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俺の周りは絶望ばかりだ  作者: キノコ二等兵
巨大人工浮島《ギガフロート》編
173/202

イン2

 時間は数日巻き戻る。窓原やピライたちはインとは違い拘束等もなくただ服役していた。


 窓原はピライとともに食事を取りながら何度目かもわからない情報交換を行っていた。


「今日の朝いつもは見ない人間が入って来ていました。運送業者だったようで中々の大型製品だと思われます」


「何か今日はありそうだな。とはいえ俺たちに何かできるわけじゃないが」


 赤いスープを口へと運び外の景色を眺める。


「ピライ、どこの運送業者かまでは分かるか?」


「研究施設と俺たちの棟は別なのは窓原さんも分かってるでしょう?賄賂を渡そうにも流石に別棟の情報は難しいですね」


「そりゃわかってる。会社の名前とかじゃなくていいんだ、考察材料になればそれで」


 ピライはへいへいと後頭部を掻きながら食器を片付けると1人早く食堂を後にする。


「(俺たちの見える場所で行われたってことは少なくともいつもの物じゃない。俺たちを餌にした実験でもする気か?タダ飯これだけ食わせたんだからそうなってもおかしくはないが・・・・・・)」


 捕まってからこの方彼らに作業を強要されてはいるものの、尋問や拷問を受けたわけではなく、ただ刑務所にぶち込まれたような形であった。


 インと窓原らは捕まって以降1度も顔を合わせていない為、インに対する状況は出来ていない。


「(インがどこにいるっていうのは分かるんだが、向かおうにもな・・・・・・)」


 そんな時に窓原の喉が震える。久しく使用していない思考内通信の着信時の反応だ。


「(巨大人工浮島(ギガフロート)?本国から通信出来ると思えないが・・・・・・できるならとっくの昔にしているはず)」


『聴こえるか?窓原。こちらは白銀タケル。日南休だ』


「(日南休?どうしてお前が巨大人工浮島(ギガフロート)のタイプの周波数でこちらに連絡しているんだ?)」


『助けに来たんだよ。巨大人工浮島(ギガフロート)は自分からは手を出せないから俺に頼んだって言う形だ』


「(今までのようなただの研究施設じゃないんだぞ!無理に決まってるだろ!)」


『分かってるからこそ情報が欲しいんだ。中からのな。周囲の情報はここ数日をかけて手に入れた。あとは中のデータが欲しいんだよ。救助に来たのに巻き込んだら意味がないからな』


 巨大人工浮島(ギガフロート)側からすれば本来どうでもいい事なのは明白だった。戦争時にインたちを即座に作り出し前線に配置させたのだから。


 だが誰かが頼んだから渋々行動を起こしたのだと思われた。小林派の人間は巨大人工浮島(ギガフロート)の人間にとって良い思いはない。だからこそインの場所に寄ることのあった日南休を使用したのだと思われる。


 いくら知り合いの人間とはいえ他国の人間を使うのは不愉快極まりなかったが、今はお願いする立場である。窓原は腑が煮えくり返る思いだったが、その感情を抑えて、日南休との会話を再開する。


『今の場所はどこだ?』


「(食堂施設を含めた本棟だ。外から見れば3階建ての建物だな。俺たちがここを使用する時間は8時から9時と13時から14時、そして17時から18時の3つだ。この時間での攻撃は避けてくれ)」


『了解だ。次は窓原たちが寝泊まりしてる棟はどれか教えてくれ』


「(移動しながら説明する。動かずにいると疑われてしまったら元も子もない)」


 窓原は食器を片付けると黙々と自身の部屋へと戻る。


「(横長の建物だな。俺たちの部隊とは極東連合の部隊もこの棟にいる。注意してくれ)」


『暴動が起きたら大変だな。元々は捕虜を収容する施設じゃないのかもな』


「(インへの人質だろうな。ここに閉じ込められてから俺たちは1度もインを見ていない)」


『そうか・・・・・・となると本棟への攻撃は避けたほうがいいな』


 窓原は次の場所へ移動するために荷物をまとめると再び部屋を後にする。


「(俺たちのいる棟から北端の施設が俺たちが働かされている場所だ。今からそこに向かう)」


『ここからじゃ見えないな・・・・・・移動してみる』


「(どうせそこが終わったら、俺の知っていることはない。強いて言うなら先程見かけない配達員がいたとピライが言っていたな。もし新たな敵だとしたら危険だ。計画の修正に利用してくれ)」


『ありがとな窓原。準備が出来次第もう1度連絡する。あんたが信用出来る人間だけに作戦は伝えてくれ。あんたらが捕まることなんてないだろうに捕まったんだ、裏切り者がいたと思ってたほうがいいだろ』


「(お前さんに言われずともそうするさ。それじゃあ切るぞ)」


『了解。太陽が沈んでいないうちは連絡には出るつもりだ。覚えておいてくれ。通信終了(オーバー)


 窓原が同じように通信終了(オーバー)を言う前に連絡は途切れた。


 窓原はしょうがないと肩を上げると、先程の労働施設へと足を進めていった。

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