う。
「あ“あ”あ“あ“あ”あ“あ“!!!!!!???」
「そこもキュウちゃんのじゃない」
右腕が破裂するのと同時にイアの反応が無くなる。破裂したとはいえ全ての部位が無くなったわけではないが、どこが弱点かヒナはそれを見つけることが出来るようだ。
二重の痛みに襲われるが、そんなことよりもどうしてヒナがここにいるのか。そしているならどうしてコハルがこうなっているのか。
状況証拠は揃ってる。つまりはそう言うことだろう。信じたくはない今の攻撃も含めるとやはりヒナがやったとしか思えない。
「ーーー!」
リミッターを10割……いや12割解除してヒナを無力化しようと距離を詰める。
前から突っ込んでも右腕や喉の様に処理されるのは明白だ。ならば背後から回り込む。
「その気配を殺していない以上簡単に……」
というのも予想出来ていた。この高速化した肉体を使う為に気配を同時にふたつ置くことでどちらが本物か判断しづらい状況を作った。
分身と共に攻撃を仕掛けるがヒナは一切驚いた表情を出すこともなく呟く。
その瞬間俺の身体の中から圧迫感が襲い分身含めて落下していく。
この感覚は何年振りだろうか?絶望病と同一の感覚だ。
「ぁぁぁ———」
「キュウちゃんがそんな危ないことやっちゃいけないよ?私が守ってあげるからね?キュウちゃんを危険な目に合わせる人たちはみーんなね」
ちくしょう……。リミッターを外しても回復がもう出来ない。微かに見える視界から俺自身の身体を見ると、出血だけではない。見たことのない物質が身体から枝のように至る所に向かって突き出していた。
心臓が血を流すたびに枝のようなところから知らない物が飛びててゆく。
多数の足音が鳴ると、ヒナは恐怖を感じる様な笑い声を上げてその場を去っていった。
俺はしゃくとりむしのようにコハルの元に向かうと、冷たくなった彼女に触れながら、俺自身の意識は消えていった。